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六話 東郷雨彦

 窓の無い書斎。 回転するタイプの椅子に腰かけるのは東郷。 ここは、彼の家だ。


 よぉーし、事件を整理しよう。 まず、この事件が起こったのは七日前。 古びたビルの一階で発生した殺人が始まりだ。 その事件現場で俺が見たのは佐藤清盛と後藤正喜の遺体、そして、コンピューターとつながっている機器。 加えて、不可解なエラーメッセージ。 犯人の脱出方法は一目瞭然、扉を蹴破っての脱出。 扉が折れ曲がってて、それが反対の壁にめり込んでたんだからそれだけは、まあ、間違いないな。 以上が現場で見たもの。


「ん、俺なんか忘れてたりするか? まいっか」


 それでは、仮に犯人が人間だったとして推測しよう。 あー…だが、どうやって侵入を? 扉を蹴破って出るような奴だぞ。 てか、そもそも、静かに侵入できる場所があるならそこから出るはずだ。 そうしないってことは、もとから部屋に三人いたことになる。 だが、見つかった指紋は二つ。 部屋にいるのにずっと手袋してたってのは考えにくい。 拭き取ったってのも無理があるだろ、そいつどんだけ記憶力いいんだってなるよな。


「やっぱ、人間は無理じゃん。 それに、あの二人を恨んでる人、いなかったし」


 じゃあ、犯人が自動人形だったら。 後藤と佐藤によって持ち込まれていた自動人形。 それが、犯人だったら。 詳しい方法は知らないが何らかの方法で二人は自動人形を再起動したんだろう。 後藤は家族を事故で失ってから、里沙を生き返らせることに執着していた。 恐らく、自動人形に娘さんを重ねて見てたんだろう。 そして起動するって時になって佐藤と揉め事に。 その争ったときの指紋はハッキリ残ってる。 近くにあった機器を佐藤に投げつけ殺害。 その後、とっくに正気を失った後藤が聴覚がどーたらとか思考がどーとかいうエラーを無視して自動人形を起動させた。 もともと、戦闘兵器であった自動人形に敵と思われ殺されたってところだろう。


「脳ミソえぐり出されてって、やっぱ惨いよなぁ」


 その後、自動人形は扉を蹴破って逃走。 だいたい、そんな感じか? 後は、どうやってこの町に潜んでいるかだな。


「まず、分かることから、だな」


 俺が自動人形のことで知ってるのは、ザルト王国の戦闘兵器だってこと。 そして、コンピューターに書かれてたエラーメッセージ、聴覚の故障。 思考の方はとりあえず分からないから無視だな。


「後は、容姿と服装…」


 服装! 確か、近くで追い剥ぎがあったな。 ひとりで夜町を携帯見ながら歩いてたら襲われて気絶した。 目覚めたら服がなくて、そう、電撃の追い剥ぎ! 兵器なら敵を気絶させるための電撃が使えたりしたのかもしれない。 自動人形は服の調達のために追い剥ぎをしたのか。 今時どうしてと思ってたが、なるほど。 しかし、その後は? なにをした?


「もし、それが俺だったら、ここがどこなのか知りたい」


 どうやって探る? 人に聞いたり、自分で調べてみたり、後は地図探すかな。 まあ、それは町を歩いてたら分かるか、看板とか張り紙とかで。 それじゃあ、ここがどこか分かったところで次はどうする? 叶町はザルトの敵として攻撃する?


「それはないか」


 だって、もしそうなら、とっくに犯人は大暴れしてるだろう。 ここは都会だ、ちょっと歩けば看板だらけだから、ここがどこかすぐに分かる。 それじゃ、次は何を、何を始める?


「んー…分からない」


 てゆーか、そもそも、まだこの町にいるのか?


「あいや、電撃の追い剥ぎが昨日出たってことは居るのか」


 しかし、すべての電撃の追い剥ぎが自動人形と決まった訳じゃないし。


「んー…」


 昨日の被害者はジャージ盗まれたって話だよな。 ジャージ、それも叶町高校の学生ジャージ。 あれ? そういや、あの子。 昨日見たときも、今も…。


「ずっとジャージじゃね?」


 あの子が自動人形? いやいやいや、そりゃあない。 叶町高校のジャージなんて生徒なら誰でも持ってるし、あの子は学生でしょ? 年齢からして。 そもそも、感情のない自動人形にあんな話し方はきっと…。


 ─エラー、一般的感情プログラムの論理思考プログラムへの上書きが不完全です。 書き換え率84パーセント─


 …無理じゃないのかも。 でもおかしいって、会話できるわけないって、だって耳が聞こえないんだから。 それに、両親とうまくいってないって話してたじゃんか。 いや、話してない。 それ、俺の想像だ。 だが、そんなアニメやドラマじゃないんだからさ、そんな都合いい出来事ねぇって、あり得ねぇあり得ねぇって!


 グゥゥ


 はっ! きっと腹が減ってるせいで変なこと考えちまうんだ。 それに、俺の推理事態、初めから間違ってるかもしれない。 ものの見方は一方方向じゃダメだ。 あらゆる可能性を考えなきゃな。 とりあえず。


「なんか食おう」


 頭をかきむしりながらため息をつき、ゆっくりと立ち上がって東郷は、書斎を出ていった。 しっかりとここに、鍵をかけて。


 ガチャ


「おーい、腹、減ってないかー」


「…………」


 えっ、無視、酷くね? ………いや……違う。


「おーい!」


 あの子、こっち見てない。


「…………」


 無視してんるんじゃない。


 ─エラー、聴覚機能に深刻な異常有り─


 聞こえて…ないんだ。 耳が壊れてるから。


「え?」


 だが、それじゃあ。 どうして言葉を理解できた? 聞こえないなら…。


 ─なんで、俺の口ばかり見てるんだ?─


 それだ! 唇! 読唇術だ! それなら機械にとっては朝飯前なことのはず。 でも、本当にあの子が自動人形なのか? 人間みたいな発言や行動、時おり見せるその顔は機械には…。


 ─東郷さんの意見や現場の状況から考えて─


 あ。


 ─自動人形の可能性もあるって本部で結論が出て─


 もし、あの子が。


 ─犯人が人だったらいつも通り─


 本当に自動人形だったとしたら。


 ─自動人形だったら─


 そうだ。


 ─即破壊だそうです─


 俺はあの子を殺さなきゃならないんだ。


 東郷は少女の肩をポンと軽く叩く。 気づいた少女は振り向き。


「あ、東郷さん」


「なぁ」


 お前は、なんなんだ?

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