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四話 意味

 深刻な異常を連続で複数確認。 早急なザルトへの帰還および人の手による修繕が必須。 推測、数千年経過したことによる地理の大きな変更あった可能性。 急務、帰路の検索及び確保。 考察、現代の地図を入手すれば帰路の検索が可能。 地図は書物に分類される。 書物のある場所、図書館。 町内のことであるなら警察などに聞くことが適切と判断。


 そうして、路地裏を出て歩き始めた自動人形の服装は、以前とは変わっていて叶町高校とか書かれた学生ジャージに。 以前の服は血で汚れてしまっていたので、どこかで調達したのだろう。


「だぁー! なぁーんで俺がこんな交番で待機なんだよ」


「仕方ないですよ。 この近くにまた電撃の追い剥ぎが出たんですから」


「そんなの知らねぇよ。 他の暇そーなのに任しとけよ。 つーかこれ、どー考えても俺ら本部から遠ざけられてるよな。 交番待機とか、理由てきとー過ぎるだろ」


「そう思いたくなる気持ちも分かりますが…。 まあ、にしてもこの町、最近物騒になりましたよね。 殺人とか追い剥ぎとか、それ以外にもいろいろ」


「ん? まあ、そうだな。 昔はもちっと平和だったかもな~。 どうしちまったんだかなぁ」


 いけね、昔は平和だっただとか言ってたらなんか負けたみたいになる。 言わねーよーにしよ。 それにしても、交番待機ほど暇な仕事もねーなー。


「あ、そだ。 被害者の服装は?」


「唐突ですね。 えっと、はい、これが資料です」


「ふーん」


 学生ジャージ、んでもなんで?


「あー! わかんねーつまんねー暇だあー!」


 そんな愚痴をこぼしまくる警官のいる交番に、ひとりの少女がやってきた。


「あの、すみませーん」


「んあ? あ! はいはい、どうかしましたか?」


 突然、仕事モードに切り替わる東郷。 真面目なのかそうでないのか分かりにくい。


「道を聞きたいんですけど」


「道ね。 どこ行きたいの?」


「と、図書館に」


「図書館か。 それは叶町図書館でいいのかな?」


「はい」


「えっとー、それはね。 ここをこう行って、このパン屋を右、そしたらこの信号をまっすぐ。 そしたらもう図書館が見えてくるはずだよ」


 とても丁寧に、地図を指でなぞなりながら説明する。


「分かりました。 ありがとうございました」


「はーい。 気をつけて」


 図書館か。 勉強…いや、調べ事か? 調べ事、そう言えば事件に関する新しい情報、全然ないなぁ。


「なぁ」


「はい?」


「暇」


「ですね」


 そういや、さっきの女の子、全然目が合わなかったな。 目よりも下の方をずっと見てた。 口か? 俺の口になにか付いてたか?


 叶町図書館、建物の見た目は近代的で普通のビルだ。 二十階建てで、そのすべての階層に本がある。 建物はとても近代的で、歴史、地理、文学、雑誌、漫画などなどあらゆる本が集められている。 爽緑地区では有名な図書館だ。

 その図書館一階受け付けに先ほどの少女が来ている。


 図書館、到着。 地理に関する書物の置き場を特定。


「すいませーん」


「はい。 どうなさいましたか?」


「地理に関する本はどこにありますか?」


「はい。 地理ですね。 それでしたら、七階東側です」


「分かりました。 ありがとうございます」


 爽緑地区の地理、境墟州の地理、楽しい地理、ルグドールの地理、世界地理。 発見。


 少女は地理関係の本数十冊をくまなく調べた。


 目次、王国、ザルト、座標…。 …ザ行終了。 次の本を。 目次、王国、ザルト、座標…。 これも、終了。 次。 ザルト、座標。 無い。 次。 ザルト…。 次。 次。 次。 次、次、次、次次次次次次次次次次次次次次次…。


 少女はそれからもずっと探し続けた。 図書館中の本を調べ、ただその言葉を探した。 「ザルト王国」を。 少女の故郷を。


 思考に重大な異常を検出。


 でも、見つかったのは、ザルト王国王城跡地や遺跡跡などの記述のみ。 確かにその跡地の座標は、少女の記憶に残っているザルト王国中心地だった。 それに、この歴史の本にはザルト王国は滅んだと。


 その瞬間、少女は、自動人形では無かった。


 ザルト王国…が、無い。


「あ、そう言えば」


「ん? どうしました東郷さん?」


「仮にだぞ。 仮にこの一連の事件の犯人が自動人形だったとしたら、どうして人を殺してるんだ?」


「それは…、ザルト王国の戦闘兵器なんだから、ザルトの敵と思われたんじゃないですか?」


「だが、それは、ザルト王国があるという絶対条件があるからだよな」


「えぇ、まぁ。 恐らくは」


「んじゃあ、その自動人形がザルト王国が滅んだって知ったら、どうなるんだ? 仕えるべき存在がいないってなったら、なにを考える?」


「それは…」


 ザルト王国が無い。 …どうして。 なら、私が今まで殺してきた人達は、何のために、私は…人を殺した…?


「お客様、申し訳ありません。 もう閉館の時間ですので」


 ずっと調べていたら、いつの間にか日が暮れていて閉館を知らせる館内放送が流れ終わっていた。 そうなってもなお、動こうとしない少女に女性館員が帰るよう促しているが。


「お客様? どうかなさいましたか?」


 少女に声が届いていない。


 私は再起動してからなんのために人を…。


「ぁ…あぁ…」


「あ…あの、お客様…?」


「あ…あぁ……ぁああぁぁぁああああ!」


 少女はそう叫びながら、日暮れの町へ出ていった。 ひたすら走って走って走って走って走って走って走って走って走って走った。


 私が、再起動を、した意味って? 私が、人を、殺した、意味って、いったいなんだったの?!

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