三話 殺人
私は自動人形。 私の眠ってる間に数千年もの時間が経過していて、ここは数千年経過したルグドールの叶町。
「四丸四号、お前のいる理由は」
「返答、ザルトの敵を殺すためにいます」
私は対人戦闘型自動人形。 目的は殺人。
考え事をしていてぼーっとしながら町中を歩いていると肩が、悪そうな男にあたった。
「おい! 嬢ちゃん、肩、あたったんだけど」
聴覚に関する機器が故障していて聞こえてない。 端から見れば無視しているようにも見える。
「おい! 無視してんじゃねぇよ!」
肩をどつかれようやく気付いた自動人形は、悪そうな男達に路地裏へ連れていかれた。 路地裏の壁に強く叩きつけられた。
対象を敵と認識。 排除する。 嫌だ。 敵は排除するべきである。 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。 人は殺したく…ない。
「お前、無視とかいい度胸してんじゃねぇか。 ぁあ!?」
怖い。 でも、殺すのは嫌だ。 論理思考に異常を検出。 修正開始。
「おい!」
自動人形はじっと見て男を観察するばかりで、なにか行動を起こす様子もなにもない。
「おい、聞いてんのかよ! 耳ついてんだろテメー!」
修正完了。 敵を殺害する。
「おい!」
ヴオォンッ
自動人形の顔に触れようとした男の手が腕が、吹き飛んだ。 ただ、振り払っただけで。
「へっ?」
バゴォッ
男の顔を掴み地面に叩きつけると粉々に砕け散り、さきほどまで怒鳴っていた男はピクリとも動かなくなった。 それを間近で見た男の仲間達は、状況の整理がつかないでいた。
「う…だろ」
ドッゴオォンッ
強烈な蹴りでもうひとりを吹き飛ばすと、壁にめり込んだ。
「くそっ!」
バンバンッ バンッ
拳銃で応戦しようと必死になるが、かわされてしまう。 当たっても服に穴を開けるだけで、ほとんど傷がつかない。
「やめ…」
ガッギギュウィッ
首を片手で強く握り、そのまま力任せに握り潰した。 あたりは静まりかえった。 自動人形は何事も無かったかのようにその場から立ち去る。
どうして、どうして私は人を殺してしまうの。 当自動人形の存在する理由は、人を殺すため。 すべてはザルトのため。 そのためにいる。 殺さなくていい人まで殺すなんて、嫌だ。 異常の修正を開始。
あーもー、めんどくせー。 ひしゃげた扉事件でこっちは忙しいってのになんだよ。 路地裏で殺人事件って、めんどくさくて死にそう。
「殺されたのは、この三人です」
渡されたタブレットには三人の調査資料が沢山、表示されていた。
「なんだ、この三人。 見たことあるな」
「ときどき警察の厄介になってるチンピラですよ。 まあ確かに悪い奴らではあるんですけど、根はそこまで腐ってなかった。 まさか、殺されるなんてね…」
殺人か…。 俺も、命令があればためらいなく罪人を裁判にかけずに殺す。 まるでゲームをやってる感覚で人を殺す。 こういう職じゃなきゃ、俺も、この犯人と変わらないな。
「や…やめ、殺さないで」
「殺さない。 命令がないからな」
携帯電話が振動した。
「はい、もしもし? あ、逮捕しまし…え? 殺せ? もう手錠もはめましたけど。 はぁ、了解」
上からしたら俺は、人を殺すための道具に過ぎないか。
「つーか、殺人って、これ誰の仕業よ」
「見当もつきませんよ」
「ひとりは首がもぎ取られてたり、ひとりは腕が吹き飛んで頭が潰れてたり、ひとりは壁にめり込んでたり。 人間には無理だろ」
あ、自動人形…。
「おい。 自動人形の件、どうなってる」
「ちゃんと集めてありますよ。 これです」
ザルト王国で出土、ほとんど無傷の状態での発見。 それを後藤が高値で買い取りあのビルで。 自動人形は戦闘モデル…歩兵か。 そいつが犯人なら馬鹿力も納得だ。 そうなると、本気でこの事件の犯人。 自動人形なのか?
「調べて驚きましたよ。 まさか戦闘モデルだったなんて」
戦闘モデルの自動人形…、人を殺すのが目的か。 なんだか、似てるな。
「あぁ、なぁ平城」
「はい?」
「もし、犯人が自動人形だったら。 もし、ルグドールを敵だと思われたら。 まずくないか?」




