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旧式 時と歌  作者: 新規四季
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黒霧の少女7

「やあ、こんにちは」


そう言って海蛇のトーマスがこちらに向け手を振る。金髪の長身高い鼻、人の良さそうなタレ目、彫りの深い顔。




あの後、くうと空は有無を言わさず集合場所へと行かされた。文句は勿論あったが言ったところでどうにもならないことは何となく分かった為、黙って従うことにした。


集合場所は近所の公園だった。あるのはブランコだけ。三つあるブランコの真ん中に座り揺れながら声を掛けてきたのだ。


平日の昼の時間帯の為誰もいない。時間帯もそうだがちゃんと人払いがされているから見える者か魔力のあるものしか違和感には気付かないだろうが。もっとも、海蛇の位を持つくらいのものが作った結界に気づけるわかけもないが。


「アンタは何のためにいるの?」


くうは早速噛み付く。もっと穏便に済ますやり方を知るべきだ。咲はくうが人との付き合い方が下手くそなのを知らないのかもしれない。


「何って、人助けさ」


トーマスは事も無げに言いのける。

くうは羨むように憎らしげに睨みつける。


「馬鹿みたい」


そう言ってどっか行く。吐き捨てた言葉は何時までも空の頭から離れなかった。


空は呆れて声も出ないし、声も掛けない。


「空、くん。君はどうして今ここに居るの?」


優しく諭す様な声音。それがイライラさせる。


「それに応える意味はありますか?負けたくせに。逃げたくせにさ」


顔を引き攣り、空を一瞬睨んだ。然しそれが筋違いなのに気付いたのだろう、目線を逸らしもう一度空と向き合った。その表情は真剣だった。


「...僕にはね、妹が居たんだ」

「僕より才能があって、次期白色は確実と思われていた。だけど死んだ。暗殺だったよ。ルン程の実力が有れば返り討ちも出来たろうにしなかった。後で分かった事だけどね、ルンは嘆き悲しみ絶望し命と引換にこの世界に干渉したらしい。」

「そして、僕は人を殺めることが出来なくなった。」

「僕はねルンの意志を継ぐ者。この世の悪意と闘うために生きると決めたんだ。だからねついでに人も救うんだ」


その目は濁っていた。絶望を経験し他者の目。しかし、そんな事は空には関係ない。独り善がりに巻き込まれていい迷惑だ。


「訳が分からない。というより意味が分かんないね」

「自分本位で誰かに向き合おうとしない君には分かるまいよ」

「あんただって自分本位じゃないか」

「そうかもしれない。でも、少なくとも僕は今君と向き合おうとしてるじゃないか」


ああ、もう面倒くさくなってきた。適当に話に相槌でもうってやり過ごそう。


「現にくうちゃんと、上手くいってないじゃないか」


くうを引き合いに出されて、少し冷静さを書いた空。またアイツの事だ。毎回毎回足を引っ張る。だからだろうか普段特定の誰かに対して何かを感じることは無かったが、


「だから何です?アイツだって...」


子供じみた言葉が口からでていた。自分でも驚いた。俺は何でこんなにもあいつと比較されるのを嫌うのか。


「君も同じだろう?同じ気持ちがわかる立場のはずさ」


トーマスの言葉で少し腑に落ちた気がした。同じ。

圧倒的な師を持ち無責任に掛けられる周囲からの期待、羨望、落胆、嘲り、言葉を伴わない空気にすら嫌悪感を抱いたことがあるのかもしれない。自分と同じで。...同族嫌悪でもしてるってか。


...どうでもいい。...どうでもいい、はずだ。

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