黒霧の少女6
「色々と説明がある」
そう言い、廊下を進む。振り向きもせず先頭を歩く。案内の意味もあるのだろうが、その背は誰にも前を行かせたくないかのように感じた。
襖を開けると何畳あるか分からないくらい大きい部屋だった。廊下の感じからは有り得ない大きさだったが、空間を捻じ曲げるかなんかしてるのだろうと無理矢理納得する事にした。
飾り気の無い廊下、部屋。確に2人は住んでいるのに何故か生活感のない家だと感じた。
部屋の真ん中にあるちゃぶ台に腰を降ろした咲とくう。それに習い咲達の正面に座る。
くうは、俺を観察し、見定めようとジロジロ隠す気もなく視線を向けてくる。
微かに魔力の漏れを感じるから、魔力量でも測ってるのかも知れない。
まあ、俺は元々は一般人だから何もしなければ無いも等しいが。
「まず、今回の被害と目的をハッキリさせようか」
そう言って、どこからとも無く紙の束をちゃぶ台に載せる。
紙の束に向けて顎をしゃくる。読め、って、事だろう。
資料に目をやる。被害は数百人に及んでいる。場所の特定はされていない。日本に限り全国どこにでも被害が及んでいる。
この対処に第一級の魔法使い30人を動員。全滅。
海蛇の位持ちが動員され、敗走。情報を幾つか掴み生還。
情報:少女。以上。
これは、無理だ。...なんて言い訳して帰ろうか。
「こ、こんなバケモノとやりあえって言うの!?」
いきなりの大声でビクリとする。くうが咲に向かって吠えていた。
どうやら、くうも今知ったらしい。
ん?え、なに?俺とくうでなんとかしろってか。無茶言うよ。
「無理だ。俺では荷が重い。他を当たってくれ」
「何の為に燈火が魔術具を空、お前に与えたと思う?」
「なっ、まさか」
「そう。黒霧を止めるためさ。お前はこの任務を成功できれば位が上がるからなそれを見越してんだろ」
「...ママ。こいつは弱い」
今まで黙って成り行きを静観してたくうが口を出してくる。
「だったら何だ?お前になんの関係がある?」
「はっ、あなたは私のオマケ。この任務に私も参加してるの。いい?足でまといは要らないわ」
見下す様に眉間に皺を寄せ言い放つ。
俺が言い返そうと口を開くより先に、パンッと手を叩く音が俺とくうを黙らせた。音を出した方へ睨み付けるように視線を向ける。
「いい目をする。だが、今は関係ない。くう、お前は空の実力がないと言ったな」
「そうよ、何?ママはそいつの肩を持つの?」
咲は肩をすくめる。
「どちらでもないかな、どっちにしろもう一人付くしな」
「「えっ」」