黒霧の少女5
悩んでも仕方の無いことか。
自分の境遇や運の良さは大概だろう。
「行くよ。依頼を受ける。詳細を知りたい」
今回ばかりは厳しいかもしれない。
今まで何とかなったのは複数人でこなしていたからだ。自分メインで依頼は受けていない。
「ほんまかー!良かったあ。せやな、早速詳細について説明するわ」
パンっと手を軽く叩き、満面の笑みを作る。
んんん。嫌な予感。
喜々(きき)として、説明し始める中で聞き間違えかと思った単語が出てくる。
色の魔法使いって言った?この依頼ってもしかしなくてもやばいのかも知れない。
「ママ、お客さん」
くうは、誰だこいつと思いながらも魔法統括会の封書を見せてきたこの中学生くらいの男の子を咲の元に案内する。
くうは、今年の冬から魔法学校に通う12歳の女の子だった。
顔立ちは幼いが幼いながらに将来の美人を約束されている片鱗を見せていた。目は猫を思わせるアーモンド型のつり目気味だが大きく開かれた双眸からはあどけなさすら感じるほどだ。控えめな唇に芯の通った高い鼻。
どう過小評価しても美人だった。
ただ一つ残念な点をあげるとするならば、
どうしてジャージなんだろう。そう思う空であった。
「君が、そうか燈火の」
そういってまじまじと見てくる人物こそ『緑』を冠する色の魔法使い。咲。今回の依頼主という訳だ。
ハッとして振り返る。いつからそこに居たのかまるで分からなかった。と言うか、くうが居た。二人目だ。
いや、背丈とか服装で違う人って事は分かるけど余りにも同じだった。ちょっと似てるとかの次元ではなく同じ。
空は、居心地が悪くなり視線から逃れるために素っ気なくなった自己紹介をした。
「金閣寺の燈火の命できました、空です」
微かに感じる魔力の波動。ここで逃げ出さなかっただけマシだろう。なんせ、世界最強の一角が目の前にいるのだから。
多分これでも抑えてる方なんだろうけど溢れ出る魔力だけで圧倒されそうになる。
「金閣寺の燈火ですって!?」
かなり驚いた様子でくうが、空をマジマジと見てくる。
「だったらなんだ」
「なっ...」
「はいはい、そこまで。取り敢えず家に上がんな」
咲はくうの頭を軽く叩きながらそう言い、家に入ってしまう。
未だ固まったままのくうを横目に空も咲に続いた。
そして、驚かされる。
玄関を開けると海があった。...海があった?
振り返り玄関の外を見るとさっきまで居た場所なのに1歩進んだら別世界が広がっていた。
俺を嘲笑うかのようにただ、悠然と大きな平屋が海の上に浮かんでいる。
「はぁ。って、あれ?これどうやって家に入るんだよ」
「それは、こうやるんだよっ」
咲がそう言って杖で自身の魔力を使い顕現させる。それを平屋に向けて振るう。
すると、海が割れ道ができる。
「さっ、行くぞ。おい!くう!あんたもいつまでそーやってるつもり?」
石像のように固まっていたくうが咲の声でハッとし、後に続く。
「あ、えっ?ああ、待って」