黒の魔法使い6
統括会で雅と月の化け物が対峙する少し前。
その部屋には限られた人が許可がなければ入れない部屋。
統括会では、不思議な場所は複数存在する。
まるで城のような学園自体に意思があるのかも知れない。
ある人には見えてある人には何も無いように存在する部屋もある。
そして、許可のいる部屋に許可なしで入れる人物の1人の、現学園長にして賢者と呼ばれる高齢の男と、今その賢者から直々に英才教育を施されている女、雅・アセンダント。
ふむ、しかし、困ったぞ。
賢者は頭を抱えたい衝動に駆られていた。と、言うのも雅がちっとも勉強に身を入れないためだ。
事、魔法に関しては間違いなく天才だ。
なんせ、儂の魔法を1回見ただけで同じ様に使えてしまうのだから!
「なあ、爺ちゃん」
「ん、なんだ?」
「飽きた」
そう言って雅は机に突っ伏した。
「飽きたってなぁ、経営学は学園長継ぐには絶対何を差し置いてもマスターしてもらわないと」
ジトリと賢者を睨み、ハタと思い付きを言ってみた。
「……代理を立てるのは駄目なのか?」
「ふむ、そう来たか。悪くないが居るのか?そんな奴」
「居ないなぁ」
「なら、今は頑張れ。ほれ、続きじゃ」
他の先生や生徒たちなら、全財産と権利を売ってでも受けたい賢者の授業は、しかし、その価値をいまいちピンとこない雅は面倒くさがっている。
賢者は溜息をつきて別に考えなければならない事に思考を移す。
今、魔法使い達を悩ませる黒霧と呼ばれる魔法生命体についてだ。
過去、こんな事例は無かった事から協議会は大きな混乱に見舞われた。
そんな中で、日本の魔法使いの燈火が、依頼としてなら受け持つといい、早期解決したい協議会の議長は一もなく受け入れた。
しかも続報が入り聞いてみれば年端もいかない少年、少女が事に当たっているじゃないか。
しかも、しかもだ。あの、ネク・ビエンテが共に行動しているときた。
そんな折にコヤツじゃ。
名前を思い出せないと言ったコイツに雅と名前を付けた。
それも、魔力を込めて魂に名付けをしたのにも関わらず全く!何もかも縛れなかったのだ!
こんなことありえない!じゃが、有り得てしまっているのも事実。
裏世界の何か、ならば手に届く所に置いておいて監視していた方が安心安全と考え、後継者とする事で周りの反対を押さえつけつつ、あわよくば自分の駒に仕様と目論んだ。
諦めたようにダラダラペンを動かしていた雅が、ハタと動きを止めて魔力を全開にした。
大気がビリビリと振動し、雅の瞳が、変色し、何かしらの魔眼を発動させたのを理解した。
しかし、いったい何事だ。
「爺ちゃん、ヤバいの来た」
そう言って、シャツにロングスカートの姿から深紅のドレスの魔装に身を包み、赤黒い光が立った瞬間には雅の姿は消えていた。
賢者は頭を抱えた。




