黒の魔法使い1
「おい、さっさとあの目障りな木偶の坊とチビを殺せ」
トーマスは黒一色の城の玉座から部下たちを見下し命令する。
「チッ、全く忌々しい奴らだ。白の代行者どもめ」
「そんな調子で計画は達成されるのかね?黒の魔法使い殿。黒霧は飼い慣らされるぞ」
玉座の後ろにもたれかかって頭が異形の男がトーマスを嘲る様に話しかける。
空中に映し出された映像には屋敷の化け物と戦う空たちが見える。
「赤い札……陰陽師の才能もあったのか。つくづく運が悪いな」
本来なら反転の魔法を教える時に洗脳するつもりだったが、トラブル続きでそれどころじゃなくなった。
そもそも緑の魔法使いは俺に疑いを向けていたせいで暇を与えなかった。
空の味方は有能ばかりだな。
「黒の君、奴ら全員殺してしまっても?」
伏せたまま男がトーマスに答う。
「駄目だ、起源の魔力は死んだら消えてまたどこかの誰か別の命に宿る。そうなると探すのは困難になる。いいか、ヴァンパイア。裏世界と地球を繋ぐにはアイツらの魔力が要るんだ。生きて捕らえろ」
ヴァンパイアは短く返答するとサッと闇に消えた。
「私も私で動かせてもらうよ。では、健闘を祈る」
そう言ってトーマスの肩を叩き玉座の間から出ていった。
 




