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旧式 時と歌  作者: 新規四季
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黒霧の少女3

「後はこのルーンを円の中心に…」


バンッ!


いきなり開け放たれた襖の音にビックリし魔法陣を崩した。結構時間を使って制作していただけに苛立ちが凄い。


「空〜、そーらーくーん」


軽快で美しいソプラノ声が和室に響く。自分の名前を呼ばれていなければ今日も燈火さんやかましいなあで、すんでたのに。

またか、と思いながら、もう何回目かの注意を促す。


「燈火さん、開ける時はノックして、その上で優しさの気持ちを持って襖を開けてくださいよ。その気持ちがないんでしょうけど」

「そーケチケチしはんな。今日はプレゼント持ってきたちゅーのに。...最後なんて言った!」


憤る細部にまで刺繍をあしらっている赤の着物を着崩し、出るところは出て、括れが色香を醸し出し着崩しの露出の多さで目のやり場に困るのだが、今日も今日とてその言動で全てを台無しにしていく。


ここは日本人なら誰もが知るところの金閣寺、その内部である。一般的には見るだけで中には入ることすらできないわけだがそれには理由がある。


魔法使い達は度々世界遺産を隠れ蓑にする。実力が高い魔法使いは国が支援して誰も立ち入れない所に保護する。この事実を知っているのは天皇陛下、総理大臣、その他各権力者だけである。勿論、口外したものは例外なく魔法使いが殺しにかかる。


第1に魔法統括会が動き出し、援護のような形で魔道図書館が後処理をしに来るだろう。それ故に魔道に関わる者の間では周知の事実だとしてもそれ以外の人はまず、知ることもなく死んでいくであろう。それ程までに魔導は秘匿されてきている。


過去に魔女狩りが歴史上で行われてきているが、あれは下位の魔法使いもどきがヘマをしたに過ぎない。


高位の魔法使いは高位の魔法使い以外に見つけ出すのは困難を極めるし、関わることすら難しい。


その高位の魔法使いのひとりである燈火は、「空っ!君にウチからプレゼントや」そう言ってプレゼントの渡し方とは何なのかという議論が出来そうな程いい加減に封筒を投げつけてくる。しかも、速い。


魔法使いは基本的に魔法統括会が実力と貢献度、功績などでそれぞれに位を与えている。又、上位のものにはこの世の秘密とそれの守護を与えられるらしい。


平凡な魔法使いは第三級と呼ばれ、一応は魔法使いと名乗ることが許される程度だ。


そこから第二、第一と上がるが、並の魔法使いならばここまでしか上がらず第一級ならば魔法使いとして優秀の部類に入るだろう。その他は一般社会に姿を消すことが多い。


第一級の上が、花の名を持つ者、十二星座以外の星座の名を持つ者がいる。その上、星座の位は戦力として国を堕とすことが出来るとされている。その人数は13人居るとされていて、そのうちの一人が燈火なのだから世界的に見ても燈火は十分化物だった。


そんな燈火を上回る者達が時計の針と呼ばれる者達だ。表向きには12人居るとされているが情報の秘匿でそれ以上のことは開示されておらず、又、人数も12人以上居るのではと噂になっている。


そして、統括会全ての魔法使いのトップに君臨する者が7人存在する。彼等は色の魔法使いと呼ばれ神と同等かそれ以上と言われている。


世界に7人のその魔法使いは神器を統括会から与えられ、その七天の神器に認められたものしか色の魔法使いには慣れないとされている。


そんな化物燈火さんに空は思う。

ああ、もう、折角の美人が台無しだ、と。


そうは思っても決して終えには出さない空だった。美人という場面だけ切り取って図に乗って面倒くさくなるのは火を見るよりも明らかだったし、母親の様に育ててくれたこの人に言うのは気恥ずかしさがまとわりついた。


空は書きかけの錬成陣が力任せには開けられた時の振動のせいで使い物にならなくなった成れの果てを一瞥しため息を一つ吐く。


「もう少しおしとやかに慣れませんかね、無理でしょうけど」


嫌味にも動じずあっけらかんと、


「ウチはこれでもじゅーぶんお淑やかやと思っとるで」


と、平然と言ってのける。はて、どこの国のお淑やかさを持ち出しているんだろうか。


「少なくとも日本の淑女は乱暴に襖を開けないし、プレゼントと言って手裏剣のように投げるようなお淑やかさは持ち合わせてませんよ」


お転婆が過ぎるんだよ。そこが玉に瑕でもあり彼女の魅力でもあるから厄介極まりなかった。

ふと、腹いせに脅かしてやろうか。そう思った。


「刺し違えてでもお灸を据えたいですね」


錬成陣制作中だったため手元には龍の杖がある。それを燈火に向ける。


燈火はキョトンとした後、腹を抱えて笑い出す。

笑いながら手を胸の位置まで上げる。


ただ、それだけで空が手にしていた杖が反対側の窓まで吹き飛んだ。空の方など見向きもせずに。


今、何をやったんだ。理解が追いつかない。

そりゃ、中には詠唱もなしに魔法の発動出来る魔法使いは居るだろうけど、杖すら使わなかった。手を挙げただけで俺の場合、戦闘不能まで、持っていかれた。


背筋に悪寒が走る。遠い。

途方もなく長い階段の、その更に上にいる。

一生で届くか図ることすら難しい。


「ほらほら、やんちゃしないの」


で、この余裕だもんな。この人の背中は近過ぎて遠過ぎる。


燈火が空の横に落ちてる黒色のさっき手裏剣の様に渡してきた封筒を指さした。どうやら開けろと言うらしい。


嫌な予感がする。また、面倒事を押し付けようとしてるな。


だからといって避けられたことがないのもまた事実。


仕方なしに中の書面を見て疑問に思う。


「これは...」










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