ネク・ビエンテ 黒霧の館5
「とりあえず目指す場所は、あそこ?」
ノアは私達の真正面の歪な形のビルの様なものを指さして首を傾げる。
ビルの周りは靄がかかっておりより一層暗く、陰鬱な雰囲気を受ける。心做しか魔力も普段の半分くらいしか使えなさそうだ。
ここは、別の世界と認識した方がいいのかもしれないし、もしかしたら裏世界と繋がってるのかもしれない。
腕利きとはいえ、フォールスだけでは人手不足な気がしてきた。
アイテムそんなに持ってきてないんだけどなぁ。
というか、ここに物怖じしないのどーゆう神経してんのさこの2人は……
「なあ、フォールスはまだ分かるんだが、お前怖くないの?」
ノアが、ポカンと口を開けたかと思うとニヤリとニタニタ小馬鹿しした笑い顔でジリジリと近づいてくる。
ネクは鬱陶しそうに顔をゆがめ体を反らして拒絶反応を起こす。
「ここ、わたしの家なんですよ?怖いわけないじゃないですか〜。あれあれぇ〜もしかして怖いんですか?怖いんですかぁ?」
ノアは脅された憂さ晴らしも兼ねてネクの顔に覆い被さる勢いで覗き込む。
「うわ、うっざ。人格形成に難アリだな」
「へーん。仕返しだよーん」
ネクからパッと離れてクルクル踊りながらさっきとは違う笑顔を見せる。その様子は友達同士で戯けいるようにも見えた。
再び歩き始めた2人の後を追うように後ろを歩くノアが頭を下げて絞り出すように呟く。その言葉を聞いた者はいなかったが、フォールスだけはチラリとノアの様子を見ていた。
「………ウソだよ。怖いよ。私は偽りの存在なんだから」
ノアの声は震えている。




