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旧式 時と歌  作者: 新規四季
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黒霧の少女 閑話 誰かと誰か

「驚いたな、擬似転移が使えるのか。形状変化に魂喰らいを無意識か、魔法とは別と考えるべき、か」


そうなると少し厄介だ。幾度と無く繰り返してきた輪廻に狂いが出始めた事になる。


一連の流れを影から決して誰にも悟られずに見ていた大柄でスーツにジャケットを着た、一見サラリーマン風の男が独り言ちる。


サラリーマン風の男はジャケットのポケットから何やら10センチ位の正方形のネックレスを取り出した。


鏡の様に反射するほどの漆黒のそれは何処か触れ難い雰囲気を醸し出していた。

これを手に入れるのにどれだけの労力を要したか。


「さて、あの貴重な能力の所有権があいつ等に渡ることは避けなくちゃいけないのか。ものは試しかな、あの人の元に行くだろうし、今のあの子の実力を図るためにも役に立ってもらいましょうか」


「誰が、誰の役に立たせるって?」


時計の様に見える輪から、日本刀を抜刀した状態で隙もなく男が現れた。


男に遅れて2人のそれぞれ赤と黒の和服を着た女の子が現れる。


男と同じく腰に剣を携えているが何故か抜く気配は感じられない。……いや、違うな、魔力を練ってるのか。


男の後ろの時計の輪、コレの正体はあいつに間違いないだろう。

大魔法も使えるようになったのか。どれだけの無茶を繰り返したのか。


「ほう、この私の後ろを取るか」


なら、少し遊んでやるくらいは訳ない。どれだけ成長してるのか楽しみだ。

嬉しくなって笑みが自然と零れてしまう。


「あんたには此処で死んでもらう!」


片目が淡い蒼に光り、私を隙なく見ている。

いい目だ。感情のコントロールも申し分ないと見える。

しかし、それはソレ。これはコレ。


「吠えるなよ。私を知り得なかったくせにさ」


「なっ、師匠を侮辱、許さない」


赤の和服が殺気と覇気を発し、抜刀し、構える。感情に飲まれすぎだが、隙はない。


「道を違えた外道が、それ以上喋るな」


黒の和服は、鍔に手を掛け抜刀術の構えをする。冷静だな。それでいて殺すことしか見えてないな。今の段階で赤の和服の方が1枚上かな。

流石あの男の忘れ形見なだけはあるな。


『盾よ、剣よ土塊から形を成せ』


コンクリートが、3体の鎧騎士を生み出した。

図体は優に2mに届く大きさ。

碧眼の男は鎧騎士の上段からの剣戟を受け流し胴に一撃横薙で食らわす。が、ビクともしない。


「くっ、まだ、あいつの残滓に縋ってるってのか、この剣はっ」


赤の和服は距離と取り刀に魔力を込め刀身から焔を創り出し、それを鎧騎士に打つける。


鎧騎士が盾で焔を防ぐと、盾が燃え尽き跡形もなく灰となった。


鎧騎士が瞬足で赤の和服に詰め寄り、斜め上から切りつける。赤の和服は腰を落とし、鍔に近い場所で刀を受ける。鎧騎士の力を下に向かう様に剣を受け流し、鎧騎士の真上に跳躍。鎧の隙間に刀を突き刺す。


『鳳凰よ、戒めを今解き放つ。全てを無に帰せ、焰!』


鎧の内側から灼熱の業火を打ち放し、鎧の耐久をいとも簡単に突破し、後には灰すら残らなかった。


黒の和服は、何時(いつ)、そんなに撃ち込んだのかと言う程に鎧騎士に無数の切り跡を残していた。


鎧騎士の盾は、拳程度(こぶしていど)の大きさにまで削れ、剣もボロボロの状態になっている。鎧騎士が、詰め寄ろうとすると黒の和服が刀を抜き収める。その動作で鎧騎士は無数の切り跡を付け元の場所まで戻される。


「いい加減土に戻りなよ『八咫烏よ、戒めを今解く。夢限の剣戟よ、風に乗せて穿て、三尽風(さじんふう)』」


黒の和服が刀を向ける方に強烈な風が吹く。その風を受けた鎧騎士は風に抗えずただひたすらに切り刻まれていき、遂には形を失った。


「僕の前に立っていいのは師匠だけなんだよ、ごみが」


憎しみの強い口調で何も無くなった目の前に吐き捨てた。


「2人が片付いたってのに俺が苦戦してちゃカッコがつかないよな.........」


刀をしまい、呼吸を整える。


ボソリと何かを呟き、身体に青の線が無数に浮き出した。次の瞬間には鎧騎士がぐちゃぐちゃになって吹き飛んでいた。


「片付いたな、奴はどこにっ」


碧眼の男が周りを見回すがサラリーマン風の男の姿は見えなかった。


「逃げられた」


赤の和服がそう呟き、「ちっ、次こそは」と、黒の和服が呟いた。


「手遅れになる前に仕留めなくては」

「師匠なら大丈夫」

「そうそう、それにウチらも付いてる」


2人に励まされ隻眼の男は必ず成し遂げると、決意を固める。

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