深淵なる樹海11
空がこの場にいたら甘いっ!って怒りそう。
私は上座でトップっぽい人の横で暖かいお茶を啜る。香りたかくて程よい渋みで呑みやすい。
部屋の空気は重たいし、どんよりしてるし、居心地は最悪だ。
神様も普通にお茶を飲んでる。
飲めるんだ。
「で、私に何させようっての?」
舐めた態度とられたからおっさん達全員に対して舐めた態度で聞いてやる。
やっぱりイライラは落ち着かなかった。
陰陽師達は私が一瞥すれば下を向き、触らぬ神に祟りなし状態だ。
弱すぎでしょ。なんの為に居るんだか。
全世界ほぼ魔法使いが居るってのに、古風な陰陽師なんて時代遅れもいい所でしょ。
「私達からは一人の男の救出を頼みたい」
「……言っちゃ悪いけど、死んでるんじゃないの?」
陰陽師の力なんて今のでたかが知れてるのが分かった。
対人性能は弱そうに感じる。
「いや、それは大丈夫だ」
「どうして?こんなにあなた含め弱いのに」
「返す言葉もない。が、奴は封印状態だ。次元の狭間に居るのだよ」
次元の狭間。ってなんなの。試練の間みたいなものかしら。だとしたら空の方が向いてそう。
私の能力的にはサポート型なんだし、相方が居ないと格上や非常事態の時に何も出来ない。
「はっ、どうしろってのさ。はぁ、悪いね神様、他当たってよ。専門外なの」
「ふふふ、いえ、適切なんです。だってあなたは呪詛体術が扱えるでは無いですか」
神様相手に見せた記憶がないんだけど。
神様はニッコリ笑ってるけど、全て知ってますよと言われてるみたいだった。
「なにっ!」
「まさかさっきのは」
「扱えるやつなんて居ないはず……」
「そうだ、奴は死んだ!」
神様が呪詛体術という単語を言った途端薮をつつかれた蜂のように騒ぎ出した。
わーわー、喚く喚く。
誰も説明してくれないし、不親切な組織だ。
見た目が弱そうなら喚いて、負けたら喚く。
なんか気に触ったら喚く。
あら、だんだんイライラしてきたわ。
この建物だったら10発かな。
柱と床と、側面を最後に……
『くうさん、それだけは止めて下さいね?本当に』
少しだけ慌てた様子の神様が私に恐縮してるのを見てか、陰陽師達は様々な視線を頂いた。
「建物はダメでも人はいいでしょ。人に物を頼む態度っての、教えてあげないとね……」




