魔法の前進8
「魔法生物だな」
パチパチと電気を飛ばす雷猫をじっとみる。精霊の部類に当たるだろうか、ホムンクルスになるのだろうか。
……過去に無機物から生命を作り出した魔法使いって居たっけな?どうだっただろうと頭を悩ませていると乃愛が限界が来たようで。
「じっくり観察してないでどうにかしてって!」
猫のように吠えられた。考え事をしていた空はビクリと跳ね上がり、いそいそと捕獲の準備を始める。
乃愛は黒霧化した手で掴んでいるため雷猫の飛んでくる電気だけに気をつければいい。
素手で持とうものなら炭化する程に高電圧でかなり上位の生物となっているがそれに気づけていない。
乃愛が上手いこと捕獲してくれた為に部屋が少し焦げた位で済んでいるが、下手したら全焼していたかもしれない。
「あ、ああ。悪い」
既存の文字じゃない文字が、ビッシリと隙間なく彫られている透明の瓶を押し入れから取り出した。
ルーン文字から古代文字、ヒエログリフも書かれている。文字自体に魔力が宿り複数の効果を与えている。
コルクの蓋をとって雷猫に向ける。
『心鎮めここに眠れ』
雷猫がパッと消え、瓶の中にとぐろを巻いて眠った状態で入っていた。
「不思議」
乃愛の手の中になんの感触も無くなって黒霧を解除する。少し手がビリビリした。
「魔法はまだまだ沢山あるし、どっちかって言えばこれは地味な方」
空は瓶の中身を観察しながら言った。
報告義務ありそうだなーと思いながら雷猫を見ていた。
「嘘でしょ」
「大派手な黒霧使うお前が言うか?」
「そういえばそうね。ねえ、どうだった?上手く扱えてたでしょう」
褒められた事が嬉しくて胸を張って笑っている。
空はそんな様子を見て安堵したように息を吐いた。
「ああ、正直驚いた。こんなにも正確に操れるなんて。普通は怖くなって上手く魔法が扱えないなんてことはざらでそのせいで魔法使いを辞めざる得なくなるやつもいるってのに。随分と図太い神経の持ち主なもんだよ」
「私にとって魔法は今や生命線ですからね。死ぬ物狂いで練習したもの」
わけも分からずここに来た時魔法で溢れかえるこの場所は怖かった。
手が震えるほどだった。
それでも燈火は面倒を見てくれた。理由は何も言ってはくれなかったけれど、空が教えてくれた。
「だろうな」
ボソッと呟きながら空は地下へ移動する。




