その男、トーマス1
トーマスにとっての味方は居ない。対等な協力者が精々だろう。
トーマス側の魔法使い達は誰もが正当なる道からドロップアウトした、もしくは、させられた者が多い。
魔法使いには規律が多い。魔法という力は制約無くして使えない程に強過ぎるのだ。
なにも人間だけが使える訳でもない。トーマスが玉座に座っているこの国はヴァンパイアの国の1つだし、他種族はまだまだ居る。
いつからだろうか、話す行為が目的の為の手段に過ぎなくなったのは。
寂しさはとうの昔に置き去りにしてきた。
音ひとつ無い玉座は暗く、退屈な物だ。
豪華な装飾も、無駄に広い空間もただ1人の為にあるには悲し過ぎる。
「自我を残しつつ洗脳した奴は何人居たかな」
トーマスが行儀悪く、玉座の片方のひざ掛けに足を乗せ、逆方向には背をもたれて白紙の紙を束ねた物を見ている。
「現状の協力者どもはどうするかな〜」
目頭を抑えて力を抜いて空を仰ぐ。その時、高い天井の頂点に何かしらの仕掛けを見つけた。
トーマスは自身を浮遊させる魔法で頂点まで浮くとその場所に魔法の痕跡がある事に気が付いた。
『その偽りの姿、その偽りの守り。全てを見せよ、解放せよ』
解呪の魔法を使えばかなりの抵抗を感じたが魔法を解除できた。
地面に真っ逆さまに落ちていった何かを地面に当たる前に浮遊させる。
玉座に座り直し手に取ればそれは……




