魔法の前進5
「魔法って何か曖昧だろ?」
翌日、この日もこれといってやる事はない為昨日の続きをする事にしたらしい。そこで、乃愛の認識を確かめる為にも改めて魔法について話すことにした。
知ってるのと知らないことでは今後、乃愛が強くなれるかが変わってくるだろう。
「これじゃないの?」
乃愛が右の掌の上で小さく黒霧の竜巻を作り出す。
確かに魔法は曖昧でザックリとしかわかっていない気もする。それでもこの黒霧が魔法だと言うのは理解していた。
「お、だいぶコントロール出来てるじゃないか」
「ええ、おかげさまで。アナタのお師匠様は容赦がないわ」
空がまだ眠りについている頃にコントロール出来るまで毎日何十時間も魔力が無くなるまで特訓させられたのを思い出して遠い目になる。
大変だったなあとしみじみ思う。
「燈火さんにつけてもらったのか。ラッキーだったな。で、だ。魔法と言っても複数存在する。ひとえに人間と言っても様々な人種がある様に魔法も種類が存在する」
軽く流されてそれはそれで寂しくなった。
「まるで先生ね。学校行く意味なさそう」
「俺は多分授業は免除されるよ」
空が仮に統括会へ入学したとしたら逆に教鞭を持つことになりそうだ。そうなったらそうなったでいい人材を見つけやすいと思う事にしている。
舐めてくる奴は実力差で黙らせればいい。
今の空を負かせれるのは位持ちでも時計レベルだろう。元々優秀で秀才な上に限界を何度も超えたせいで地の魔力も相当上がっていた。
「よっぽどエリートなのね」
「どうだかね。……話の腰を折るな」
「ご、ごめんなさい。つい」
ポコりと軽く頭を叩かれた。でもなんだか嬉しくて、えへへとニヤけてると、何が楽しいんだかと呆れられてしまった。
「魔力を形にする方法。道具に魔力を流して形にする方法。大きくわけてこの2つなんだ」
「前者が魔法使いで後者を魔術師って言うんだっけ」
「よく知ってるじゃないか。その通りで乃愛は魔法使いに分類される。でも媒体を持ってないだろ?」
「杖?」
「そうだ。要らなさそうだけどな」
「私にくれるの?」
「それはまた今度。今やりたいのは黒霧を魔術化する事」
残念。今は所持品は殆どないから自分の所有物が1つでも欲しかったのだ。自分がそこにいるのだという証明になる気がして。
「あの、本人が言うのもなんだけど危険じゃないかしら」
「口外しなければいいだけさ。くうに回数制限ありで渡して起きたいからな」
あら、と空をみるとバツの悪そうな顔をしている。くうちゃん脈アリか?と気になってグイグイ行ってみる。
「随分と可愛がるのね」
「多分これから一緒に動く事も多いだろうからな」
ぶっきらぼうに返してくる。それっぽい事を言って。でも具体的なことは、ぼかされた。
「どうして?」
詳しく知りたくて聞いてみるともごもごと口ごもった後に話し始める。
「同年代で俺に匹敵するやつはアイツくらいだし、覚えてるか?ネクとフォールスの事」
「いえ、知らないわ。会ったことあるのかしら」
「暴走中だったしな、仕方ない。で、そいつらは魔道図書館だっけかに所属してるらしい」
「それが何かくうと組むのに関係あるの?」
「白の代行者」
また知らない単語が出てきましたよ。
「俺は興味があるから度々一緒に行動しようかと思ってる。くうは所属を迷ってるふしがあった。そんときにアイツにスカウトしてるからな」
「悪い奴らじゃないといいけどね」
「なんか知ってそうなんだよな」
特にネク・ビエンテとかいうチビ。空はネクからシンパシーみたいな物を感じていた。
それは起源の魔法がらみなのか、全く関係ないのか。重要な気がするし、歩み寄られてる。考える余地もある。迷いは統括会に行くか魔道図書館に行くかを決め兼ねることだ。
「ふーん?心配なんだ?」
「心配、か。何かきわち悪さを感じるんだよな」
「魔道図書館に?」
「いや、全体に。出来すぎてるような感じ」
「考えすぎじゃないかしら」
「魔法の世界では信じる行為は難しいからな。話が戻るがそこで用心する為に」
「私の魔法ね。了承したわ。お役に立てて何より」




