囚われ四重奏45
「すいません、まだこの魔法に慣れてなくて。あと一日はかかります」
プリンセスが指輪を撫でて悔しげにする。
自身の力と指輪に認めさせても自分自身が指輪の求めるレベルにいない。その事が悔しくて仕方なかった。日々の鍛錬は怠ってたわけじゃ無かった。それだけにもっと出来たと後悔ばかりが募る。
「そうか、まあ、色々出来る時間が出来たと思おうか」
エレは気にする素振りも見せずならばと転生体達に順応と納得をしてもらおうとする。
「ヴァンパイアかどうかの確証がほしいんだろ?簡単さ、人とは違うんだ岩でも殴れば分かりやすい」
「アナタも同じ様なものなのに随分と偏ったことを言うのね」
ビアがキッとエレを睨みつける。思う所があるのか当たりがきつい。
『盾よ、剣よ土塊から形を成せ』
エレは目を向けただけで何も言わなかった。
アックスは隣の部屋から聞こえる会話の雰囲気が悪すぎて聞き耳を立てながらみんなのいる部屋には戻らずワインを飲んでいた。
何も無い所から土塊の鎧が現れる。
「殴るなり蹴るなりしてみろ。普通の人間なら無理だって分かるだろ?」
簡単な土魔法とはいえ強度はそれなりにある。具体的にはサイが突進してもビクともしない。
レーナはおもむろに立ち上がり土塊を見る。
心配そうな池鳥の頭をなでてから蹴りあげるとインパクトの衝撃は部屋中に響き爆散する。
プリンセスやビアが驚愕し目を見開いている。
ヴァンパイアは戦闘能力は確かに高い。高いけどここまでじゃない。
この魔力が凝縮された土塊の鎧はヴァンパイアの上位の実力者でも精々ヒビが入る程度だろう。
「……私は、薄々感じてた」
静まり返った部屋に虚しく落とされる声。
他の転生体ヴァンパイア、池鳥達もレーナに習って蹴りつける。
「いや、いったあ!」
レーナが粉砕したところを見るに自分だって出来ると思い込んだ鈴がいきよいよく蹴る。
粉砕は出来なくとも鎧は吹っ飛び、それでも半壊はしている。
鈴は足を抑えてぴょんぴょん跳ねるが数十秒もすれば痛みどころか違和感すら消えた。
「ん?あれ?何ともないわ」
「化け物だな」
零が引き気味に言う。
「自分が気持ち悪りぃ」
肩を抱いてブルブル震え上がる。
「私の前でそれを言われると間接的に悪口言われてるみたいでショックです」
プリンセスは転生体の素の力の強さに恐れすら感じながら和ませてあげようとわざとらしく落ち込んだ振りをする。
「ええ、いや、その、言葉のあや的な?」
鈴は単純なのか純粋なのか焦って変なことを言い始める。
「そう言われてもコッチは昨日まで人間として生きてきた訳ですし」
「いや、零、お前ぇ、今は喧嘩ふっかける時じゃないよね?ね?」
わーわーと鈴と零がじゃれ合ってるのを横目に池鳥はレーナの手を取って尋ねる。
「ねえ、レーナは知ってたの?」
「何を?」
手を握る力が強くなる。
「自分が人間じゃないかもって」
池鳥は優しくレーナの手を包み込む。
レーナは唇をすぼめ微笑んだ。薄らと頬に朱が差す。
「……ママが言うには生まれた時、私の目は赤かったらしい」
その言葉を聞いてプリンセスとビアが息を呑んだ 。
「それって真祖じゃねーの?」
アックスがここぞとばかりに部屋から出てきて爆弾を投下する。




