囚われ四重奏38
「逃げたか。王の腕に何かしらの権能でもあるのか?」
玉座の間に大きな風穴が空いたがそこに血の一滴も着いていない。
最後の最後に希薄を使って逃げた様だ。
「私一人で問題はないが面倒だな」
トーマスはヴァンパイアに指示を出す。
速やかに動き出したヴァンパイア達は聖域と表世界に散っていった。
玉座の横には棚があった。鍵が掛けられていたが次元の魔法で扉だけぶち壊して書類を見る。
「ヴァンパイアどもは面白いことをやろうとしてたらしい」
「ビア!ビア!しっかりなさい!」
体を揺さぶられ重たい瞼を開く。
どうやら死にぞこなったらしい。
どうやってここまで来たのか、どうやって空間を超えているのか覚えがない。
酷く心配そうなプリンセス。気を紛らわそうと敢えて淡々と作戦の成功を告げる。
「プリンセス、第1段階は成功です」
「どこがよ!?アナタ死にそうじゃない!」
どうやら逆効果になってしまった。涙を浮かべて今にも叫び出しそうだ。
「なら良しです。死んでない」
そう、死んでない。なら次へ移らねば逃げることもままならない。
「……指輪を。王位継承を」
体が重い、意識が飛びそうだ。作戦は伝えてある。後は任せるしかない。
ビアは指輪をプリンセスに託した。




