囚われ四重奏37
どれだけの数がいようと関係ない。
希薄の魔法、最大出力。ビアに向かって集まったヴァンパイア達はビアに触れることなくひとかたまりとなってヴァンパイア同士でぶつかった。
ビアは希薄の魔法で宙に舞い上から細かな風の針を降らす。幾重も針が容赦なくヴァンパイアに降り注ぎ血を垂れ流し地面に張り付けられた。
「……王族の力ですね、厄介な。いくら傀儡と言えどヴァンパイア複数人相手にコレですか」
玉座から立ち上がりトーマスがこちらに歩みを進める。
「次はお前だよ」
膝に手を当てて首だけ上げて言う。限界が近い。
体に毒が回り始めている。
「もう限界じゃないんですか?」
「だったら?弱った相手しか直接戦えない程なんだろ?お前」
「不快ですねぇ、実に不快だ。もういい死ね」
今だ。トーマスは玉座から30メートルは離れた。玉座の後ろには王が虚ろな表情で突っ立てる。
トーマスは杖に魔力を込めてビアに向ける。
空間が歪んで見える。
フッと消える。
「チッ、まだ使えたか!」
悪態をついて周りを警戒するトーマスを横目に王の真横まで移動する。
「すいません、お父さん」
攻撃する時は希薄は解かなくては行けない。
トーマスは希薄が切れた一瞬でビアの場所を見つけ反転の魔法をビアに向ける。
空気が捻れ強引な重力で引っ張る。
ビアは一瞬の躊躇もなく王の右腕を切り血を浴びながらトーマスを見る。
ビアが吸い取られる様にトーマスに引き付けられ無防備な状態だ。
トーマスはもう一度反転の魔法を使い今度は空気を押し出してビアに風穴を開けるつもりだった。
目に見えない攻撃がビアを襲う。




