囚われ四重奏35
私は腐っても王の血を引く者だ。
それを知ったのは雨に打たれ熱が酷く死ぬ寸前の時、私は拾われた。
その時は親が誰かも知らないけどここではよくある事だ。
何日か寝ていたらしい。すっかり熱は引いた時目の前にいたのは老人だった。
ボロボロの服は私と一緒だったけど幼いながらに強さをその体現者を見た瞬間だった。
「気配が分からない相手に同太刀打ちするのか見せてもらおうか!」
私はそこに居ないがここに居る。
相手を王の次元の魔法を使うと仮定した上で勝たねばならない。
どうしても、最悪王が死んででも王指輪がいる。
相手はそれを知らない。逆上した小娘と思っているのかもしれない。
しかし、油断は禁物だ。なにせ人間の癖にヴァンパイアを手中に収めたほどの相手だ。
死角に回り距離をとって貫通の魔法を無詠唱で放つ。
トーマスは動かずニタニタと笑っている。
トーマスに届く直前、次元が裂けた。
次元の裂け目に飲み込まれた魔法はそのまま消えた。無効化されたのだ。
「おや、その速度では届きませんねぇ。どうです?これがヴァンパイアの王の力です」
両手を広げて高笑いするトーマスに狂気を覚えるが言ってられない。
目的は腕を切ってでも指輪を手に入れて逃げる。
私は一旦気配を戻す。
「所詮他人の力でしょ、正面からの戦闘には向いてない魔法が得意なのかしら」
「さあ、どうかな?君が身をもって教えてくれ」
トーマスは杖を地面に付いた。
地面がボコボコと波打ちビアを襲う。
「クッ、風よ纏い舞われ。ソナタは誰も受け付けない!」
ビアは最速で得意の風魔法で自身の周囲に風を起こし迫る地面を削る。
しかし物量が勝った。ビアが受け切れず壁際まで吹き飛ばされる。
気配を薄めさらに風をクッションにして最小限の被害に留めることにはできた。
「一体何の魔法だ?」
「……希薄の魔法も万能じゃないようですね」
次元の魔法と土魔法か?分が悪い。
出し惜しみは無しだ。魔力を解放する。私の中の血液が沸騰するように熱を帯びる。
身を削る諸刃の刃。
私はキッとトーマスを睨む。




