囚われ四重奏34
聖域に轟音と振動が走る。
仕事をしていたもの達は倒れ、そして何事もかなったかのようにまた動き出す。
そんな中、悪態をついて怒りの形相をする者もいた。
「舐めやがって、殺せと命じればよかった」
王の間にて、玉座に座る男。王は玉座の後ろに只ずんでいる。感情の思わせないまるで、石像の様だ。
「皆の者!反逆者を見つけ次第、殺せェ!!」
聖域にいるヴァンパイア全てが動き出す。
たった2人の少女を殺す為に。骸の様な、傀儡の様な。本来の誇り高きヴァンパイアはもう居ない。
ただ1人の男に操られる人形に成り下がっていた。既にヴァンパイアの国は滅んでいる。
「動きました!」
「ええ、気を付けてね」
「プリンセスこそ……行きますっ!」
囚われている牢獄は魔力を通さない。
即ち、形態変化をして逃げることは出来ない。普通ならば。ビアは特別だ。
ビアのヴァンパイア特有の霧になる能力は超越している。こと、この能力に限り王も含め右に出るものは居ない。
ビアは存在を消せる。
この世のベクトルとは違うベクトル空間へ移動できる。その間に起こる全ての出来事はビアに関与できない。
爆発させたのは牢獄から遠い場所。武器庫と厨房。どちらも爆発させやすい場所だ。
途中、混乱を増やす為にある場所に向かう前に爆発を仕掛ける。
それは、頭痛が起こった場所である城門と、教会。巡回の数が尋常ではないがビアにとってはその全てが赤子のように思えた。
時間式の爆弾を設置しその場を離れる。
ビアの目的は場所へ難なく入る。
「中々に優秀なネズミだな」
「……貴様は何者だ」
「今から私の奴隷になる物に教えてやる必要もあるまい」
「っ!王にまでその毒牙を向けたか!」
「人形達をかいくぐったその手腕見せてもらうか!」
宰相だった男は姿を変える。一見するとただの男。しかしその容姿には見覚えがあった。
現在、全世界で最重要要注意人物として指名手配されている男。
トーマスだった。




