囚われ四重奏30
何がおかしい。狂い始めている。いや、狂っていると気付いた時には既に手の施しようのない状態だった。
姫は最近、従者や聖域に仕えているヴァンパイア達が虚ろな目をしていると感じていた。
いつか自分自身にも影響が来る事を予想した姫は王家に伝わる魔法、血の魔法を使用した。
この血の魔法は王家の血の魔力によって効果が得られる魔法で姫が使ったのは呪いやそれに該当する類を無効化するもの。
姫は従者の1人で親友のビアを気にかけつつも指示を出した。
「どうしました?プリンセス」
「ビア、貴女の目を使って聖域の人達の魔力を見て欲しいの」
「?どういう事です?」
「ココ最近聖域の様子がおかしいと思わないかしら」
「あー、そういえば皆さんボーッとしてる事が多いような気がしますね。血が足りてないのでしょうか」
「私は外部から何かしらの攻撃を受けていると考えています」
「ッ!は、早く国王様に伝えないと!」
「ビア!落ち着きない!事はそう簡単じゃ無いかもしれないの」
姫の魔力は武力に関しては並び立つものもそう居ないほど優れていが反面、応用が効かず、探る、洗脳、操るといった繊細な魔法に対して干渉するのが難しい。
ビアはその点姫と真逆だった。戦闘能力こそ皆無だが魔眼による洗脳、魔力探知、気配遮断といった暗殺者並の能力に優れている。
この事は姫が隠し通している。ビアも姫の為に常に無能を演じているが情報は誰よりも彼女の元に集まっている。
「プリンセス、でもここらの人達は異常無いみたいですが……」
「貴女以上の洗脳術を持っている場合ってどうなりますか?」
「そ、それは……違和感を感じられません。まさか」
「ええ、そのまさかでしょうね。ビアこれを」
そう言ってビアにシンプルな首飾りを手渡した。
ロケットが着いている目立たない首飾りは王家、姫の恩恵が掛けられている。
「これを付けていなさい。呪いを防いでくれるはずよ。ビア、貴女にお願いがあるの」
「プリンセス、遠慮はいりません」
「……聖域を探って。必ず何がある筈よ」
「私の忠誠は貴女のために」
ビアは闇に溶けるように気配が薄れてゆく。
姫にはもう存在が見えていなかったがビアは姫の目の前でロケットを両手で握りしめ目を伏せていた。




