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囚われ四重奏19
たくっ、心配させるんじゃないよ全く。
私だって若くない。本来なら投獄され封印されて然るべき存在だ。
「我らが王様は無茶ばかり。ちったあ大人しく信用してくれてもいいと思うんだがね」
エレは部屋から出ると少し歩き、自分の影を2回軽快に叩く。
「はっ、何様でございますか。エレ様」
エレの影から真っ黒な人型が膝を着いて現れた。
纏う魔力は異質で、そこに居るがここに居ない。
声すら男か女か、子供か老人か分からない。
1音1音声が違いチグハグだ。
「任務だよ、裏世界をさぐってくれ」
「ヴァンパイアですか?」
「そうだ。それと、ヴァンパイアの協力者も知っておきたいね」
エレがそう言うと真っ黒な人型はエレの影に潜り消えた。
「そういえば私の目で見ておけと言ってたな」
エレは目を瞑り魔力を目に集める。
ゆっくりと開かれたその瞳はある未来と起こりうる複数の可能性を脳裏に映し出す。
その1幕にエレは久々に戦線復帰する事を覚悟した。




