囚われ四重奏16
「……行ったな。では少しだけそこで待っててくれるかな」
フォールスはチラリと後ろを確かめ、鉄壁の守りが貼られたのを確認した。
フォールスの役目は大方終わり、後は一時撤退するのみとなった。
「姫様には困ったものですねー、いつ計画を知ったのやら。剣聖、知りませんか?」
燃え盛る地面から何事もなかったかのように火を抜ける執事。
「ノーコメント」
その執事に対して余裕を見せながらフォールスは懐中時計をみる。
「まあ、いいでしょう」
執事の姿はみるみるうちに変わっていく。
翼が生え、角が出て見た目は人間だった姿の面影は最早ない。
厄介なのはこうなった目の前の執事のみだ。吸血鬼の本来の姿。裏世界の住民。闇の化身。
色々言われるが分かっているのは害がある事。
フォールスにとってはそれだけだ。
蝙蝠は血の壁に触れた瞬間に溶けて腐臭を放ち液体となり絶命している。
末恐ろしい能力だ。
フォールスでは相性的に勝てない相手だ。
敵に回したくはない。
フォールスは執事元い吸血鬼に斬りかかった。
「おっそいなー、先輩の言う通りにしてるのになあー。あー、おっそいなー」
神域もとい外見は完全に神殿から少し離れた森の中。
死神が持ってそうな鎌を携えて、幾つもの死体の上に胡座をかいて女が不満そうにしている。
フォールスの後輩にして、魔導図書館の構成員。
彼女自身魔力は膨大だが、杖の適性がない人間だ。
そんな人間が雑魚とはいえ、吸血鬼数十人を殺している現場は異様な光景と言えよう。




