黒霧の少女、乃愛7
フォールスはなんて事ないように2人を担ぎ歩き出す。戦いの疲れを感じさせない姿は彼ゆえの頑丈さを持っているからなのだろうか。
「ねぇ、フォールスは傭兵かなんかなの?」
「フォールスは剣士だ」
ネクが答えてくれる。
ただ、あまり突っ込んで欲しくないみたい。
「凄いのね」
お世辞じゃないけどそれ以上は言わなかったし、言っちゃダメな気がした。
フォールスは言葉を呑み込んだ。
少しだけ気まずい空気が流れる。
地雷を踏んだらしい。以後気をつけよう。
車に乗り込み一先ず咲の家までま車を走らす。
一般人の帰宅ラッシュと重なり混み合う道路。
「こりゃ、時間かかりそうだな」
ネクが疲れた事を隠す気もなく言う。
「……しかたない」
フォールスはポイッとネクに飴を投げる。
「じゃあ、軽く今後の予想を伝えとこうかな」
ネクが受け取ったのは空の魔力のこもった疑似回復薬の飴。口に頬張り世間話みたいに重要な事を話し始める。
「予想って」
「………くうは、立場が、危うい。それは、空も、同じだが」
フォールスが少しだけ補足する。少し過ぎてなんにも伝わってこないんだけどね。
「更にややこしい事に君達は強力すぎる後ろ盾があると来た」
「そうすると?」
んー、話が見えてこないな。結局どういうことなんだろう。
「どこかに所属を決めとかないと最悪殺されるかも」
「急に不穏!」
「私としては魔導図書館に来て欲しいんだが…」
「……親が統括会なのに?」
進む先は統括会だと思ってた。他の可能性なんて考えたこともなかったし悩むこともなかった。
私には選べる道がある。
「意思決定権は個人にあるから意思次第では来れるけど、しがらみがねー」
しかし、ネクはどうも簡単なことでは無いと言う。
「しがらみ?」
「……人種も不味い」
フォールスがボソりとつぶやく。
「日本人って事が?」
「そう。陰陽局はと入れたがるし、統括会は来て当然って感じだろうし」
「私は……空と一緒がいいな」
勧誘するに値しないと思うけど。
1人は心細いし、隣の寝こけてる空を見て思う。コイツと一緒だと私の世界はグンと広がる。
「………学校見学でも、すれば、いい。くうは、今回の事で知名度が、かなり、上がった。下手なことは、して来ない」
フォールスは悩むくうにそうアドバイスをした。
「なんも考えて無かったんだなー。そうだね、見て決めるよ。でも……」
言い淀むとネクが茶化してくる。
「空と一緒がいい?」
気恥しさが込み上げて頬を膨らまして不満をアピールする、くう。
「むー」




