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 トライアングル ―良いと酔いの家族―

作者: ふじい やたく


 初の短編です。

 一応オムニバス形式でやっていくつもりです。


 お酒の味を知ったのは小学生の頃だった。

 氷結のグレープフルーツ味。水色と白銀のその缶に魅了されて、母のほろ酔いに誘われ呑んだその味は僕の世界を変えた。


 喉を通るその熱い感覚と、頬につかう重い眠気は僕を一瞬で虜にした。


 中学生になった頃、悪い友達ができた。タバコや酒は当たり前のやつらだ。

 僕は元来小心者で、目立つような事はいっさいしなかったが、仲間といる中ではタバコも酒にも手を出した。


 中学二年の春、母に素行不良がバレてしこたま怒られた。僕はきまって反抗的な態度で母を罵倒した。それでも母は負けずに僕の髪を掴み、頬を叩き、自分の頬に涙を流した。

 思い切り叩かれた頬は赤く腫れて、何日か痛みは消えなかったけど、何よりも母の涙が僕の心を締め付けた。


 それでも母は母と二人で呑むときは甘く、自分の昔話をよく僕に聞かせながら二人で次の日は二日酔いを決め込んだ。

 そんな甘くて、優しくて、時には鬼のような母が僕は好きだった。



 高校に入る頃、母は仕事を辞めた。兄が働きだして収入面では安心したのは事実だろうが、母はその年あたりから体に不調を訴えていた。だから、パートを辞め、家にいる事が多くなった。


 「ねえ? あんたこの先何やって生きるの?」


 母はそう僕に言う。


 「うーん……やりたい事とか無いし今のまま飲食関係かな?」


 「ふーん、そっか」


 僕と母の将来設計の話はいつもここで終わる。

 しかし、ある日の夜は少しちがった。


 「あんた好きな事ないわけ? そんな人生つまんないでしょ?」


 「つまんないけど、特にないからしょうがない」


 「人生一度きりなんだからさぁ、何かやってみたら?」


 母は何かを諭すように僕に問いかける。


 僕だってやりたいことがない訳じゃない。むしろたくさんある。

 しかし、今の家庭の経済状況やらを考えると自分勝手に何がやりたいなんて言えないのだ。


 「僕は飲食で働くよ」


 僕は決まっていつも同じ言葉を言う。


 母が一人で僕達兄弟を育ててきてくれた。

 父は僕が小さい頃に離婚してそれから何年も会っていない。今ではもう父の顔すら思い出せない程遠い過去の話になってしまっている。

 経済的に裕福とはお世辞にも言えない僕の家は、お金の苦労はあえど幸せに過ごしている。

 母は『片親』であることで僕らに苦労をかけまいと必死に働いてきた。だから僕も高校を出たら大学には行かず、バイト先のイタリアンレストランに就職するつもりだった。


 本心を言うと僕には夢があった。

 それは『プロのミュージシャン』になることだった。

 こんな大博打といえそうな事を『夢』と言ってしまっていいものだろうかとも思うのだが、好きな事、なりたい自分を夢というのなら、これは間違いなく僕の『夢』なのだろう。


 昔、母と観た古い映画のワンシーンに黄泉の世界からヨミガエリ、最後にライブをやるシーンを見た。そのなかのキーボードの男の人がかっこよくて、映画の内容よりも、その男の人の話で母と盛り上がったのを憶えている。


 「アンタ、将来こういう風に生きてみたら!? 髪型も変えて金髪にしてさ!」


 母は映画のそのシーンを指差して、幼い僕にそう言った。

 母のその言葉に僕は背中を押された気がして力強く頷いた。


 しかし、小さい頃決意した夢などきっと大抵が夢ではないこと年を重ねるたびに気付かされた。

 あの人みたいにキーボードが弾きたかった。

 あの人みたいに髪の毛を金髪にしたかった。

 あの人みたいに……。


 全て叶わなかった。キーボードを教えてくれる人なんて近くにいなかったし、音楽教室に入るお金も無かった。まして母は金髪にするのは子供のすることじゃないと、僕をしかりつけた。


 バンドに対する夢の意識が遠のくのと比例して、僕のバンドへの執着は拡張していった。

 悪友とつるみだしたのもたしかその頃だった。


 お酒を飲んでタバコを吸って、仲間とロックを極めていた気になっていた。

 ろくに酒の飲み方も知らない僕らはあればあるだけ酒を飲み、好きなだけ騒いだ。幸い警察沙汰になる事はなかったが、僕は母にしこたま怒られて素直に悪行はやめた。


 自分はロックでもなんでもないと知った中学の春だった。


 その年の僕の誕生日の事だった。毎年当たり前にくる誕生日。いつもより少し照れくさい朝に僕はいつも通りに「おはよう」という。


 「おはよう! 誕生日おめでとう!」


 母は仕事の仕度を止めて僕のほうに歩いてきた。手には大きな長方形のダンボールを抱えていた。


 「ありがとう……。 なにそれ?」


 僕は今まで見た事のないダンボールをみて息をのんだ。


 『音楽機材 ギター』


 箱に張り付いている宅配の紙にそう記されていた。


 「お誕生日おめでとう。これわたし達からのプレゼント! ちゃんとお兄ちゃんにもお礼言うのよ? お兄ちゃんもバイト代だしてくれたのよ」


 母はにっこりと微笑むと僕にそのプレゼントを渡した。

 気がつくと兄もリビングに来ていて、少し照れくさそうに「おめでとう」といってくれた。

 僕はもう中学生なのに、まるで少年に戻ったようにはしゃぎながら二人にお礼を言った。


 母は慌てて仕事の準備にもどり、兄は朝食の準備を進めていた。その横で僕はダンボールのガムテープを思い切り剥がし、ゆっくりと蓋をあけた。


 僕の目の前に現れたのは『黒色のアコースティックギター』だった。初めて手にしたそれは思っていた程木の感触はしなくて、どちらかといえばプラスチックな感触だった。

 ギターのサイズもどことなく小さいような気がした。


 それでも僕は嬉しくて、音が合ってるかも分からないギターの弦を力強く弾いた。その音色は自分が思ってたよりはるかに大きく、家族三人で驚いて、しばらく笑いあった。

 自分が思っていることなんて本当に想像でしかないこと知った誕生日だった。


 それから僕は毎日ギターに触れた。自分の好きな曲。母の好きな曲。兄が好きな曲。どれも最後まで完奏は出来なかったけど、ある程度はメジャー、マイナーコードは覚えた。

 けして上手いとはいえない僕の演奏だが、その音色を聴くたびに少し前までの自分が恥ずかしくなった。



 



 高校に入る頃にはいろいろな事が変わった。それは僕の人生観であったり、家族の収入面であったりだ。

 兄は地元の会社で働きだした。初任給からボーナスまでやたら大きな会社だった。家計が安定したのはいつぶりだろうか。僕の家族にこんな安定が訪れたのは僕の記憶の中では皆無だった。

 母はそれから仕事を辞めた。もともと足があまり良くないと話していた母はようやく体の重しを外したように笑顔になった。

 

 僕はそんな二人の姿をみて、自分は今まで、いや今でもずっと支えられて守られてるだけだったと知った。

 そんな自分を変えたくて、僕は一生懸命勉強に励んだ。入学した学校は進学校ではないし、けして学力の高い学校ではなかった。気付くのが遅かったのかもしれない。でも、ここで諦めていては今までと何も変わらない。自分で志した道はまだ先が見えずとも、暗念のなかにその輝きを忘れてはいけないのだ。


 「――中学から来ました『四十万(しじま)魁斗』です。趣味はギター。よろしくです」


 初めてのホームルームの時に自己紹介をした。ここから自分の新たな一歩が始まると信じて。


 今まで勉強をしてこなかったツケが回ったのか、あまり授業にはついていけなかった。それでも、家に帰れば復習をし、明日の授業の予習をした。次のテストまで時間がない時は寝ずに勉強もした。効率のいい勉強方法なんて知らないし、効率がいいからと誰もが出来るわけではないからだ。とにかく体にペンを染み込ませる程勉強をした。

 テストで学年上位に名前が載ったのは高二の最初の中間テストだった。

 自分でも納得のいく解答を見ていたが、実際に名前が載ったのを見てみるとやはり感動するものだった。努力は報われると、この頃になるとそう疑いはしなかった。


 学力も落ち着き、家も落ち着いた僕は、何か大切なことを忘れた気がした。


 『自分の好きな事ってなんだろう』


 目の前の事に集中することは大切なことだが、いささか僕はドが過ぎるようだ。別に悪いことじゃないが嫌な言い方をすると『執着心』が強いわけだ。だから僕は、今まで大切だと思っていたギターにも最近はまったく触れていなかった。


 バンドに誘ってくれた友人にも気を止めず、何かあるたびに誘ってくれる女の子の事にも無神経に断りばかりしていた。


 その日は家に着くと、急いで自室に入り置物のように埃がかぶった僕のギターを久々に手に取った。弦に触ると鉄くさい香りと皮膚に絡みつくような感覚がした。弦の交換なんてこの一年しなかったものだから完全に錆びていた。

 

 急いで換えの弦を引き出しから出してすぐに張り替えた。久々に握るギターの重さに少しの感動をおぼえた。

 コードを鳴らすと家いっぱいに音色が広がった。しかし、今までサボっていたせいか上手く指がフレットに収まらなかった。なんとなく弾けてはいるものの、けして気持ちの良い音色ではなかった。

 もう弾けないのではないか。こんな気持ちよくないものか。そう思いギターを元の場所に置こうとした時だった。


 「あら、アンタがギター弾くなんて久々ね」

 

 ノックもせずに部屋の扉を開けて母が顔を出した。


 「うーん、たまにはね」


 「そそ。息抜きも大切よ? 最近根を詰めすぎじゃない? 気楽にいかなきゃ大事なときに力を発揮できないわよ」


 それだけ言うと母は扉を閉めて晩飯の仕度に戻った。

 根を詰めすぎなのかはよく分からないけど、僕は携帯をとりだし連絡先を開いた。


 「ああ、もしもし。いきなりごめん。あのさ、バンドのことなんだけど――」


 コールが三回も鳴らないうちに電話はつながり、僕をバンドに誘ってくれていた『柏木 直人』に繋がった。

 直人は僕の話を聞き終わると嬉しそうに「バンドやろーぜ!」と僕を受け入れてくれた。


 それからの日々は楽しかった。ベースの直人。ドラムの松永。ボーカルの富岡。そしてギターの僕。みんなで毎日楽曲をコピーしてスタジオにもほぼ毎日顔を出した。

 僕はアコギしか持ってなかったから、直人にエレキギターをいつも貸してもらっていた。だから自分のエレキが欲しくてバイトを増やすことにした。

 練習の時間以外はほとんどバイトにあてて、バイトが終わるとすぐにギターに触れた。母に言われたように僕は不器用にしか生きられないみたいだ。今度はバンドばかりに気がいって、学力はまた落ちていった。積み上げたものはいとも簡単に崩れることを僕は改めて知った。


 念願のエレキギターを買えたのは夏休みのバイト代が入ったあとだった。バンドメンバーを引き連れて、小田原の楽器店に入った。どんなギターを買うか決めてはいなかったから直人に相談しながら僕達は店内をまわった。

 その店内の端の一角に気になるギターを見つけた。『フェンダーJ ストラトキャスター』真っ黒な輝きを放つそのギターに僕は心を奪われた。

 

 「直人。これがいい」


 「どれどれ。……うーん。こんなんでいいのか? もっと良さそうなのあんじゃないの?」


 「だめかな?」


 「いや、だめじゃないけど、予算はけっこう使えるんだろ?」


 直人はなにやらもっと考えろと言いたげだが、僕は心奪われたのだからしかたない。それに、アンプやらシールド、エフェクターも揃えるつもりだったから値段もギリギリだった。


 「やっぱりこれに決めたよ」


 直人は「そっか」と一回だけ微笑み、じゃあ次はアンプだなと別の場所に向かった。



 全ての買い物を終えた頃には僕の財布はほとんど空財布になっていた。さすがに使いすぎたと思ったが、いい買い物ができたと思えた。

 荷物は全て宅配にしたので手元には何もないが、念願のエレキを買えたことに僕はとても興奮していた。


 家につくと母が台所に立っていた。兄も仕事が終わったようでリビングでテレビを見ていた。


 「ただいま」


 「あらおかえり。どうだった?」


 「いい買い物でした」


 「いくら遣ったの?」


 母のその言葉に少しだけ重みを感じたが、何も引き目を感じることはない。なぜなら、このお金は僕が自分で稼いだお金だからだ。僕の自由に使って悪い事はないだろう。


 「うーん。けっこうつかった。うん。ほぼ全部」


 「……そっか」


 母は僕に聞こえないように小さな溜息をつくと、また台所にもどった。兄もなにやら怪訝な顔をしていたが一言も発さなかった。


 「バンドもいいけど、勉強もしなさいよ?」


 母は一言呟いた。



 楽器が届いたのはそれから二日後だった。ダンボールに包まれたそれらはあの日の誕生日を想像させた。僕は一人でダンボールから取り出した自分のエレキギターに抱きついた。自分で稼いだ金で、自分の欲しいものを買う。なんて素晴らしいことなんだとその時は思った。


 それから毎日バンド練習を行った。僕達バンドはいつしか『プロ』のステージに夢見るようになった。みんなと演奏してる時は無敵になれた気がした。僕達ならやれると、メンバー一同疑いもしなかった。

 小さいライブハウス。学際。知り合いの大学生に誘われて演奏した大学の学際。いろいろな場所で演奏する機会が増えた。いい演奏も最低な演奏もした。僕達はそれでも前に進めてると確信していた。


 高校最後の年。僕らは選択肢を選ばねばならない。僕らは音楽の専門学校に行くことを決めた。

 このとき、初めて家族に打ち明けた。僕は東京に行くと。

 母は寂しそうに笑っていたが、承諾してくれた。兄はなにやら不満そうだったが、何とか承諾した。

 何日かしてバンドメンバーで集まったときには全員が親の承認を得ていて、未来は決まったと思った。僕と松永は奨学金制度。詳しくは新聞奨学生として入学するつもりだった。仕事をしながら学校に通う大変な道だけど、僕にはそれしか出来なかった。


 体験入学や学校案内を終えて家に帰る頃、あたりは薄暗く冬の香りを漂わせる空だった。

 家に入り、いつものように飯を食べる。そしていつものように部屋でギターを弾いていた時だった。


 「あんたさぁ!」


 いきなり部屋の扉が開いて、母が酒を片手に怒鳴り声と共に入ってきた。僕は何がなんだか分からず、目を丸くするしかできなかった。


 「あんたいいかげんにしなさいよ! 音楽音楽って好きな事ばかりやって!!」


 「ちょっと……。 呑み過ぎなんじゃないの?」


 「バカにしないでよ! アンタはいつも好き放題でだいたいね――」


 僕は少しイラっとした。自分の金で自分の好きな事をやって何が悪い。


 「オレの勝手だろ! 自分の金でやってんだ! 迷惑かけてないだろ!」


 大声をあげて僕は叫んだ。


 「ほんと自分勝手ね!」


 母としばらく言い争いをしてると、母はいきなり泣き出してこう言った……


 「借金があるのよ! ウチには! みんなお兄ちゃんが一人で背負い込んでるの! あんたにそれが分かる!? あんたばかり気楽にのうのうに生きてお兄ちゃんに申し訳ないって思わないの!? ねえ!?」


 僕は頭が真っ白になった。喉から出かかった言葉は行くあてを知らず、目の前に突き出された現実をどう受け止めればいいかも分からない。だいたい、借金があることなんて知らなかったのだから。


 「いくらぐらい……?」


 やっと声にでたその言葉は答えを求めたくないように宙をまう。


 「三百万……」


 かすれた母の声を僕は体が震えるのも抑えず、胸に突き刺さった。



 


            ・・・・・・・・・・・・・・


 次の日の朝。僕はいつも通りに目が覚めた。前日の話は全部ウソだったらいいと願いを込めて僕は「おはよう」と言う。


 「あっ……おはよう。 ごめんね昨日は! ちょっと飲みすぎたみたい!」


 「ウソじゃないんだよね?」


 「……」


 それが答えだった。


 僕は朝食もとらずカバンとギターを背負うとすぐに学校へむかった。頭の中は真っ白だった。気がつくと僕は教室にいた。

 バンドメンバーがいつものように話しかける。僕もきっといつもと変わらず話せている。

 放課後に近づくにつれて、僕の『現実』は目の前に現れた。

 ギターに触れた。なにも楽しくなかった。黒色のギターに写る自分の顔がとても憎らしく感じた。僕は今まで何も見てこないで音楽なんてものにしがみついていたんだと知った。


 いつか仲間達と誓った『人の支えになれる音楽』なんて僕につくる資格も素質もなかったんだと知った。


 


     ・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 高校卒業間近になって初めてメンバーに『音楽』を辞めることを伝えた。直人はもの凄く怒っていたが、他の二人はなんとなく分かっていたようだ。

 あの一件以降僕はライブをしていなかった。スタジオにも行かなかった。ただひたすらにバイトに明け暮れ、バイト先のマスターにしばらくお世話になることを伝えただけだった。


 「このチキンやろう!」


 これが直人から僕に送る最後の言葉だった。きっと直人も理由を話せば分かってくれるだろうが、僕は言いたくはなかった。


 

   ・・・・・・・・・・・・・・



 

 それから二年が経った。

 僕は元気にやっている。

 母と相変わらず酒を飲み、あの日の出来事を今では笑いあえるなかになった。時には喧嘩もするけど平常運行だ。

 

 イタリアンレストランで僕はいまだに『バイト』の毎日だ。就職という手も考えたのだが、短期間で考えればバイトの掛け持ちの方が稼ぎがいいこともある。それに、たまに情緒不安定な母の面倒も気兼ねなくバイトなら見れるというのもあった。

 僕の生活はレストランと居酒屋のバイトで埋め尽くされている。もう音楽なんて入り込める隙間なんてない。


 僕は元気だ。なにも変わらない。


 一人の夜に眠れないときは酒を飲む。決まってグレープフルーツのその缶は白銀と淡い青色。部屋の一面が銀世界だ。


     ・・・・・・・・・・・・・・・


 眠れない夜はとりあえず酒を飲んだ。早く『夢』に逃げてしまいたいから。


 「ねえ、あんたさ。やりたい事ないの? 音楽はちょっとあれだったけど、仕事ばかりで楽しくないでしょ?」


 「うーん。まぁ特にないかなぁ」


 いつもの会話だ。


 「僕はこのまま働くよ」


 なにもかわらない。



 僕はベッドに顔をうめる。もうその部屋に音楽は流れない。

 


 


 


 

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