RBN
世間では学生が夏休みを終え、新学期に入る頃。
残暑という名だけが残ったかのような、猛暑日。
残暑なんて、10月からだろ。と思う。
そんな日曜日
いつも通り、俺とナチは錦糸町のフリーマーケットにネットオークションでも売るのが困難なようなガラクタを並べていた。
ガラクタといっても、俺たちが綺麗にリペアしてあるから、物自体はいい物ばかりだし、なかには、古物商のおっさんにしか理解できないような逸品もある。はず。。
ネットオークションは、それなりに価値が世間一般的に認められた品物しか出品しないことにしてる。
理由は、売れないっていうのもあるが、落札者が厳しかったりすると厄介な物もあるからだ。
リペアした家具とか、洋服なんかはオークションには向かない
逆に、それなりに価値があるのも。
新品未使用の品物とか、ビンテージ、デッドストックなんかは、ちゃんと評価してくれるから、オークション向きだと思う。
フリーマーケットは、基本的に、家庭とか、引越しなどでそういったオークションなどで売るのが面倒な人が出品してる場合があるので、価値とか関係なく、叩き売りしてる場合がある。探せばお宝も沢山出てくる
だから、俺らはフリーマーケットにも積極的に参加している。
ガラクタを売るのも目的だが、お宝探しも同じくらい目的なのだ。
あと、もう1つ目的なことが、あって、それは
コミュ二ケーションだ。
実はフリーマーケットの出店者は半分以上は、俺たちのような古物商が占めてる。
なので、毎回出店していれば、嫌でもその辺のオッサンとは仲良くなる。
よって、無駄話のなかに色々な情報が詰まってる。
どこそこのフリーマーケットでこういうお宝が出ていた。など
あとはお客さんとのコミュ二ケーション
特に女子と何気ない会話が出来る。たまに、仲良くなって呑みに行く事もある。。と信じたい(まだこんなことは無いから)
俺もナチも未婚だ。それどころか、ここ数年彼女も居ない。
理由は色々あるが、ホモとかそういう類のものではないことは言っておく。強く言っておく。
もう一回言っておく。ゲイでもない。
もういいか。
うだるような暑さのなか、終了の時刻までまもなくとなった時、ナチの携帯が鳴った。
ナチはディスプレイで相手を確認するやいなや、すぐさま通話ボタンを押した。
俺は、ナチの電話は気になったが、時間がないので、急いであと片付けをしていた。
すると、電話が終わったナチがやってきて
「今、桜井・・・いや、イチから電話があったよ!」
ビックリした。
前に錦糸町で呑んでから、約1月ばかり経っていたし、その間なんの連絡もなかったからだ。
「マジで!? で、なんだって?」
と聞くと
「今からこっちに来るってさ。いーよね。」
珍しく、ナチが人と会いたがってる。そのことに感動して、俺もテンションが上がって
「モチロン!」
と答えた。
にしても、一ヶ月も音沙汰なく、彼はどーしたんだろ?などと考えたが、そんなことをナチと話している間もなく、イチは姿を現した。
前回見たときと同じく、髪の毛は長くボサボサ。タンクトップから見える筋肉が眩しい。
とりあえず、イチには時間があることを確認し、あいさつは抜きにして、片付けを手伝ってもらい、ナチの車に荷物を積むと、三人で車に乗り込んだ。
車内は誰も口をきかなかった。なんかきまずい空気が一気に充満した。
その空気に耐えかねた俺がとりあえず。
「あっついな。取り合えず、荷物降ろしてから、ゆっくりいつもの居酒屋で話しない?」
と2人に言った。
すると2人は同意したようだった。
俺たちは、倉庫を借りている。
店舗を持たない趣味の店なので、仕入れた服、道具、ガラクタなんかを収納できる倉庫だ。
月額5000円くらいの安い貸し倉庫だ。
そこに、荷物を降ろすと、ナチは車をガレージに置き
3人でタクシーで再び錦糸町に向かった。
タクシーを降りると、いつもの居酒屋に着いた。
ここは、錦糸町の丸井側の一角にある汚い感じに居酒屋だが、妙に落ち着くから、ナチと2人の時は良く来ている。
店内の照明は明るくなく、暗すぎない。マスターが昔、錦糸町の伝説のクラブ「NUDE」のDJだっただけに、選曲も居酒屋らしくなく、誰かのMIX CDだったりする。
そのくせ、レモンサワーが旨い。350円だし、安い。
「NUDE」
錦糸町に、90年代にあった唯一のクラブ。
他にディスコっぽい店は何件かあったけど、ココはクラブらしいクラブだった。
花壇街のピンサロ店が乱立する地域にある。
有名人も沢山来ていた。
駅でDJバリけ~ん(GASBOYS)をみた時は感動した。
このクラブのおかげで、錦糸町には、一時 B-BOY,B-GIRL(当時はFlygirlなんて呼ばれてたっけ) が急速に増え、地元の俺らはあたふたと、
「今日NUDE行くの?」なんてソレらしき女子に声をかけていたもんだ。
話はそれたが、居酒屋に入ってそれぞれの前にお通しのおひたしと、レモンサワーが並ぶと、「久々の再会にかんぱーい!」
と元気に言ってみた。
すると、イチが一気にレモンサワーをのみほし、ゲップでみんなにSay,hello
なんて言うのかと思いきや、辛気臭い顔で話だした。
「2人とも、まず、これを受け取ってくれ」
と、テーブルに1万円を置いた。
意味が解らなかった。
「この金は、前回居酒屋で借りた金だ。遅れて本当にごめん」
ようやく理解した。
前回、イチはお金を持っておらず、俺が出したのだ。
にしても、律儀すぎる。。なんか変だ。
それに、全部でも1万もしてない。出しておいたといっても、せいぜい3千円だ。
その旨をイチに言うと。
「これは利子だ。俺は初対面のシンゴに金を出させといて、一ヶ月もなんの連絡もしなかった。」
何かある。だまって、聞くことにした。
「実は、金を返す為にバイトを探したが、この耳だし、どこも雇ってくれない。だから、日雇いで現場とか引越しをしてやっと金を作った。二人には、あの日からすぐ会いたかったけど、とりあえず、自分呑み代くらい稼げてから、再会したかった。」
そして続けた
「あと、イチなんて言われて最初は変に思ったけど、嬉しかった。仲間を失って、仕事を失って、一人で腐ってた自分に仲間が出来たきがした」
ナチは、この時点で3杯のレモンサワーを呑んでおり、泣いていた。
俺は言った
「でも、一万は多いぜ。利子にしてもさ」
すると、イチは言いにくそうに
「うん・・・ケジメっていうか・・その。仲間に入れて欲しくてさ。そのリサイクルショップの」
「俺まだ、日雇いだからいつでも働けるし」
俺も妙に納得した。
その一万円を貰って、
「じゃあ今日はイチの入社祝いだな。この一万円でさ」
と言ってみんなで再び乾杯した。
「でも、イチには別の仕事をやってもらうよ。このリサイクルショップはあくまで、遊びにすぎないし、収入と呼べるほど金も入ってこない。」
「俺の本職は求人誌の広告代理店の営業だよ。しってた?」
2人は、俺が何を言おうとしてるかまだ解らなかったようだが、続けた。
「求人誌に掲載する情報を掲載前に、イチに教えるよ。そうすれば、一石二鳥なんだ。クライアントは掲載料を払う前だし、イチは、競争相手が居ないからね。会社にはなんの得もないけどね。」
イチは理解したようだ。
俺は、イチにまともな働き先を紹介することを約束し、3度目の乾杯をした。
調子に乗った俺は、イチに話した。
「あと、リサイクルショップは俺たちの給料は無しでやってるの。全部貯めて、将来店舗を持つ予定でさ」
この話にイチも同意してくれた。
「じゃあ、店の名前ってあるの?」
そうだった。店の名前なんてなかった。
そこから、レモンサワーで酔っ払った頭をフル回転させ、「RBN」という名前に決まったのは、午後11時過ぎだった。
「RBN」
リボーンの意味
生まれ変わる
商品も人も生まれ変われば、また使える。