表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/23

耳無しほういち

ボロロン♪ポロロン♪


俺たちが窓際のボックス席で壊れたラジカセを修理していると、どこからともなくギターのソレらしき音が聞こえて来た。


思わず俺とナチは視線をラジカセから離し、見つめ合ってしまった。


ナチが言った

「今の音、有線じゃないよね」


「でしょ。」


二人して目線でその音の鳴るほうを探した。

すると、3席くらい離れた窓際のボックス席に、真夏だというのにニットキャップを被って、髭伸ばし放題の浮浪者?風のその人はミッキーマウスのTシャツに迷彩のハーフパンツといった

なんともいえない服装だった。

しかし、その人から出てるオーラは人を寄せ付けぬ、鋭い「何か」があった。

警察とかヤクザが身に纏っているソレと同じような。しかし、また違ったオーラだ。



その人はこともあろうに、ファミレスでアコースチックギターをポロポロと鳴らしていた。

曲を弾いているわけでなく、ただポロポロとチューニングでもしているかのようだった。


するとおもむろに、被っていたニット帽を取り、頭を掻き毟りながら


「あーーーちがうっ」


「んーーちがうっっ」


などと、1人芝居をはじめた。

いや、作曲でもしてるのか?


どのみち、こういう人はこの辺では珍しくないので、関わらないことにして、壊れたラジカセをそのままにして、ピザを注文する事にした。


「すみませーーん♪」


ナチが、店員さんを呼ぼうと手を挙げると

店員さんと、そのボサボサ男が一斉にナチを見た。


店員さんが来ると、俺はピザを注文し、ナチに「あのボサボサ男知り合い?」

と尋ねると。


「んーー。。。なんか知ってるきがする」


とのこと。


すると、そのボサボサ男が、急に席を立ち

俺たちのほうに歩いてきた。


俺は、「あーー絡まれる」と咄嗟に思ったが。

そのボサボサ男は、ナチに


「あのーー柔道部の皆川君?」


と聞いてきた。


するとナチも「は!」と目を輝かせ


「皆川じゃないけど、わかったぞ♪ 桜井君だ!」


「おーー!そおうだよ。桜井だよ!皆川じゃなくて・・えーと、ま、いーや!ひさしぶりーー!」


と二人は俺をさておき、昔話をはじめた。

どうやら、二人は昔柔道部だったらしく、大会などでよく会う仲間だったらしい。

ちなみに、ナチは中学、高校と柔道部で主将。全国大会にも行ってる猛者だ。

引きこもっていても、しっかりTVでは柔道の試合は観ていたらしい。


この桜井君も、かなりのやり手だと聞いた。


この再開を祝して、珍しくナチが居酒屋に行きたいと言い出したので、近くの居酒屋に行く事にした。


時刻は午後4時


この時間でも、競馬の客目当ての居酒屋は何件もやってるので、困る事はないのだ


三人はとりあえず

レモンサワーで乾杯した。


他愛もない話でも、結構盛り上がった。

レモンサワーが好きな人に悪い奴はいない。

ひとしきり、地元話で盛り上がると


桜井君はレモンサワーを5杯目飲み干し

自分の今までを語ってくれた。

酔って自分の過去を話したがる奴はあんまし好きじゃないけど、なんか彼は許せた。

また、その話の内容が内容だけに。



桜井君は、高校でも柔道をやっていて、卒業後も柔道をずっと続けながら、地元の先輩に誘われ

クラブで働きながら、普段はお酒などを運び、時には「セキュリティーチーム」の仕事をしていたという。

セキュリティーチームというのは、簡単な話、クラブ等で開催されるイベントなどの治安を守る為に、結成されたチームで、「喧嘩」が強くないと勤まらない大変体を張った仕事だ。


ある日、某有名大学のパーティーが開かれる事になり

その、仕事のの「セキュリティー」を桜井君のチームが任されることになったのだ。

当然引き受けたのだが、その日に限って主力の2人(先輩)が不在で一旦は断る話であったのだが、後輩や仲間の後押しもあって、桜井君がリーダーとして、引き受けた。

「学生のイベントなら大丈夫。」と甘く見ていた


イベントが始ったと同時に事件は起きた。


突然正面入り口から、10数人の黒ずくめの男たちが、異国語をわめきながら、乱入してきたのである。

勿論、これを止めるのが「セキュリティー」の仕事なのだが、想定外。

エントランス(入り口)には3人体制で任務に付いていたのだが、あっさり突破された。

通常、ボディーチェック2名 控え2名で配置につくのだが、今回は人数不足ということで、3人体制になっていた。

直ちに、20人総出で、その外国人を取り囲むと

一斉に刃物(包丁)を取り出し、切りかかってきた。


仲間のうち5人が切りつけられ、負傷したので、

桜井君は、一旦仲間に「待て」をかけ、降参する形になった。


すると、一組のカップルを探し出し、この外国人集団はなにやら中国語で話はじめ

その二人を連れて行ってしまった。


セキュリティーのチームはというと

負傷した5人を含む20人全員呼ばれ、一列に並ばされた。

するとおもむろに、1人の片手の指を4本切り落とした。

仲間の悲鳴と、全員の悲鳴がクラブ中に響き渡った。桜井君は

「俺がリーダーだ。やるなら俺だけにしてくれ!」

と頼んだが、奴らには言葉も通じない。


結局、メンバー全員、体の一部を失い

桜井君は両耳を削がれることとなった。


後から、同じパーティーにいた大学生に聞くと

連れ去られたカップルのうちの、男子大学生が、新宿でデートしていた女(連れ去られたカップルのうちの女子大生)が

不良中国人グループのリーダー(15歳)のバイト先の知り合いで、憧れる女子大生だった。

これに告白した15歳のリーダーは、この女子大生にこっぴどく振られ、ガキ扱いされたらしい。


新宿でこの2人を目撃したリーダーは大いに嫉妬し


この報復だと推測された。


このカップルは連れ去られてしまったので、事実は闇の中だ。


この事件がきっかけで、桜井君のチームは解散。

先輩からは逃げるように、地元に戻ったのだという。


長いボサボサの髪の毛は、耳が無い事を隠す為だという。

その後も、バイト先では、耳が無いことがばれると「耳無しほういち」とバカにされることが

あり、そのたびにそいつを殴っては、職を転々としていたらしい。


この話を聞いて

俺は酔っていたせもあり、大胆なことを言ってしまった。


「じゃーさー。これからも、遊ぼうよ。俺たちリサイクルショップの真似事やってるから、暇なとき遊びにきてよ」


すると、桜井君は、あっさり、イクイクと言った


別れ際に、俺はさらに大胆なことを口走った。

この口のせいで何度も痛い目みたのに。。酒が入ると。。。


「耳無しほういちっていうか、イチって呼んでいい?殺し屋みたいでカッコイイじゃん」


桜井君は笑顔で

「イーよー」

と言ってくれた。


これで、シンゴ、ナチ、イチの「RBN」のメンバーが揃ったのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ