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B‐BOY秘密結社  作者: 東雲 ヘルス
夢みる熱帯魚
20/23

コレクト~045~

老板ラオバンお連れしました。」


シンゴ達は中華レストランの奥の個室に通された。

老板とは、中国語で、「社長」という意味。

個室の入り口では、スーツを着た色黒のアスリート体型の、ヤクザというよりどちらかと言うとスポーツマン風の男2人がシンゴ達を迎えた。

部屋に入って驚愕した。

円卓を挟んで、真ん中の椅子にどっしりと座っている男、いや、老人。

「ラオバン」と呼ばれていた老人。



「オーナー・・・・?」

イチが言葉を漏らした。

黒いスーツを着た、先ほどのボディーガード2人は直立不動で入り口を固めている。

トレーナーにジーパンのラフな格好の色黒の30~40歳くらいの男が2人、老人を挟んで目の前にいる。

タバコをひっきりなしに吸ってはなにやら中国語で話している。


目の前の老人は確かに、あの時イチに紹介したコンビニとDVDショップのオーナーだ。

でも、今日は違う。全くの別人だ。

スーツをびしっと着こなし、髪はオールバック。髭は整えられ、何より肌つやが良い。

そして、一番驚いたのは、その眼光だ。

目が違う。

異様な空気を察知したのか、イチの言葉で全てを理解したのかナチは黙って固まったままだ。

すると、老人が口を開いた。


「キミ達、本当にありがとうね。いい働きしたよ」

爽やかな笑顔で言った。

いつもは、辛気臭く冗談を言って笑ってもどこか寂しげな笑顔しか作れないオーナー。今目の前に居るのも同一人物。

頭が追いついていかない。


「まぁそこに座って。おい、食事と温かいお茶を3人に出せ」

老人が先ず、シンゴ達に椅子に座るよう促し、次に入り口に立つ屈強そうな手下に言った。


3人は黙った座って、出されたお茶を啜った。

食事にはナチだけが手をのばした。


「ほら、キミ達もたべなさい」

またもや爽やかな笑顔でシンゴとイチにおかゆとスープを勧めた。


「なんで・・・」

イチが口を開いた。それを制するように老人が手を前に出し言った


「まぁ、食べてから。ゆっくり話すよ。人間腹が減るとろくな考えにならないからね。」


シンゴもイチもその言葉をきっかけに、食事にてをのばした。

そうしている間にも、ラフな格好の男たちは、別の高級そうな料理を食べ、ビールを飲んでいる。



あっという間に3人は食事を平らげた。

食事が終わると、目の前のグラスに温かいお茶が注がれた。

お茶を啜る3人。優しい笑顔で見守る老人。

これで、周りのイカツい男たちが居なければ、日曜の昼にオーナーに飯を奢ってもらってるアルバイト達のほのぼのとした絵だった。


「オーナー。そろそろ質問いいですか?」

イチが口を開く。


今度は老人もそれを制す事はしなかった。ただ、目つきが鋭くなった。

「先ず君たちには謝らなければならない。」

と、老人が言うと同時に、ボディーガードの1人が3人の前に分厚い封筒を差し出した。

「受け取ってくれ」

シンゴは中身を確認した。万札が沢山入っている。

数えることはしなかった。


「なんですか?これは」


「我々の謝罪と感謝、うーん。それと、とある代金だ」


「意味がわかりません・・・」


「そうです、オーナー。コレはどういうことなんですか?」

イチが言った。


すると、老人の隣りの中国人が

「イイカラウケトレヨ。ビジネス、ビジネス」

と言って、笑った。

もう1人の中国人も笑った。


「黙れ」

低い声で老人が言った。


「すみません老板」

大哥ダーゴー啤酒ピージャン呑みすぎよ」

ともう1人の中国人。


「ちょっと待っててくれ」

と老人が言った。


すると、ボディーガードを呼んで言った

「李さんと舎さんには別室で食事をして待っていてもらってくれ」


ボディーガードは何やら中国語で2人に話した。

すると、老人に一礼して席をはずして、部屋を出て行った。


「中国人は礼儀を知らなくていかんな」

と老人は微笑んだ。が、その目は笑っていなかった。

少しだけお茶を啜ると、今度は3人に向き直って、話し始めた。


「さっきも言ったが、先ずは謝罪せねばならない。今まで騙していた事、ここに連れてきたこと。

だが、キミ達も気づいている通り、私は極道だ。

聞いた事あるかな? 【菊川会】は。私はそこの総裁をしている。だから何があっても、私は人に頭を下げてはいけないのだよ。勝手な理屈だが、解って欲しい。」


菊川会の総裁とは、広域指定暴力団 菊川一家墨東組組長 墨東太平の事だ。

菊川会は、関東では最大勢力と言われている。最近中国マフフィアとも連携して仕事をしているという噂だ。まさか、あの冴えないコンビニとDVDショップのオーナーが・・・仮の姿だったとは。


「色々疑問はあると思うが、私も時間が無くてね。今後のことだけ話そう。」


「解りました。」

シンゴが言う。


「その前に一回3人だけで話をさせてください」

ナチが言う。


老人は頷いた。3人は別室に通され、10分だけ時間が与えられた。

相談する。


先ず解った事は、オーナーがヤクザの大物だと言う事だ。それも、とんでもない大物。

その親分が3人を捕まえて話があるという。

今回の事件に関わっていることは確かだ。

そこで、やはり質問することにした。だが、代表でシンゴしか喋らない。質問は3つ。

コレを許してくれる事を提案してみる事に決まった。あとは、従うまでだ。


「あ、さっきオーナーが言っていた【とある代金】ってのがきになるな」

イチが言った。


「細かい突っ込みは止めよう。あまり知ってはいけない世界だよ。」

ナチが冷静に言う。


こういう何時もの会話が、シンゴを少し落ち着かせた。

「そうだな。行こう。本当に時間が無いかもだ。」


3人は老人のテーブルに戻った

「オーナー、いや墨東さん。なんてお呼びすればいいですか?」


「オーナーでよいよ。君たちにとっては私はオーナーだからな」

微笑みながら言う。


「では、オーナー時間がないところスミマセン。代表で私が全て話します。他の2人は口を慎みます。

なので、3つだけ質問よろしいでしょうか?」

シンゴが言った。


「うん。いいだろう。その質問を元に話を進めよう」


オーナーはどういう質問がくるか、お見通しのようだ。

3人が別室へ行った時点で、こういう流れでくることを察知していたようだ。

どこまでも抜け目のないジジイだ。普段とはまるで違う。

ファミレスでカトウ達に叩かれた老人と同一人物とは思えない。


すると、4人分のお茶が運ばれてきた。入り口のボディーガードがお茶を運んできた女を入れる。

4人の席の前にお茶が並べられた。

運んできた女はとてつもなくいい女だった。

老人は女に言った

小姐シャオジエ後でな。」


すると女もニコリと笑顔で頷く。

小姐とは、おねえさんという意味。老人の余裕が伺える。かつ、3人の胸の中には、「住む世界が違う・・」という感情が実感として湧いた。

おそらく、このちょっとした仕草で老人はモノを言っているようだ。

何もかも、老人の思うとおり。

最低限の言葉で3人を見事に操っている。

手のひらで踊っている孫悟空だ。


「本題に入ろう。」

老人が言った。


シンゴが一つ目の質問を放った。

何故、ここに連れてこられたのか?


率直な疑問。

今の状況で最も主な疑問。

当たり前の質問だ。この質問無しでは話は進まない。

モチロン答えも用意されているであろう疑問だ。


ゆっくりとした動作でお茶を啜り、老人は口を開いた。

どこか、演技じみていたが、シンゴも腹が決まっていた。


どうせ手のひらの上だ。派手に踊ってやろう。











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