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B‐BOY秘密結社  作者: 東雲 ヘルス
夢みる熱帯魚
15/23

アタックⅡ

餓鬼どもの溜まり場の公園から、トモの家までは10分かからない距離だ。

シンゴは、イチの話を聞くために一旦遠回りをしてから、ナチが見張りをしてる公園に車を向けることにした。


ステアリングをにぎる手がかすかに震えているのが自分で解る。

少し広い小道に入って車を停車させて、シンゴが言った。


「さ、どういうことか説明してもらおうか」


「ゴメン。でも、俺なりの計算のうちなんだ。」

「予行演習ってかんじかな。いい意味で力が抜けて、良かったんじゃない?」


「まぁそうだけど、急に予定と違う行動は困る!」


「だから、ゴメン。」


「・・・・」


「・・・・」


「あと、あのままの緊張感でカトウたちを相手にしたら、必ず失敗しそうだったし、俺自身、動けるのかっていう心配もあったし、シンゴの動きも見たかった。」


「悪かったな、正直思うように動けなかったよ。。」


「でも、最後は良かった。安心したよ!」


「ありがとう・・・あ、なんとなく納得させられたけど、今後は突発な行動は止めてくれよ。」


「解った。」


「さ、あとは餓鬼どもが、どう動くかだな」


「あ、言い忘れたけどもう一つ、アソコで餓鬼どもを襲った理由があるんだ。」

「もしアソコの公園に幹部が1人でもいたら、やらなかった。下っ端だけだから、やったんだけど、あいつらは、絶対今日のことは、カトウ達には報告しない。何でかわかる?」


「解る。だから単車を壊しといた。」


「そう!さすがシンゴだな。あいつらは、鬼面組の名前でボコられてしかも単車も壊されたなんて言ったら、それこそカトウに殺されるからね。」

「訳の解らないうちに、素性の知れない、二人に狙われているっていう恐怖は伝染する。明日、あいつらの中学校では、この伝染が広がる。今日カトウ達を潰して、周りの子分どもが戦意喪失してれば、あいつらは自然と崩壊するよ。」


「なるほど。それで?・・・それだけじゃないだろ?理由は」


イチはややうつむき加減で、なんだかモジモジしているように見えた。

少しして、ややか細い声でしゃべりだした。


「実はさ、コレが終わった後に言おうと思ってたんだけど、俺には、娘がいるんだよね。丁度来年の春に中学にあがるんだ。」


「え!・・・マジで・・」


「だからさ、今の大人って勝手だよな。好きなことやってさ。」


「・・・・うん。」


「俺たちがやろうとしてることは間違ってるかもしんないけど、あまりに勝手な大人が増えたせいで、子供たちに無関心すぎるんだよ。だから、近所の子供なんかを見てみぬふりして、悪い事しても怒れない大人が多いんだよね。だから・・・なんていうか、上手く言えないけど、娘をあんなふうにされた親の立場としての怒りと、子供を叱ってやんなきゃ!っていう、大人としての責任感みたいな気持ちが入り乱れてるんだよ。なんかまとまんない話でゴメン。今話すべきじゃなかったな。」


「その気持ちはわかる。俺たちには子供はいないけど、大人としての責任感みたいなのもはよく解る。」


シンゴは言い終わると、イグニッションキーをまわし、エンジンをかけた。


「さ、コレからが本番だぞ!」

「ナチには公園での事は俺からサラッと言っとく、イチは何も言うなよ。」


「了解」



シンゴの運転するランサーは、葛西橋通りを通っていた。

土曜の夕方という事もあり道は混んでいた。

目的地である、トモの家の手前のパーキングに到着した。時刻は17時30分。あたりはすでに真っ暗

ある意味、予定通りだ。


車の中からナチに電話。

メールは今回は使わない。

イチと交代で、ナチを駐車場に呼び寄せた。

今まで公園で会った事を話た。するとナチは意外な反応

「いージャン。面白いねイチは。」


ナチは何の連絡も無しに、寒空の下公園で待たされたことに怒ってると思ったが、ニコニコしてこう言った。

こいつの陽気さが、場を和ませる。いい意味で力が抜けて行く。


「悪かったな。」

一応イチの分として謝罪しておいた。


「どうだった?奴らに動きあった?」


「まだ何も無い。けど、あそこの家の親らしき夫婦はなにやらデカイ鞄を持って、二人揃ってどっか行ったぞ。もしかして旅行かもな」


「って言う事は・・・あいつらが揃う可能性が高いな」


「うん。じきだね」


「で、その夫婦はど・・・・」

話を遮るバイブが振動した。シンゴの携帯が鳴った。

今日は3人でトバシの携帯を使っていて、3人の誰かからしか電話は掛かってこないから、すぐ相手は解った。

見張り役のイチからなので、緊急だ。すぐに通話ボタンを押した。少し指が震えた。


「来たぞ! 3人だ。やるか?」


「やるぞ」


通話ボタンを切るとすぐに車を離れ、シンゴとナチの二人はトモの家の前に向かった。足音を殺して。

2人は先ずトモの家の陰で身を潜め、イチの動きを見ることにした。これも打ち合わせ通り。


公園から素早く獣の動きで飛び出て、ターゲットに近づくイチ。

公園から見て、トモの家の手前の角の向こうにターゲットを捉えた。

角を曲がる前にターゲットに接触。

正面から、カトウ、マサル、トモだ。遠くからでも解る。道いっぱいに広がり、肩を怒らせて歩いてくる餓鬼。

イチは真ん中のカトウの正面に立ち、いきなりの左のショートフックをカトウの顔面に叩き込んだ。


「んな!」

脇の二人があっけに囚われたのもつかの間、続けざまに右のこぶしをカトウのボディーに叩き込んだ。

カトウはたまらず体をクの字に曲げたが、脇にいた2人の反応も早かった。

イチの首目がけてトモがからみついてくると、マサルがイチの足を目がけてタックルしてくる。

たちまちイチは寝かされる形となったが、そこは寝技が得意なイチ、あっという間に首に絡んだトモの腕を捉えて、腕十字で「ボキっ!!」そのままバックに回り込みチョークでトモを捉えていると、カトウが吠えた。


「んだ、コ・・・ムグぐ・・」

カトウの口を押さえた黒い影。シンゴ


マサルのマウントを取っている、黒い影

ナチ。


シンゴがカトウの口を抑え、耳元で言った。

「大人しくこっちに来い」

次の瞬間、カトウはシンゴを背負い投げを仕掛けてきた。

が、シンゴはこれに反応し、投げ終わりにクロスガードに持っていく。

しかし、ガードを解かれる。シンゴも素早く立つ。

カトウは一筋縄ではいかない。圧倒的に他の連中より強い。


「てめえらなんだ。何者だ、コラ」

カトウが言う。


「いいから来い。そこの公園で話そう。ここじゃあ警察が来てみんな捕まるぞ。」


その言葉にカトウもマサルも異常な反応を見せた。

「解った解った。」

と言って素直に着いてきた。



見張りをしていた小さな公園に行くと、またもやカトウが凄んできた

「お前ら、誰なんだって聞いてんだよ。」


「俺らはスハダクラブ。お前らの敵だよ。」


とシンゴは言うとイチ、ナチに目配せをして、「タイマンだ」

というとカトウにローキックをお見舞いした。

トモとマサルはイチとナチが抑えているので、心置きなくやれる。

しかし、警察が来ては厄介なので、最低でも3分以内で決着をつける必要がある。


「糞が!さっさと殺してやるよ。」

と、どこか落ち着きのない目で睨んできた。どこか喧嘩するのがめんどくさそうな。

さっきの警察への異常なビビり方といい、今の反応といい、嫌な予感は増す増す現実みを帯びてきた。

が、もうこうなったらヤルしかない。決着をつけてこいつらの口から懺悔させてやる。


カトウが先制パンチを出してきた、それをよけたと思ったら、組み付いてきた。

さすが柔道だ。しまったと思った瞬間に投げられたが、ここはしっかり受け身を取って、さっきと同じ展開に。しかし今度はクロスガードを解かれる前にカトウの頭を引き寄せ、三角締めの形に入った。

カトウは上から何とか殴ろうとするが、この手も摑まえ、横に流すと本格的に三角締めセット完了。

後は極めるだけだ。カトウは「ウゴッゴごごご」と苦しそうにしかし、獣のような呻きを発する。

このまま落とすことにした。

力を入れ続けること数秒、シンゴも必死で締め上げる。しぶといカトウ。がやっとカトウの体から力が抜け、痙攣を始める。

こうして、トモ、マサルの手を用意してあったロープで縛り、念を入れて後ろ手に縛った親指をコードを束ねるケーブルでロックした。

カトウも同じようにすると、車のトランクにカトウは入れた。

トモとマサルは後部座席でイチと一緒。

シンゴが運転して、ナチが助手席。車を発進させる前にシンゴがトモに言った。


「家の鍵を出せ」

少し渋った顔をしたトモにイチの容赦ないビンタがとんだ。

すると泣きながら、トモは鍵を出した。


「確認だが、誰もいねーな、家には」


「ハイ」


シンゴはこの車の中で少し待ってるように言い残すと、すぐさまトモの家に向かった。

シンゴはある程度、いや、相当の覚悟でトモの家に入っていった。
















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