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B‐BOY秘密結社  作者: 東雲 ヘルス
夢みる熱帯魚
10/23

セカンドプラン

「人間の欲望は果てしない」

って誰かが言ってたっけ。


つまり生きるってことは、探求し続けることなんだ。

「生きる=DIG」

食べることだって、常に旨いものを探してる。

寝るにしても、いかにいい眠りができるか、寝具の技術は進歩し続けてる。

セックスだってそう。色んな器具や変態。多種多様なプレイがあるのだって人間だけだ。

どんなに、グーたらな人間でも、「いかに楽して暮らせるか」って事を探求してるし。


掘って掘って掘って常に探してるんだ。

だから、行き着く先がいつも幸せとは限らない。

間違った掘り方、間違った場所を掘ってることだってある。


ただ、間違った場合は周りの人(友達や親、兄さん、姉さん)が「そっちじゃないよ!」って言ってくれることが重要。

だから、結局周りに居る人なんだよね。自分の人生を左右するのは。

つまり運ってこと。

運が悪ければ、掘って掘って掘って行き着く先は地獄なんて場合もある。



月曜日


イチはコンビニのバイトが15時まで、DVDショップのバイトが18時から

この3時間を利用して、学校帰りの真美と会う約束をしていた。

場所は、DVDショップのある葛西。真美の最寄り駅でもあるから都合がいいとのこと。

しかし、一緒に居るところは、「奴ら」見られたくなかった。

真美には会った時に話すつもりだけど、イチと真美と明の接点はあくまでバイトだけ。ということにしておきたかった。

「奴ら」にイチ達がやることを少しでも悟られたくなかったし、動きやすくする為も勿論あるが、何より真美たちの家族が安全に、元の平和な生活に戻れる為なのだからだ。

後々イチに依頼したことがばれて、復讐なんてされたら、元も子もないからだ。




会う場所は考えたが一番安全なのはラブホテル

しかし、今の真美の心情を考えると、まずいと思ったので聞いてみたところ

「大丈夫。イチさんを信用してるからね(笑)」

との返信が帰ってきたのでひと安心した。

ただ、オーナー夫婦に見られたら・・・クビだろうな。


色々な心配をよそに、待ち合わせ場所に現れた真美はニコニコしながら、ぴょンぴょンはねるようなステップで駆け寄ってきた。

イチは少し照れ「よ!久しぶり」と片手を上げるのが精一杯だった。


特に話すこともなく、2人は近くにラブホテルに向かった。

道中はどことなく張り詰めた空気が2人の間に流れ、一言も話さないまま、ホテルに歩みを進めた。

イチは、改めて緊張していた。

事情が事情とはいえ、制服姿の女子高生と30過ぎのオッサンが昼間から、ラブホテルを目指すのだ・・・

イチは童貞ではないが、このシチュエーションは妙に罪悪感を感じさせていた。

しかしそんなイチを気使ってか、真美はホテルが近づくと、腕を絡ませてきた。

それが、イチはなんとも嬉しかったし、この真美の行動にはある意味、脱帽だった。


ホテルの部屋に入ると、ダブルベットがあって、その脇には小さなテーブルと椅子があった。

イチは、椅子に腰掛け、真美はベットにちょこんと座った。

イチは冷蔵庫からペットボトルのお茶を取り出し、真美に渡すと、自分も同じお茶を取り出し、一息に煽った。

そして、「真美今日はありがとうな」


「辛かったな・・・でももう大丈夫だよ」


と言うと、真美はじっとイチを見つめ、近寄ってきた。

すると、イチは少したじろいだが、真美の目を見つめ返した。

真美は、さっきまでの笑顔を忘れたかのように、表情が硬くなり、大粒の涙が頬を伝った。

その一粒の涙を皮切りに、ワーっと泣き出した。

それはまるで、真夏の夕立のようであった。

その泣き顔に未だ残る幼さを感じ、イチは改めて「この娘を守りたい」と思ったのだ。


真美はイチの胸にぎゅっと顔を押し付け、ワーッと泣いた。

イチは自然に真美を抱きしめていた。そして頭を撫で

「真美・・・もう大丈夫だぞ。大丈夫」

と言った。


「私・・・汚れちゃった・・・イチさんには知られたくなかった・・・・」


「毎日死にたいと思った・・・・でも・・・でも・・・」


真美はここまで言うと顔を上げ、一通り涙を拭うと、まだ少ししゃくりあげながらも、もう泣かないとばかりに、目には何か決意したかのような光が戻った。


「でもね。私はもうどうでもいいと思ったの。みんなが心配」


「私がなんとかしようと思ったけど、結局ダメだった。手に負えない・・・それに今でも監禁されている娘がいるの。だから、私だけの問題じゃないと思ったの。だから、もうなりふりかまってる場合じゃない、イチさんに頼るしかないと思った。本当に迷惑かけてすみません・・・助けてください。お願いします。」


どうやら、昨日明と真美は2人で話し合った結果、イチに2人で包み隠さずすべてを打ち明け、助けを求めるしかない。という結論に達したのだった。

イチは勿論そのつもりだったし、仲間のバックアプもあるから、迷いなど一切なかった。

ただ、1つの心配事を真美にぶつけてみた。


「真美。俺は勿論この件は初めから、何とかするつもりだったから、全力で解決するよ。約束する」


「・・・ただ、1つ聞きたい」


「どんなことでも、レイプされたことでも、なんでも、事細かく思い出して、俺に話してくれる勇気はあるか?」


すると真美は、目に強い光を宿しながら頷き


「ハイ。大丈夫。現に今監禁されてる娘をなんとしてでも助けてあげたいの。自分にはもうおきてしまったことだし、時間は戻らない。くよくよしてる時間なんてないの。何でも話します。」


この強さはどこからくるのだろうか。いざとなった時は女性の方が強いとは良く言ったものだ。


「解った。俺は今週中に何とかその娘を助け出す。そして、奴らにはもう二度と真美たち兄弟、親には近づかせない。約束するよ」


「あと、奴らには何かしらの大きなペナルティーを与えるつもりだ。オトナとしてね」


真美は不安そうな表情で言った

「ペナルティーって?」


イチは、感情を無くした声で真美に言い聞かせるように言った

「いいか真美。俺に任せてくれ。詳しい内容は教えられないし、知らない方がいい。これが俺なりのルールだ。解ったか?」


真美は素直に頷いた。


「じゃあ、これから細かく聞くね。嫌なことも沢山聞くけど教えてくれ。」


真美はまた素直に頷いた。


ココからは、お互い感情なんてどこかに置き忘れたかのように、極めて事務的な言葉使いで、会話した。

そうでもしないと、真美もイチも事実を見逃してしまう気がしたからだ。

こうして、洗いざらい真美からイチへと「情報」が渡された。

時間はあと30分。

イチは腕組みして少し考えると、真美に


「ありがとう。ココからは俺に任せてくれ。約束は必ず守るよ」

イチは万が一でも、作戦を失敗させることが出来ないと改めて感じた。

そしてこう告いだ


「真美。あと一週間後には、元の生活に戻るんだ。いいね。心の傷は消えないけど、それでも強くいきるんだよ。真美なら出来るから。いいね」


真美は少し泣きながら頷いた。

もう、イチとも会えなくなるかもしれない。でも引き返すことは出来ない。そういう決意が篭った表情だった。

近づいてイチはそっと涙を拭ってあげた。

すると突然、真美の唇が近づいてきて、自分の唇と重なった・・・そっと。

突然の展開にイチは驚いたが、真美はそっと目を開けて

「好きです」

と、だけ言って、さっさと帰り支度を始めた。

2人は、同時にホテルを出たが、それぞれ逆方向に歩いていった。

この日は夕日が綺麗だった。いろんな意味でこの日の景色は忘れないだろう。



でも、感傷に浸ってる時間はない

イチは情報の詰まった頭をどこかで整理する必要があった。

情報を整理する為には、何が一番早いか。

人に話すことだ。

今は、共有出る仲間がいる。


DVDショップの仕事が22時まで、仕事終わりにすぐみんなと会えるように、召集のメールを一斉送信した。

今日話したこと、聞いたことを全部仲間に話すつもりだった。

キスのことは勿論内緒だけど。



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