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血染めの魔王は勇者を嗤う  作者: 結城紅
序章 領主 ランドルフ・ハイター
12/15

☆来客

「懺悔は終わったか?」


 開口一番に、悪魔が告げる。その口元には、こちらの不安を見透かしているような笑みが浮かんでいた。


「ああ、終わったよ。相手をしてやれなくて悪かったな。寂しかったんだろう?」


 ニヒルな笑みを浮かべて皮肉を返す。悪魔は俺の心情を理解したような笑みを零し、皮肉を返してくる。


挿絵(By みてみん)


「そうじゃ。暇じゃからの。故に、もっと余に構え、人間よ」


 艶がかった髪を揺らしながら蠱惑的な声色を響かせる。並みの人間が聞けば卒倒しそうなほど艶やかだ。かくいう俺も、状態異常に対する対策を施していなければどうなったかは分からない。

横目にパイモンを見遣る。今は協力してくれているものの、いつか裏切るという可能性は捨てきれない。 こいつが悪魔だという認識を忘れてはならないのだ。

 思考を余所に木棚からアンティークのカップとソーサラーを二組出す。ティーポットから紅茶を注いでいるところで、不意にパイモンが声を上げた。


「ああ、そうじゃ」


「どうした」


 パイモンが仰ぐように視線を上げ、思い出したように呟いた。


「来客が来ておるようじゃぞ」


 来客とは、言わずもがな額面通りの意味ではない。地上、つまり廃村跡に何者かが足を踏み入れたということだ。それらは大抵小物の泥棒か、盗賊の集団であり俺の敵ではない。今までも何人か駆除して悪魔の餌にしてきた。

 土足で俺の村を荒らそうとするやつは、全て排除する。


「パイモン、俺との魔力回路は繋いだままにしておけ。事が片付いたら念話で知らせる」


「さっさと帰ってくるのじゃぞ」


 背後で悪魔が退屈そうに欠伸するのを聞きながら、戦闘用の準備を終える。右手に、かつてエル婆が使用していた指輪が装着されているのを確認してから部屋を出る。

 戸口に手を掛けたとき、背後の悪魔が気だるげにこちらを向いてきた。


「ノーチェ、退屈はもう飽いた」


「分かってる。なに、不逞の輩如き直ぐに終わらせる」


 テーブルの上に置いた二組のカップを見遣り、告げる。


「その紅茶が冷めないうちには帰ってこよう」

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