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アカネ・パラドックス  作者: 雲黒斎草菜
《第四章》悲しみの旋律
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  オーキュレイ VS 特殊危険課  

  

  

「それで、みなさんっ!」

 優衣は大きく声を張った。でないとダイヤに興奮しちまったワニどもには聞こえない。


《何だ。ヴォルティ・ユイ?》


「皆さんの船は機能性が高いのは承知しています。ですが、相手はネブラのデバッガーです。ザリオン艦の装備では破壊まではいたりません」


《根性でやれば、何でもできる!》


 これだから体育会系はダメなんだ。

「な、何だよ?」

 玲子に睨まれた。


「根性でデバッガーは破壊できないだろ?」

「できるわよ!」


 玲子はビューワーに立ち向かい、

「あんたたちの根性ならできるわ! あたしが保証する」


《うおぉーーーっ!》


「血の雨ふらせぇぇ!」

 黄色い声も高らかに玲子が拳を突き出した。


《おぉーーーっ!》


「ちょ、ちょ。お前が扇動してどうするんだ。やめろって」

「だいじょうぶ。まかせて」

 心配だ。


『根性がどのようなものか理解不能ですが。現実として物理的に破壊までにはいたりません。そこで、サウスポールでデバッガーを破壊した時と同じように、粒子加速銃を持ったユイとアカネが、それぞれバジル艦とザグル艦に搭乗するのが理想的です』

「と、シロタマさんがおっしゃってますけど、許可いただけますか?」


 社長へ小首を傾ける優衣へ、

「許可も何も。ワシにはなんも分からんがな」


「でもさ。ユイがいなくなったら銀龍は誰が指揮するんだよ」


「どういう意味や裕輔。ワシやったら心細いとでも言うんか」

「あっ。そういう意味では……」

 まぢいぜ。地雷を踏んじまったかな。


「それなら、ワタシの異時間同一体でも呼びましょうか?」

 うわぁ。それだけは勘弁願いたい。あんなややこしいこと二度とごめんだ。

「あー。失言。言いソコ間違いっす。社長。我々もがんばりましょう……ダイヤのために」

「調子のエエ奴やな、おまはん。まぁええ。時間が無い。ほれ、アカネ。粒子加速銃持ってザグル艦へ行きなはれ」


 ふぅー。


 機嫌を損ねずに済んだぜ。




 にしたってさすがはザリオンだ。玲子が集まれ、と叫んでから小一時間で、デバッガーたちを大型戦艦5隻と50機の戦闘機で取り囲んでいた。その内の2隻には粒子加速銃を持った優衣と茜が配置済みだ。


 相対するデバッガーは残り15体。

 数千体で群がっていたのを核弾頭式プローブ12機で、ここまで追い詰めたのは、奇跡に近いと言ってもいいだろう。


 生き残ったデバッガーたちは、ザリオンたちに囲まれたことなど脅威にも思っていないのか、完全無視をかまして高温になったダイヤをゆっくりと冷ましていた。急激に冷やすとダイヤはともかく、肝心の女王蜂が砕け散ってしまうことを連中は知っている。賢しい連中だ。


「みんなぁ、準備はいい?」

 玲子がビューワーにそう言うと、


《準備はできてる。いいぞ!》

《いつでも来い!》

《聞こえてまーす》

 ドスの利いた猛獣声に混じって可愛らしい茜の声も軽やかだ。


「知ってるとおり、連中のスキャンビームには最大限の注意を払ってよ。補足されると構造を調べられて、あっという間にやられるからね」


《野郎ども! ダイヤぶんどるぞ。これでボーナス確定だ!》


《おおぉー!》


 聞いちゃいない。


 サラリーマン化したのは分かるが、やっぱそっちへ目が眩むのは俺たちと同じだ。

 しかしその動きは元ザリオン連邦軍の研ぎ澄まされたパイロットたちだ。驚くべき機動力を披露してくれた。


 それまでは散り散りに飛行していた戦闘機が、さっとV字編隊に並び、母船を後尾に援護位置についていく。


「何か美しいな」

 普段は乱暴で言葉遣いもガサツな奴らだが、目の前で繰り広げられた統制の取れた機敏な動きは圧巻だった。




 熱々のダイヤが浮かぶ宇宙空間のほうはというと。

 空間に現れた巨大戦艦をずっと無視して来た15体のデバッガーだが、異様なまでの厳戒態勢を取るザリオン軍にスキャンビームを放出するのは至極当たり前の行為で、一体のデバッガーが赤光のビームを放って来た。


 素早い動作でV字編隊の戦闘機が左右に分かれて避ける。ビームは後続の母艦上部すれすれを通過して消えた。

 間髪入れずにバジル艦から一閃が走り、優衣の発射したエネルギーシードがデバッガーを粉砕。

 それを合図に。

《全機、ぶちかませー!》

 5機ずつに分かれた10個小隊の半分が、綺麗な弧を描いて四方へ散った。


《母船の掩護チームは何があっても離れるな!》

 統制を乱す者は一機もいない。美しく整然と並んだ編隊へとデバッガーの攻撃が始まった。

 戦闘機からはミサイルの弾幕が広がり、激しい光球の嵐となるが、デバッガーの妨げにはならなかった。


 奴らは瞬間移動で戦闘機の後部に実体化すると、片手で尾翼を掴んでスキャンビームを機体に当てる。

 数秒で構造を読み取ったデバッガーは躊躇なくボディへ腕をめり込ませ、複雑そうな装置を引き千切り、その場を去った。


《アビオニクス機能不全! 飛行不可だ! いったいどうしたんだ!》

《アーザス! お前の尾翼にハエが止まってるぞ!》


《うぉっ! いつの間に! うぁぁ。何だこいつ!!》


 慌てふためく通信内容が胸に突き刺さる。

 直接転送して来るデバッガーの機敏性は戦闘機の比ではない。


 何しろそいつにたかられると、状況を把握する前にこっちの心臓部を見極められて破壊されるのだ。


《航行システムがダウンだっ!》


 超高速で飛行する戦闘機の尾翼に飛びつき、容赦なく機体に手を突っ込む黒光りのデバッガー。重要装置を引き抜き飛び去ると同時に、くしゃりと戦闘機のフレームが折れ曲がり炎上。


《ヤツら直接転送して来るぞ、気を付けるんだ!》


 ザグルの警戒を呼び掛ける通信が浸透する数秒間に、ザリオンは12機を失っていた。


《じょうだんじゃねえ。何だこいつら!! ただのカカシじゃねえぞ》

 息を飲むアジルマに、強張る玲子。

「デバッガーを舐めたらだめよ!」


《砲撃戦に入る。火器管制、手前のカカシ野郎に照準を合わせろ!》


 敵の動きを封じ込めようと、光子魚雷を連発して応戦するアジルマ艦だったが、そのすべてをディフェンスフィールドで弾かれ、デバッガーは無傷だ。


《オレっちの最終兵器が利かねえ》

《アジルマちゃん。敵は防御に入っていまぁーす。気が逸れてる今がチャンスれすよー》

 猛者たちに混じる可愛らしい声はアカネだ。


《ワタシにまかせて!》

 後方から回り込んで来たバジル艦から優衣が放った粒子加速銃のシードが、デバッガーの頭を直撃。光球に包まれ爆散した。


《全戦闘機はザグルとワシの艦の前に出て連中の気を引くんだ。寄って来たところで引け、粒子加速銃の高エネルギーシードをお見舞いしてやる!》


 バジル提督のひと声でたくさんの戦闘機が大型艦の前に集結。その気配に体を翻したのは一体のデバッガーのみ。バカにしてやがるぜ。


 だがデバッガーは思いもよらぬ軽々とした動作で戦闘機を踏み台にして移動してきた。それはまるで飛び石を蹴って先に進むように、易々とジェスダ艦の船首上部外壁に飛び移った。


 途端!

「うぉっ。ま、眩しい!」

 艦船全体に張り巡らされている外敵やデブリからボディを守る電磁フィールドに阻まれ、デバッガーが青白いスパークに包まれた。

 通常の物質なら瞬時に蒸発するのだが、激しい放電がほとばしるものの、奴は平然とした態度でスキャンビームを放射。瞬時に解析したのだろう。フィールドが機能停止。


《艦長! こいつフィールドエミッターを破壊しやがったぜ。くそっ! 待ってろ、オレがミサイルで撃ち落としてやる!》


 近くを舞っていた戦闘機からの通信だった。武器起動の合図が鳴り響く効果音に混ざって気張った声が飛び交うが、

《ば、バカ野郎。敵はちっこいダニ野郎だ。こっちはフィールドが消えて丸裸なんだ、撃ったミサイルが外れたらオレっちがダメージを喰らうだろ!》


 ジェスダからの悲鳴みたいな指示で、護衛機が放物線を描いて母船から離れた。


《野郎っ! 見てやがれ! 火祭りにしてやる》

 ジェスダ艦はその巨体にもかかわらず機敏な動きで急降下。燃え盛る惑星の中へと艦船をひねり込ませた。水素のプラズマにデバッガーを晒して、焼き落とそうという算段なのだろうが、フィールド無しでは船体もあまり長くは持たない。しばらくして真っ赤に燃えた大型戦艦が炎の中から飛び出してきた。


《何なんだ、このカカシ野郎っ! 灼熱地獄でも燃えねえぜ!》


 真っ赤になって歯を食い縛るジェスダがスクリーンの前に立った。茹だるような熱気なのだろう。衣服から立ち上る空気が陽炎みたいに揺れ動いていた。だが宇宙一、乱暴で頑強だと言われるザリオン人だ。それでも平気で指揮を取る。


《完全に頭にきたぞ。パイロット! 艦を旋回させてクソバエを振り落としてみろ!》


 螺旋形に飛行を始めたが、それでもデバッガーは平気な様子で、隔壁の中に手を突っ込み、何かを求めて引っ掻き回している。それはまるで砂の中に隠れる貝を探るようだった。


《うぉっ! 銀バエ野郎はパワーコンジットの主要部を探してるようだ。船のエンジンを止めるつもりだぜ!》


 周囲を飛ぶ戦闘機が緊迫した状況を報告。数機が銃弾による接近戦を繰り返すが、デバッガーには何の効果もない。


《うあがぁぁ!》


 また一機炎上した。

 うるさげに手を払ったデバッガーに叩き落とされたのだ。

 武器は利かないし、かと言って接近すると直接叩き落される。

 すぐに艦載機が飛び出してくるが、なす術もなく周囲を飛行するだけだ。


「裕輔。ジェスダ艦がヤバイで。フォトンビームであのデバッガーを撃ち落とされへんか?」

 なんちゅう難題を命じるんだ。撃つのはオレ様なんだぞ。


「無理だって。銀龍だってスキャンから逃げ惑ってんだ。照準すら合わないよ」


《くっそ! しつこいハエ野郎め! 船を自爆させるぞっ! 全員緊急退避だっ !!!》


《ジェスダ落ち着け! オレの艦で払いのけてやる。じっとしろ!》

《ばかやろーっ、アジルマ! 共倒れになるだろ。向こうへ行ってろっ!》


「あかんてっ! 二人とも無茶したらあかん!」


 その時だった。

《お前ら、そのままだ! 動くなっ!》


《なっ!》


 寄せつつあるジェスダとアジルマのあいだを、垂直になったザグル艦が吹き抜ける風のように気配を殺して通過。

 寸刻の静寂。まるで時が止まったようだった。


 刹那――。

 ザグル艦から放たれた一本の輝線がわずかな空間を貫き、デバッガーの脇腹に閃光が灯った。

 細かなパーツが空間に飛散し、一拍空けて、爆発、炎上した。


《ぐっどじょぶです、パイロットちゃん。今の慣性飛行は完璧れしたぁー 》

 ビューワーに広がるスクリーンのど真ん中で、握った拳から親指を立てて現れたのは茜の笑顔だった。


《一匹、仕留めましたぁよ~。ミカンちゃーん。見てますかぁ?》


「きゅらりららりりゅ」

 映像の茜に手を振って応えるミカン。こっちは拍子抜けだぜ。


「社長! アカネの奴、戦艦を傷付けずにデバッガーだけを撃ち落としたぜ」


「やっぱすごいなこの子ら。こんど縁日連れてって、射的ゲームでもやらせてみまひょか、裕輔?」

「やめたほうがいい。熱くなると神社ごとぶっ壊すかもよ」


《ひゅぅー。ヴォルティ・アカネ。助かったぜ。やっぱ管理者製のアンドロイドは精度がいい。たいしたもんだぜ》


《そんなことないですよぅ。それはザグルちゃんの運転手さんが凄腕だかられーす》


 戦艦のパイロットをタクシーの運ちゃんみたいに言ってのけるのは、こいつだけだろうな。ザグルの苦々しく歪めた顔を見てみたい。





《よーし。残りは10体そこそこだ。オレらが囮になるから、ハエが止まったら撃ち落とせ!》


 繰り広げられた茜の活躍で、追い詰められた狼の群れが息を吹き返した。


 不意を突けばデバッガーは粒子加速銃で撃ち落とせると分かると、優衣と茜が乗艦するザグルとバジルの艦船前に、恐れることなく競い合って身を呈する――なんと危険な戦法に出る奴らだ。やっぱザリオン人は勝つためには手段を選ばず、なんだ。


「ほれ。裕輔、ぼぉーッと見とる場合とちゃうやろ。こっちもダイヤの上におるプロトタイプを狙わなあかんデ」

「そ、そうだ。護衛が手薄になった今なら……」

 席に座り直し、平手で頬っぺたをパンっと打って気合い一発。

「よーし。照準セットしたぜ」

 緑色の十字、照準マーカーがプロトタイプの頭部に固定されようとしていた。そしてそれが赤色に変わる。


「今やっ!」

「よしっ!  ぁあ――っ!」

 ショットボタンを叩く直前にマーカーが大きく外れ、とんでもない方向にフォトンビームが放出された。


「なんだよー。あと少しだったのに……んげぇ!」

 視線を滑らせたスクリーンの光景を見て吃驚仰天。銀龍の鼻の先にオーキュレィ艦の巨体が姿を現して、瞬時に機長が回避行動を取ったのだ。

「うわぁぁぁーっ!」

 銀龍は衝突を避けるため機体を大きく捻った。オーキュレィの腹の下を猛烈なスピードで掻い潜って行く。視界を覆いつくす薄い緑の不気味な六角形の底には細々とした艦載設備が見えた。みるみるスクリーンに迫るが、挙動は反転、引き千切るような速度で後方へ流れて行った。


「で……でっけぇー」

 一辺1000メートルの六角形だ。まるで銀龍を飲み込んできそうな威容だった。遥か後方へ去る姿を見てまずは安堵する。


「もったいないけど、しゃーない。次や。もっぺん照準を……」


 銀龍は機体を横に数度回転させながら、さらに数本の赤光の輝線を避けつつプロトタイプの反対側に出る。そして急速旋回。いい具合に真正面にダルマ野郎を捉えた。


「おっし! いい位置だ」


 レーバーを操作して照準マーカーをゆるゆると移動させ、

「発射っ!」

「おわぁぁぁぁー」

 再びディスプレイの映像がぐるんとでんぐり返った。


 巨大な六角形の艦影が横倒しに銀龍を襲うのがちらりと見えたが、機長のほうが機体を逃がすのが早かった。元戦闘機乗りらしい神業的な機敏さだが、照準がまったく合わない。


「くっそぉーっ! また外れたぜ」

「くああ。パワーが無駄に消えていくがな。もったいない話やデ」

 もったいない、もったいないとうるさいよ。


 うるせえオッサンをあやして玲子が俺の横に付いた。

「裕輔! 安定したわ」

 チャンスはすぐにやって来た。


「よーく、狙らうのよ」

「そんなことは分かっている。お前まで興奮するな!」


 ダイヤの上にしがみ付くダルマ野郎がシルエットになってズームアップ。マーカーが赤に変わり。

「てぇ――っ!」

 熱い玲子の叫び。ショットボタンを押す力がより強くなった。


 誰もがこの長びいたミッションが終了したと確信した。

 プロトタイプに固定されたマーカーが赤く点滅して尾を引くビープ音。俺の指はショットボタンを強く押し込んでいた。すべてはこれで終わりなのだ。


「ゆ……裕輔? 何で発射しないのよ!」

 最初に気付いたのは玲子だ。

「え? 発射してっぞ」

「あー。パワー切れや!」

 画面下、右端の数値がゼロを指していた。


「どぁぁぁぁ。さっきの一発がラストだったんだ!」


 らしいと言えば、らしいオチだ。

「しゃ、しゃあない。銀龍のパワーを使いまっせ。シロタマ許可するからパワーの回線を繋いでくれまっか」

 再び銀龍は背面飛びで姿勢を整え、ターンをすることに。


「ドジ……」

 最も屈辱的な言葉を吐いて、赤丸落書き野郎は機関室へと消えた。


 何も言い返せずに、ただ睨みつつ、

「でも銀龍が動けなくなるぜ?」

「一発に掛けるんや裕輔。失敗したら終わりと思いなはれ」


「やだぜ、そんな重要な役割。誰か代わってくれよ」

「この臆病者! どきなさい、あたしがやるわ」


「わーたっよ、俺がやるって」


「ダメ。あたしよ!」

 玲子に首根っこを掴まれ、座席から引き摺り降ろされた。えらい力で、抗うことができなかった。

 まるで居酒屋帰りにゲーセンに寄ったサラリーマンみたいな座席の取り合いだった。

「合図が出たらボタンを押すだけじゃない。見てなさい」

「そりゃそうだが、銀河の運命が掛かっているんだからな。慎重にしろよ」

「まかせなさい」

 何にも考えていない玲子だからこそ、この丸いボタンを叩けるのだろう。


 みんなの視線がフォトンビーム照準ディスプレイの中に集中していた。

 何度か銀龍が揺れるが、誰の操作でもマーカーは標的に固着する。


「まだパワーが繋がってまへんデ。シロタマ、まだか? こんなチャンスはなかなか無いっちゅうのに……」


「きゅーりゅ、りゅらーりゅ」

 ミカンが何か言った。スクリーンを指差して。


「なんや?」

 社長が顔を上げ、唸った。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」


「………………」

 俺も固唾を飲む。


「何ダす? あれ……」

 田吾は強張り、玲子は朱唇をぱっかり開けた。

 フォトンビーム照準ディスプレイには目標物が目いっぱい見える位置まで拡大されており、周辺で何が起きているか、把握できていなかった。


 そう、大きな虹色の光の輪が広がり、中から眩しい輝きを放って出てきた六角形の物体。


「そんなアホな……」

「別のオーキュレイだ! ネブラの野郎、応援機を寄こしやがった」


 さらに最上部のデッキに黒い影が広がって一斉に宙へ飛び立つ。それば膨大な数のデバッガーだった。

 その数は俺たちを圧倒させた。


 フォトンビーム専用のパワーパックは空。銀龍のパワーを使うにしてもこれだけの数を相手にできる余裕は無い。

 意気消沈、気力喪失、茫然自失、失望落胆、残念無念、いくら並べても今の気持ちを表現できそうにない。

 ここに来てこの光景はあまりに残酷だ。惨憺たる状況とはこういうコトを言うのだ。


 だめだこりゃ……。

 蔓延する諦めムードに打ちひしがれてしまった。

  

   

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