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アカネ・パラドックス  作者: 雲黒斎草菜
《第三章》追 跡
175/297

  真紅の女王  

  

  

 クロネロア帝国の女王陛下がゆったりと俺の脇へ歩み寄って来て言う。

「一つおもしろい話をしてやろう」

「なんだよ?」

「宇宙とはよほど枯竭しておる空間だという話だ。この帝国には潤いを求めてやって来る者が絶えない。その昔、それでもマスターたちは拒むことをせずに、侵略目的の者には辛抱強く説得して抗わなかった。時には大量の水を分け与え続け、しかるのち、この星は宇宙のオアシスとして大事にされたのだ」


「そりゃあ、よかったじゃないか。でも城ができてからは恐れられてんだろ?」

「帝国がよそ者に舐められては、城下の者に示しがつかんからな」


「くだらんもんを作っちまったな」

「ああくだらん。今では芯まで腐っておる」


「あ? は?」

「ものは相談だ。お主の力で浄化してくれぬか?」

「はぁ? 無理だな。俺の力なんぞ、屁の突っ張りにもならん」


「この女の能力は底知れぬものを持っていそうだが? お主ならそれを引き出せるのではないのか?」

「さーな。確かにすげえけど、こいつを本気にさせないと」


「そのための契りだと思えばよい」



 そこまで言うと女王は祭壇へと戻り、ど真ん中に鎮座するゴージャスな椅子に腰かけた。


「何が言いたいの、あの人?」

「よくわからん。でもなんかここらのアンドロイドとは違う感じがする」


 真冬の庭先に陽が射してきたように感じて、俺はぼんやりと赤い姿を眺めた。

 なんだか女王の存在が無性に気になる。いったい俺に何をさせたいのだろう?


 明かりの灯った祭壇を背後にして、片膝を落とした司令官と向き合う女王。ぼろ布を被った三人の賢者は、まるでゴミ回収車がひとつずつ落として行ったのかと思うほどに等間隔に並んで、司令官の後ろでかしこまっていた。


 壇上に目を遣るとガラスケースに収められた蒼い剣が光っている。

「蒼の聖剣か……」

 白と赤で統一された祭壇の真ん中で輝く荘厳な姿は美の極致だ。


「お?」

 司令官の手にも蒼い剣が握られているのはどういうわけだ。聖剣が2本も3本もあるのはおかしいだろ?


「ではこれよりマイスター様の就任式を執り行う」

 持っていた蒼剣(そうけん)を両手のひらに載せて、恭しく(かか)げたところで、一旦停止。ひょこっと顔上げた。


「あのー。就任式は明日執り行うところでしたので、まだ準備ができておらず一般観客もおりませんが。陛下、よろしいのですか?」


「かまわん。式など誰も興味は無い。民には明日の処刑を見せるだけでよい。さっさとやれ」

「ははっ」


 司令官は再び手に持った蒼剣を掲げ、女王は不機嫌な声を出す。

「司令官!」

「は?」

「オマエは私をバカにしておるのか?」

「めめめ、めっそうもありません」

「では何だその剣、イミテーションでこの式を済まそうってのか!」


「あ、いや、これはあの……何しろ今回は本物の男性ですし。蒼剣はとても危険な代物ですから……」


 司令官は言葉を濁しつつ、灰色の何番かも進言する。

「女王様。真紅の剣と異なり、(あお)の聖剣は男性が持つととても危険な物に変貌しますゆえ、万が一あなた様にお怪我でもあればと思い……」


「125年ぶりに正式なマイスター様を向かい入れる儀式に……オマエはイミテーションを使えというのか?」

 低く重々しい声で、灰色の奴の言葉を遮る女王だったが、

「いや。とても危険でありますゆえ……」


「どうしても駄目と言うのか?」


 引き下がらない赤の女王に灰色のチビスケは困惑至極の様子。振り替えって窺う。

「どういたしましようか、司令官殿?」


 トパーズ色の瞳に戸惑いの色を含ませて司令官も進言。

「陛下……このレプリカでも最高の出来栄え、なんら見劣りしませんが……」

 理由は不明だが、全員がかたくなに拒んでいる。


「そうか。なら仕方あるまい」

「ご理解いただけましたか」

 深々と腰を折る司令官の前で、女王は直立すると紅蓮色のマントを脱ぎ捨てた。


「このクロネロア帝国が、お前をマイスターとして受け入れる。その神聖な儀式である……」

 すりゅりと和らげなボディが俺の肩にすり寄りせられ、吸い付くような白い肌が腕に当たった。

「うはっ」

 思わず歓喜の声が漏れた。この柔らかさはまさに人だ。やはり最上級のアンドロイドはすごい。


「マイスターどの……」

 艶めかしい動きを続ける女王の細い指が俺の人差し指に絡められ、やんわりと包み込まれていく。

「あ……あのちょっと」

 オタオタする俺の手を女王の滑々とした指が妖しくまさぐり、それはやがて……。


 ぐいっと。


 え? ぐいって?


「あでででで」

 曲がらない方向へと、指に力が掛けられたのだ。


 慌ててその手を振り払う。

「お……折れるじゃないか!」

 数日前、玲子に吐いたのと同じ言葉がこぼれ落ちた。


「「ええっ!」」

 俺たちはそろって女王の顔を覗き込む。彼女は楽しげにくすっと笑い、片目だけを瞬くと舞うようにして立ち上がった。


「今の……ウインクよ」

 玲子の震え声を払うように真っ赤なロングヘアーを大きく翻し、巻き上がった芳しい香りと俺たちの意識だけがその場に取り残された。


「……………………」


 想像だにしなかった出来事が起きた。玲子は言葉を探して目を白黒させ、俺は激しく困惑した。今のシーンは既視感などというあやふやなものではない。


 俺が持つ記憶と寸分違わない状況をなぜ女王は再現できたのだ?


 半拍ほど空いた間のあと、女王が甲高い怒鳴り声を張り上げた。

「司令官!! 侮辱するのもたいがいにしろ! 神聖な儀式で偽物の蒼剣などが使えるかっ!」


 だんっとそびえ立つと、そのままズカズカとホールを横切り、奥の間へと続く仕切りの前へ移動。怒って出て行くのかと思いきや、大きく腕を挙げて赤いカーテンを引き千切り、奥へ向かって叫ぶ。


「七番っ! やれーっ!」


 号令と共に副主任が飛び出して来た。被っていたお面を剥ぎ捨て、(かかと)で真っ二つに割ると気合いを込める。

「よおーし。これまで我慢してた分、暴れさせてもらうぜ!」


 呆気に取られている賢者の前を走り抜け、副主任は土足のまま祭壇の上まで駆け登って吠えた。

「新しい時代の幕開けだ──っ!」

 すばやく雄叫びを仕舞い込むと、剣が収納してあったガラスケースを持ち上げ、

「女王様。蒼剣は我らの手に!」

 大きく振りかざしてフロアーへと叩き落とした。


「な、何をするっ! 狂ったか、七番!」

 灰色のボロキレ野郎の何番かが叫ぶその目の前で、ガラスケースが木っ端微塵に砕け散り、中から飛び出した本物の聖剣が女王の足もとに転がった。


「女王様、危のうございます御下がり……あっ」

 下がるかと思ったらとんでもない。女王陛下はドレスの裾を持ち上げ、赤いブーツを露わにして、そのまま剣の横っ腹をすくうようにして蹴り上げた。


「あ? え? ふぇ?」

 駆け寄る司令官の鼻先をかすめて、剣は大きく円弧を描いて俺のほうへ飛んでくる。


 どがっ!

「あがぎゃぁぁぁぁぁ」

 横から奪おうと、俺の脇に瞬間移動して来たボロキレ野郎が玲子によって後ろから蹴り飛ばされた。

 後ろからとは、ほんと卑怯なヤツだな、お前は……。


「あたしもう我慢できないっ!」

 玲子はいきり立ち、俺の手にはなんと蒼い剣が。


「ぬあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 叫ぶさ、おっどろくさ。仰天するさ。


「何よそれっ!」

 玲子も吃驚(びっくり)して飛び退いた。


 2ビットの連中は理解しているようで、

「まずい。検非違使! 早く取り押さえろ!」

 素早い動きで俺の周りに検非違使と3体のビゴロスが取り囲んだ。その中心で俺は剣から吹き出した蒼光に照らさられていた。


「わわわわわ。何だこれ。どどどど、どーしたんだよ」


 剣はまだ鞘に収まっているというのに、まるで生き物みたいに中で激しく暴れ動き、隙間から猛烈な青い光が噴き出して、ホールの天井に青い光の帯を揺らめかせていた。


「ユウスケさん抜いてください。剣を抜いてっ!」

 と叫んだのは誰だ。聞き覚えがある声だぞ。


「女王陛下っ!」

 今のは副主任の叫び声だし。

「裕輔ぇぇーっ!」

 今度は玲子だ。


「あわわわわわ」

 情けない声は、俺さ。


 あと誰がいたっけ、などと考えているヒマはない。

 だって勝手に剣の柄が俺の手の平に吸い付いて、しかも暴れるんだ。


「抜いてって言われても……」

 こんな長い剣、握ったこともないし、ましてや玲子じゃあるまいし、振り回したことなんか一度も無い。


「早く取り上げろ!」

 司令官が叫び、検非違使が飛びついて来たので、堪らず俺は剣を抜いた。


 俺の意志で抜いたのではない。勝手に抜けた。いや俺の腕が剣に操縦されるんだ。


 鞘から抜けた瞬間、スパークよりも激しい猛烈な閃光が湧き出し、瞬間目の前が暗くなった。でも俺の思いとはまったく関係なく腕が動いていく。右から掴みかかってきた検非違使の片手がマイクロ秒の速度で走った一閃により、ぽとりと床に落ちるのを目撃した。


「わぁーお」

 それは胸のすく見事な切れ味で、瞬く間もなく切り離していた。続いて剣の動きはスムーズに後ろへ移り、背後から襲ってきた奴の左肩から右足の膝までを、まるで定規で線を引いたように、斜めに真っ二つに切り離し、

「うがぁぁ!」

 そいつは怒号と一緒に俺をあいだに挟んで左右に分かれた。


「女王様。早くこちらへ!」

 女王様の白い手を引いて逃避行でもする気か、腰に手を当て引き寄せるスケベ医者野郎。

 お前ら、禁断の恋か?


 なぜか二人は俺の後ろについた。


「はぁ? 何してんの、副主任?」

「何って、キミに守ってもらいたいんじゃないか」

「勝手なこと言わないでよ!」

 口を尖らせて割り込んだのは玲子。でっかい声で喚めき続けた。


「冗談じゃない! あたしらを裏切ったくせに何言うのよ!」


「裏切ってないよ。わぁ! ユースケくん、剣を構えて!」

 構えろも何も、勝手に剣が上段へ移動するから、それに張り付いている俺の腕も自然と上がる。


「ビゴロス行け!」

 灰色の誰かが命じ、小山のような奴が俺の行く手を遮った。もちろんこっちはどこへも行く気はないが、剣が勝手に行くんだから仕方が無い。


 振り挙げた右手がわなわなと震える。どうにも安定が悪い。

「裕輔、両手で持つのよ!」

 後ろから玲子の即席剣術指南が始まった。


「こ、こ、こうか?」

 言われるがまま両手で持って振り被ってみる。


「左足の(かかと)を上げて。そうそう。その状態で右足を一歩出して振り切るのよ。それからもっと絞るように持つの。タオルを絞るように」


「注文が多ーい!」

 と文句を垂れながらも、師匠の声には素直に、

「こうだな……ぐはぁ!」

 巨人みたいなビゴロスを上段の構えで振り切った俺――の剣は、野菜でも切るみたいに軽々しい動きで、鋼鉄の塊であるビゴロスを切り刻んでいく。しかも切れ味はまったく劣らない。


「ほぉぉ。うわさに聞くが、蒼剣の切れ味は本物なんだね」

 愉快そうに言う副主任。

「それより。女王様をどこへ連れていく気だ。2ビットの連中を裏切っていいのか?」

「バカ、敵は向こうだ。女王様はこっちの仲間だぞ」


「なんでだよ。お前、裏切っただろ。反体制グループの隠れ場所を教えていたし、陰で怪しい動きをしてるじゃねえか」


「何をそんなにプー垂れてるんだよ。あのねユースケくん。表向き捕まったように見えているけど、捕まったのじゃない。必要になっての強硬手段だ」


「捕まったように見せた? ウソ吐け、リーダーの怒りは本物だったぜ!」


「あれは芝居だ。でもあいつが俳優並み演技をするとは思ってもみなかったけどな。いいかよく聞けよ。さっき現れた緑の検非違使だって、女王様についている味方のアンドロイドたちだ。今ごろ次の段階に移っている」


「次の段階?」

「ああ。待ってろって。さ、女王様。次の号令を……」

「あ、はい」


「え? その口癖」

 よく見えない壁がいくつも目の前に突出したみたいに、俺は思考の行き場を失った。


「修正メンバーのみなさん。出番です!」


「みなさん? メンバー? え? 女王陛下、お声がおかしくないですか?」

 俺より先にキョトンとしたのは副主任だ。


「何だよ。あんたも知らないの?」

「この人だれ?」

 指差す副主任。


「女王さまじゃねえか」

「……ウソだろ?」


「あんたがたじろいでどうすんだよ」

「オレの知ってる女王様とは違う……」

 何を言いたんだ、こいつ?


 確かに女王様の声がさっきと違ってえらく可愛いのはなぜだろう?

 あの低音の凄味はどこ行った。


 戸惑っていようと困惑していようと、俺の腕はおかまいなしさ。取り押さえようと飛びついて来る兵士を自動的に切り裂いていく。こういうのはなんていうんだろ。フルオートマチックとでも呼べばいいのだろうか。


 そこへ、赤い分厚いカーテンが引き下ろされて、緑の服装をした検非違使と10数名のアンドロイドが飛び出して来た。何番か知らないが灰色のチビが叫ぶ。

「おお。新制検非違使の諸君。反乱者だ。七番をひっ捕らえろ。女王様を人質にしておる」


「マイスター様までが人質じゃ。気をつけるんじゃ!」

 もう一人のチビが、そう言うけれど。

 そのマイスターが剣を振り回して暴れてんスけど……。

 戸惑いが頂点に達した時、


「ぐぅおぉぉぉ」

「がぁぁあ」

 走り寄った緑の検非違使が、電撃ロッドで雑兵を手当たり次第にぶっ叩き、派手にスパークを放出させて倒し始めた。


「こ、こら新米! それは味方の兵じゃ!」

「何をしてるんだ、あの青っ(ぱな)連中は?」

 司令官が疑念の視線を向けている次の瞬間、


「全員、かかれぇぇぇぇぇっ!」

 緑の検非違使が一斉に仮面を剥ぎ取り宙へ向かって投げ捨てると、持っていた電撃ロッドを後ろからやって来た集団に渡し、自分たちは懐から別の警棒を抜き出してそれぞれに振り上げた。


「ぬぁぁぁ、な、何だ!」

「こりゃあいったい、どうしたというんだ!」

 俺は腰を抜かさんばかりに慌てふためき、副主任は前髪を弾きつつ、この場に及んでもハンサム路線を貫き通した。


 仮面を脱ぎ捨てた緑の検非違使は全員、副主任と同じ人面を曝し、新たに現れた集団は明らかに人だった。それぞれに個性ある面立ちと緑がかったブロンドヘアだ。


「拾六番は先頭に立って指揮を取れ、拾九番は女性陣を守るんだ!」

 先頭でロッドを振り上げていた者が正気を帯びた声で叫び、

「女だからとバカにしないで。私たちの身は自分で守ります。さ、みんな女王様を守るのよ!」


 あのー。

 戦闘中ですが、少々お時間を頂きますよ――拾六番と言えば生き残りレジスタンスのリーダーっすよね。ということは副主任の言葉はマジだったのか? それより女性陣って誰だよ。ヒューマノイドの女性は玲子しかいないだろ?


「さ、女王様方。私たちの輪の中にお入りください」

 俺たちを取り囲んだのは6名の若い女性だった。首から下は緑の服装をした検非違使姿だ。


「さっきの検非違使はあなた方が変装していたのですか?」

「えぇ、そうです。すべて女王様のご意思のとおりです。修正は成功しました」

 尋ねる玲子に、朗らかに答えたのはブロンド姿の美人だ。


「修正?」

 玲子が首を捻り、同じように勝ち気な別の人が話しを継ぐ。

「時空修正が成功かどうかは、マイスター様とあなた様のご活躍次第でまだ変化します」


「「時空修正ぇぇ!」」


「あががが、痛ぇぇぇ」

 首がねじ切れるかと思った。上半身を振り返らせてたところへ右から兵士が飛び込んで来たので、剣が勝手に動いて、そっちに体がいきなり旋回したからだ。


「痛ぇけど、この際首なんてどうでもいい。時空修正を企てたって! お前、ユイかっ!」

 赤いドレスを着た女王へ視線を飛ばす。


 俺が確認するよりも早く玲子は叫び、

「ユイなのっ! ほんとなの?」

 二人して抱き合っているし――。

 でも身長が高すぎる、って――なんと!

 優衣の手には底上げ式の真っ赤なブーツが。


 もう一つ、腰が砕けてしまいそうな光景。

「うわぁぁあ」

 みんなの目の前で、真っ赤な髪の毛が風を切って頭部へ引き込まれた。そのたゆみが適度な長さになると虹色の変化を起こし、いつもの栗色に落ち着く。


「なっ、お、うあっ!」

 優衣の変身シーンを見て、一人騒ぐのは副主任だけだ。


 最初の頃は俺もそんな感じだったな、って感慨に(ふけ)ている場合ではない。この腕を何とかしてくれ、さっきから雑兵の微塵切りを始めて止まらないんだ。


「副主任! 誰なんだこの人ら、それからどういうことだ! なぜユイが女王様をやってんだよ?」

 こっちの質問には一切答えず、いや、副主任もどうやら俺と同じ境遇のようだった。つまりこいつにも内密にされていた何かがあったんだ。


「あ、あなた様は……」

「敵を欺くには、味方からと言うだろ、七番。オマエはこの私の声を忘れたのか!」

 いきなり女王の声音に戻った優衣に厳しく(こく)られて、さすがにハンサム路線に戻るのはもう無理のようだった。驚愕に震える目を隠すこともせず、

「……じゃじゃあ。本当に女王様がユイくんなのか!? いやユイくんが女王?」


「ジャーもポットも古いぜ副主任。今はフードレプリケーターの時代だ」


 俺は後ろに首を捻って顔だけで奴に付き合い。体の正面は前を向いて左右から飛んでくる検非違使をチャンチャンバラバラと、剣が勝手に切り刻んでいく感触を味わっていた。完全オートマチックだな。


「はい。ユイ、ごくろーさん」

 シロタマが上空からタオルを放って寄こし、それで化粧を(ぬぐ)い落としたその顔の、可愛ぃぃぃぃぃぃこと……。マジだぜ。


 あ――。ここにいない田吾が気の毒だ。せめてカメラを預かっていたら撮ってやったのに。

 会報の目玉になること請け合いの一枚だった。

  

  

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