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夏になる頃へ  作者: masaya
二章 from sky
94/112

特別編 桜咲く頃に少しの進展を、

少しずつ、少しずつ冷たい風が暖かくなってくる。ふわり、ほろりと忙しそうに風も空を舞っている。掴めるはずなんて無いって分かっているのに空に向かって手を伸ばしてみる。ぐっと握り拳を握るだけで春風をつかむことなんてできやしない。分かっている。分かっていた。けれど、尋の表情はどこか柔らかく満足した表情である。ぐっと握り拳を胸のあたりに持っていき開いてみる。掌には何も残ってはいない。

「もう少ししたら春か・・・」

ふと、何か懐かしむような表情を浮かべてしまう。色々とあったな。なんて今までの珍事件(おもいで)が走馬灯のように駆け巡っていく。目を閉じ春風になりかけている風の音を聴いてみる。自然現象に言語という概念があるのか分からないけれど、どこか忙しそうだけれど楽しそうな(こえ)にも聞こえないことはない気がする。一人、気持ちよくベンチに座り黄昏ている。と、後ろから名前を呼ぶ声が聞こえてくる。振り返るとビニール袋を持ちながらこちらに手を振ってくる御崎の姿が目に映る。御崎の表情があまりにも嬉しそうな表情を浮かべているため尋はつられ笑顔で手を振り返す。

「こんばんはですかね?こんにちはですかね?」

首をかしげながら挨拶をしてくる御崎はあどけなく可愛く映る。尋はどっちも正解かな?夕方だし。なんて笑顔でフォローすると恥ずかしそうにけれど、嬉しそうに小さく頭を下げる。それにしても、御崎はどうしてここに来たのだろう。待ち合わせをしていた訳でもないし御崎の家とは逆方向にある公園である。何か用事がなければこうして来ないであろう場所である。ふと、尋の不思議そうな表情を見た瞬間、御崎は少し戸惑ったような焦ったような表情を浮かべながら、

「ち、ちょうど!夕空を見ながらお菓子を食べたくなってここに来たんです!夕日を見ながらポッキーを食べるなんて青春っぽいですよね?!」

学年で一番可愛い女の子が見せる表情とは思えない焦った表情につい、笑みがこぼれてしまう。うん。確かにこうして先輩、後輩と二人で夕日を見ながら話をするのも青春っぽいかもね。なんて口にすると御崎は嬉しそうに微笑みベンチへと座ってくる。ごそごそとビニール袋からお菓子を出してくる。

「先輩って甘いお菓子としょっぱいお菓子どちらがお好きですか?沢山買ってきたので選び放題ですよ。えへへっ」

ごそごそと楽しそうに袋の中のお菓子を選んでいる御崎は可愛く微笑ましく映る。こんな可愛い後輩に慕われていることは本当に幸せな事なんだろう。

「御崎ちゃんって本当に楽しそうにしている時の笑顔って可愛いよね」

尋の何気ない言葉には慣れているつもりだった。つもりだっただけで全然慣れてはいなかった。唐突な言葉に御崎は上手く反応ができない。小学生みたいな先輩。思ったことを損得関係なく口走ってしまう。何も思っていない異性(あいて)からだったら何でもない。流しいつものことだ。なんて聞き流すことができる。けれど、今は聞き流すことなんでできない。一つ一つ別にやましい気持ちがあって言っている言葉じゃあないことぐらい分かっている。分かっているけれど、顔がにやけてしまう。好きな人に可愛いって言われてしまった。それだけで今日、なんとなくお菓子を持って来たかいがある。

「み、御崎ちゃん?俯いてるけど大丈夫?どこか体調でも悪くなった?」

すぐさま表情(ほんね)がバレないように顔を冷静に装い返事をする。

「何ですか?先輩」

「い、いや。なんかつらそうだと思ったけど・・・怒ってる?」

「えっ!?ご、ごめんなさい!全然、怒ってないです!むしろ先輩と一緒に話ができてることが嬉しいです!あ・・・」

焦ってしまい、つい本音を口にしてしまう。尋はどんな反応をしているのだろうか?そっと、尋を見てみると満面の笑みでこちらを見ていた。

「そ、そっか!怒ってないならよかった!安心したよ!あー良かった!」

「・・・」

先輩はきっと怒っていない。と、言う単語を聞いて安心しその後の言葉は耳に入っていないに違いない。フッと御崎は虚しさにも似た乾いた声を静かに吐き出す。でも、それが先輩らしい。いや、それでこそ先輩だ。色々と難しい人を好きになったのかもしれない。けれど、好きになったんだから。それもひっくるめて好きになったんだから。今こうして二人でいられることだけでも幸せなんだ。

「うん。うん」

「うんうん?」

「なんだか、春になると少しずつ進歩しそうです私!」

御崎が口にした進歩しそう。という言葉にピンと来なかったが尋は微笑むと、

「そっか!じゃあ、僕も色々と頑張らないと!」

二人は向き合い笑いあう。夕日が二人を照らしいつの間にか春風は止んでいた。

始まりがあるという事は終わりもしっかりとないといけない。と、日々思う今日この頃です。見てくださっている方々に楽しんでもらえるような物語が書けるように頑張ります。彼らの物語の終わりもはっきりと決まりました。最終章を読んでもらった時、皆さんが少しでも頑張ったね。良かったね。行ってらっしゃい。なんて思ってもらえたら嬉しいなー。って思います<(_ _)>

これは番外編なので時系列的には今の物語よりちょっと先のお話です。こんなの書く前にさっさと本編を書けよ。おっしゃる通りでございます。でも尋と御崎の日常の風景を書きたかったんです!ごめんなさい( ;∀;)

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