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夏になる頃へ  作者: masaya
二章 from sky
84/112

17

「あれ、この香り知っている?なんか懐かしい?」

ふと、無意識に言葉が漏れてしまう。が、尋さえ自分が言葉を口にしたことさえ気にしていない。何気ない言葉(ひとりごと)を耳にした江宮はパッと明るい表情になり頬を桜色に染め少しだけ俯く。彼女は尋を見た瞬間に秋鹿尋だとすぐに分かり、尋が自分のことを覚えていないことも分かった。そのため彼の懐かしい。この言葉が素直に嬉し恥ずかしかったのだ。昔、少しの間だけしか過ごしていなかったが、彼女の中ではその時の思い出がとても大切な時間(たからもの)であった。次第に体の火照りに慣れてきたころ、冷静さも戻りつつあった。なぜ、彼は今自分の病室のドアの前で足立と共に立っているのだろう?尋に会えたことは嬉しかったが彼は彼女に対して親しみを込めて来たわけではなさそうである。現に自分のことを忘れている彼が親しみを持ち来るわけもない。一体なぜ?なんて彼女の疑問が手に取るように分かったのだろう。足立は尋の後ろ姿、かなでの恥ずかしそうで不思議そうな表情を何度も見返し微笑ましい表情を浮かべる。

「こんにちは。ちょっと暇そうな子が居たから連れてきちゃった。改めて私たち部屋に入っても大丈夫かな?」

優しい微笑みを浮かべ返答を待つ前に部屋へと入るが尋は未だにどうしていいのかわからず戸惑い扉と部屋の境界線でたじろいでしまっていた。困っている表情は昔から変わっておらずかなでは懐かしさを覚えつい、口元が緩んでしまう。足立もまた楽しそうに微笑むかなでの表情を満足そうに見つめていた。

「散らかっていますけど・・・よろしければ・・・どうぞ・・・です」

かなでの言葉に緊張しているのか何度も会釈をしつつ部屋へと入室する。流石に同世代の女性の部屋へはいるのは緊張しているのか右手右足が同じように動き歩く姿はまるでおもちゃの騎兵隊のようでかなで、足立はつい、笑ってしまう。尋は何に対して笑われているのか分からなかったため二人と同じように笑う。それがまた面白かったのか足立は笑いながら足へ指をさしてくる。

「絶対に今、何がおかしいのか分からずに笑ったでしょ?本当に面白いなっ!今ね、秋鹿くんが歩いているとき足と手が一緒に動いてておもちゃみたいだったからだよ」

足立の突っ込みに焦り両足をバタバタと動かし誤魔化すように笑う姿にまた、二人は笑い出す。尋もハニカミながら頬を書きながら二人の近くへと近づいていく。

「あはは・・・えっと、こんにちは。僕は秋鹿尋って言います。急に僕が入ってきて驚いたと思いますけどよろしくお願いします。えっと、僕が好きなのは天体観測です。ここからだと街の明かりがあるから星空は見えにくいんですかね?」

なぜだろう?初対面の人なのに彼女を前にするとすらすらと言葉が出てくる。無理やり喋っているわけではなく自然に友達と会話をしているように考えることなく言葉が次々とあふれてくる。足立も尋の姿に優しい笑みを浮かべかなでも尋の言葉に耳を向けている。流石に一人で喋りすぎていることに気が付いたのか尋は苦笑を浮かべつつかなでへと視線を向ける。と、

「秋鹿くんは星が好きなんですね。私も星を見るのはとっても好きなんです」

「えっ!本当に?!それは嬉しいな!」

嬉しかったのか一定の距離を保っていた尋はベッドの近くにあった椅子に座りかなでと同じぐらいの視線になる。かなでも尋の行動に驚くことなく楽しそうに会話を続ける。微笑ましい笑みを浮かべながら足立は二人の姿を見つつ静かに部屋を後にする。二人ともが星の話に夢中だったため足立が部屋から居なくなったことに気が付くことなかった。しばらくの間、星座の話をしていると何かを思い出したかのようにかなではベッドの横の机に立てかけてある数冊の本を手に取ると膝の上に置き開き見せてくる。随分と古い本なのか端の辺りに折り目や日焼けした後が付いている。けれど、その本は尋にとってどこか懐かしさを覚えるものであった。いて座としし座が仲良く二人で冒険をする物語の絵本であった。市販されているものではなく手作りで温かみのある感じが伝わってくる。その絵本を見るだけでなぜか微笑んでしまう。尋の横顔を盗み見る。と、微笑んでいる表情が目に映り鼓動が早くなりのども乾いてきてしまう。

「ん?僕の顔に何かついてたかな?」

そういうと両手で顔をこする姿がまた懐かしく視線をそらしてしまう。

「んーん。ごめん。ちょっとだけ見惚れちゃってた」

「み、見惚れてたって・・・あはは・・・そんなに僕の顔はいいもんじゃあないよ」

「んーん。私はすごく格好良く見えてる・・・よ」

かなでの横顔を見ると恥ずかしそうに頬を赤らめ一生懸命、勇気を振り絞って自分に伝えてくれていることが手に取るように分かってしまう。かなでの熱が伝わってしまったのか尋の顔も赤く染まる。トクン。と、静かで大きな鼓動が尋の体を揺らす。この感じ久々な気さえする。この感覚は香織と話をしているときにそっくりだ。初めて会った女の子にここまで言われてしまえば男子高校生として緊張しないわけがない。自分を落ち着かせるように静かに早くなった鼓動を抑えるよう深呼吸を気が付かれないように何度も繰り返す。かなでも感極まり本音をつい、言ってしまったのだろう。尋には気が付かれないように何度も深呼吸を繰り返していた。先ほどまで穏やかに包まれていた二人の空間がどこかお見合いのような緊張感に包まれてしまう。が、尋は機転を利かし手のひらを優しく叩きかなでの視線をこちらへと向ける。

「そうだ!ちょっとだけ、今から・・・」

散歩にでも一緒に行きませんか?なんて口にしようとした瞬間、病室の扉が開き花を持った長髪の女性が不思議そうな表情でこちらを見てきていた。と、言うより尋を物珍しそうに見つつ会釈をしてくる。尋も椅子から立ち上がり頭を下げる。

「こ、こんにちは。えっと・・・秋鹿尋って言います。江宮さんとはえっと・・・」

「む、昔の友達が来てくれてたの」

困っている尋に助け舟を出してくれたのか尋の言葉を遮るようにかなでが目の前の女性に告げると不思議な視線を向けて来ていた女性は微笑みへと変わり再度、頭を下げてくる。尋も慌てて頭を下げる。と、足の辺りをつつかれたため後ろを振り向くと申し訳なさそうにかなでが頭を下げてくる。

「ごめんね。お母さんが戻ってきたから・・・その・・・」

「ん?・・・あぁ!ごめん。じゃあ、そろそろ僕はお邪魔します」

そう告げると尋は出口へと歩き始める。折角、会えた彼ともうお別れなんだ。そう考えると胸の奥の辺りがキュッと締め付けられたような感覚を覚える。最後に連絡先でも聞いておけばよかった。後悔が胸の中をぐるぐると回っていた時、出口に向かい歩いていた彼が何かを思い出したかのように足を止め振り向いてくる。

「迷惑じゃあなければまた、星の話をしに来てもいい?」

自分でもどうして初めて会ったばかりの女性にこんなにも馴れ馴れしいことを言ってしまったのか分からない。けれど、ここでさようならなんてどうしても嫌だった。尋の言葉を聞いた瞬間にかなでは満面の笑みを浮かべると、

「うん。待ってるね」

かなでの言葉に尋は照れ笑いを浮かべると、

「ありがとう。今度はお土産持ってくるね。拒否られなくてよかった」

そう口にすると尋は病室を後にする。久々に心の底から笑う娘の姿に母親は必死に泣くことを堪えながら、

「かなでのお友達久々ね。お母さんもう少し遅くに来ればよかったかな?」

「・・・うん。もう少しゆっくりと話をしたかったかな」

「あら・・・ふふっ。それはごめんなさいね」

かなでの笑いが混じった言葉に母親も笑いながら花瓶の花を変え始める。そよそよと揺れるカーテン越しから見える景色が少しだけ、ほんの少しだけいつもより明るく青々しい夏の色に映る。

「もう少しで夏も終わるのかな・・・」


----------


「・・・そう言えば足立さんいつの間に居なくなったんだ?それより御崎の病室結局教えてくれなかったし!・・・でも、いいか」

「何が、いいか。なんだ?」

「うお」

後ろを振り向くと不思議そうな視線を向け花瓶を手に持っている雨谷の姿が映る。尋も驚きはしたものの知り合いに会えたことの嬉しさについ、にやけてしまう。

「人の顔を見てにやけるとかやめろよ。気持ち悪い!」

「へへへ。知り合いの顔を見たらなんか安心した。実は僕、迷子だったんだ」

「はぁ?」

あきれた声を出しつつ病室を知らないまま逸れてしまったことを説明すると再度大きくため息をつき肩を叩いてくる。

「それで、一階からここまで歩いて来たってこと?」

「あ、それが・・・」

別に雨谷に隠すことでもなかった。が、尋はその言葉に頷きその場を通してしまう。きっと雨谷に話をすればからかわれることは必至だと思ったためだろう。

「よっし。じゃあ、行こうぜ。愛しの御崎ちゃんの病室へさ」

「雨谷ってなんか嫌な奴になってない?」

「ご、ごめんって!ちょっとからかいすぎたかも!でも、夜に病院に行くのはキモ・・・格好いいと思うぜ!」

「最初に気持ち悪いって言おうとしていたのバレバレだからね!!」

遅くなりすみません。ただその一言のみです・・・。

しかし!言い訳をさせてください!!体調を崩してて本当に物語が書けなかったんです!熱とか出たりして!そりゃあ!!大変だったのですよ!!・・・いいわけですね。本当に改めて更新が遅くなり本当に!本当に!!すみませんでした!!(土下座)私の物語を楽しみ?に読んで下さっている皆さんには本当にご迷惑をおかけしてます!

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