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夏になる頃へ  作者: masaya
二章 from sky
77/112

14

風の切れる音、夏虫の鳴き声、車輪の擦れる音、そしていつも以上に自分自身の鼓動が大きく耳に入りこんでくる。

「・・・っ」

いつぶりだろうか?こんなに本気で自転車をただ、がむしゃらに漕いでいるのは。それは唐突に突きつけられた。御崎が車に轢かれたという。頭の中が真っ白になり気が付けば自転車に乗り病院へと向かっていた。乱れた呼吸を整えることなくただひたすら、目的の場所へと向かい漕ぎ続ける。

「轢かれたって・・・どう言う事なんだよ!誰が轢いたんだ!!くそっ!!!」

溢れ出てくる不安(かんじょう)を大声で叫び夜空へと八つ当たりしてしまう。八つ当たりしたところでなにかが変わるわけもない事ぐらい分かっている。分かっているけれど叫ばずにはいられなかった。黙ったまま漕いでいると嫌な結末しか思い描けない。少しでも気を紛らわせないと自分の頭がおかしくなってしまいそうだった。今朝、一緒に居た可愛い後輩が車に轢かれるなんて誰が思うものか。昼のあの時引き止めていればもしかしたらこの事故は起こらなかったのではないだろうか?一緒にその現場に居ればもしかしたら自分が助けられたのではないか?様々な後悔(おもい)が頭の中をぐるぐると駆け巡る。と、同時にグッと下唇を噛んでしまう。

「無理だって分かってる!分かってるけど、もしかしたら助けれたんじゃあないかって思っちゃうんだよ!」

心の中の自分(かんじょう)に言い聞かせるように、言い負かせるように叫ぶ。叫び続ける。一体どれぐらい叫んだだろう。気が付けば尋は今朝、おつかいで来ていた病院の前へ到着していた。息は切れ体全体で酸素を取り入れる。縋るように自転車のハンドルに両手を置き病院を見上げる。病院は消灯時間をとうに過ぎておりぼんやりと非常口を知らせる黄緑のような光が付いているだけだった。勢いよくきたのはいいけれど連絡を受けて二時間以上経っていた。救急外来の入り口はどこだろうか?辺りを見渡しても分からなかったため連絡をくれた御崎の後輩に連絡を入れようとポケットに入れいた携帯を開いてみると連絡をくれた御崎の友人からメールが来ていた。メール内容を見た瞬間、尋は膝から崩れ地べたへ座り込む。自転車も倒れてしまったがそんなことなんてどうでもよかった。ただ、張りつめていた緊張が一気に切れてしまう。

「・・・よかった・・・本当によかった」

心の声がつい、漏れてしまう。それだけならよかったのだけど堪えていた涙まで溢れ頬を濡らしてしまう。一人でよかった。涙を流しながら尋は心の隙間に余裕が出来たのか誰に向けるわけでもない照れ笑いを浮かべる。否定し続けていたが車に轢かれた。と、聞かされた瞬間から最悪な事態しか想像できなかった。御崎が車に轢かれて重症になりもしかしたら命さえもなくなってしまうかもしれない。心の隅でそう思ってしまっていた。けれど、実際はそうじゃあなかった。車に轢かれたのだけどそのまま吹っ飛ばされ運良く柔らかい田んぼへと飛ばされ左足が骨折しただけだった。骨折をしただけで命には別条はない。この文章が書いてあっただけで尋は嬉しくて言葉が出てこなかった。

「本当によかった・・・よかったね。よかった。本当によかったね。よかった」

呪文のようにしばらくの間、よかった。と、しか言えず夜中にひとり病院の前でぶつぶつと言葉を発している男が居る。冷静に考えると流石に補導されかねないと尋も分かったのか地面から立ち上がり倒れていた自転車を持ちあげる。深く深呼吸をしつつ夜空を仰いでみる。キラキラと銀色の星が煌めき、よかったね。なんて優しい言葉を投げかけてくれているような優しい光が夜空を包んでいた。

「・・・親族でもないし急病じゃあないからお見舞いこんな時間に行っても怒られるだけだよね・・・あ!」

もしかしたら。数ミリの希望を託し携帯電話を開き御崎のアドレスを開き電話番号を押してみる。数十秒だろうか?なり続ける呼び出し音。流石にこの時間は寝ているだろうし病院だからそもそも出れないか。諦め電話を切ろうとした瞬間、

「もしもし?先輩?」

「うわ。出た」

「電話をかけてきたのに驚いて出たってなんですか。あははっ」

電話からはクスクスと御崎の優しい笑い声が聞こえてくる。それだけで尋は言葉に詰まってしまい目頭が熱くなり鼻の奥の辺りがツンと痛くなる。冷めたはずの体が御崎の声を聞いた瞬間、徐々に熱くなってくる。どうしてだろう。彼女の声を聞いているだけで涙が止まらない。気が付かれないように精一杯見えるはずもない御崎(あいて)に笑顔を作る。

「ごめん、ごめん。御崎ちゃんが事故にあったって聞いたから電話したんだ。今、大丈夫だった?」

「わざわざ電話かけてきてくれたんですか。先輩にまでご心配をお掛けしてすみませんでした。ちょっと骨折しただけなので大丈夫です!今は一応、頭も打っちゃって検査入院って事で一週間入院する事になっちゃって」

「病院で電話なんかしていいの?って・・・電話をかけた僕が言うのもなんだけど」

「大丈夫です!さっきまで友達と電話しててそれで少しの間、ボーっとしてた時に丁度電話がきたので!・・・でも、先輩が最後なんですよっ」

「最後?」

少し意地悪のようなからかうような口調で御崎は、

「私が事故に巻き込まれたって友達が連絡してくれてみんなからメールが沢山来て、仲の良い友達、先輩からは来てて、だけど先輩だけは無くて私少しだけショックだったんですよ?これでも一応、先輩の中では一番仲良くしてくれてる先輩だと思ってたのになっ」

「そうなのか!それは遅くなってごめんね!ちょっとだけ居眠りしててさ・・・ははっ」

「ふふっ。私こそ心配して連絡して下さったのに意地悪を言ってしまってごめんなさい。本当は凄く嬉しいんです。多分、何となくなんですけど先輩から電話が来るかもしれないって思ってこの場所に座っていたのかもしれません。・・・って、私なに言ってるんだろう!な、なんか慣れ慣れしいですよね?ごめんなさい!なんか変なテンションになってるのかもしれません!ごめんなさい!・・・なんだか顔が熱くなっちゃいました!あはは・・・」

あたふたする姿が電話越しからも伝わり尋はつい、笑ってしまう。

「そんなことないよ。でも、本当に無事でよかった。本当によかったよ」

「せ、先輩・・・うそ・・・」

「ん?嘘?」

ふと電話越しから風の流れる音が聞こえた気がした。何となく視線を上げてみる。と、御崎が窓を開けこちらを見ている気がした。口を開こうとした瞬間、

「も、もしかして・・・私を心配してくれ・・・ここまで・・・自転車で・・・それなのに私・・・意地悪な事を・・・」

「・・・ははは。嘘ついてごめん!実は御崎ちゃんが事故したって聞いて何も考えずに自転車でここまで来ちゃった。二時間以上かかっちゃったけどね。あ、気持ち悪いとか言わないでよ?これでも本当に心配したんだから。それにしても冷静に考えたら本当に深夜に病院の前の駐車場で立ってる僕って気持ち悪いね!」

「・・・言う訳ないですよ・・・せんぱ・・・」

「なんで泣くの!?骨折はしちゃったけど命に別条ないんでしょ?だったら泣くよりさっきみたいに笑おう?」

「・・・はい。ありがとう・・・ございます」

「じゃあ、僕はそろそろ帰るよ。流石に警察の人に見つかったりしたら補導されかねないし。それに明日ちゃんと昼間にお見舞いに行くよ。御崎ちゃんもちゃんとしっかりと寝るんだよ。それに頭も打ったんでしょ?僕と電話する前に早く寝なさい!」

先輩らしい言葉を口にすると電話を切り御崎へ手を大きく振り自転車に乗り病院を後にする。

「本当に大事にならなくてよかった・・・でも、何も考えずに深夜病院に来るって流石に引かれちゃっただろうな・・・。まあ、でも顔も見れたし元気そうだって分かったからいいか!・・・やっぱり明日謝るべきだよね」

言葉(きもち)を口にしつつ夜風を体全体で浴びてみる。夏らしく暖かく青々しく心地の良く尋は自然と頬から伝う涙は止まり笑みがこぼれていた。

「病院に向かってる時は必死で気が付かなかったけど凄い星空!・・・星が綺麗なのは良いけど、ニ時間かけて帰るのか・・・なんか憂鬱しかない・・・けど!まぁ、いいか!」

思いきりペダルを踏み速度を上げ家へと向かう。ふわりと芽生えた感情(きもち)。誰がこの気持ちを抱いたのだろう?きっと本人でさえ分かっていない小さな(こいごころ)。静かに夏の夜空は誰かの青い恋の始まりを優しく受け入れる。

赫姫、末期ナ意味を書いていると色々とスイッチが変わり恋愛モードに切り替えることが中々出来ないです((+_+))すぐに切り替えることはとても大切だと分かりつつ・・・不器用な自分は中々出来なく物語を見て下さっている皆様にはご迷惑をお掛けしてしまってすみません。久々の更新ですが、よろしくお願いします。

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