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夏になる頃へ  作者: masaya
二章 from sky
71/112

12.2

「ひろ?尋ってば・・・もう・・・ふふふ」

「・・・んぁ」

トイレから戻ってくるとベッドへもたれかかり静かな寝息を立てている尋の姿に紫穂は微笑んでしまう。仕方ないな。なんて小さく呟くとクローゼットの中からタオルケットを取りだし尋の体へとかけ机に広がっているアルバムへと視線を向け座り一枚、一枚思い出を確かめるようにめくる。どれも懐かしい写真ばかりで動画(えいそう)として見るのではなく一瞬の雰囲気まるごと収まる写真はとても大好きでだ。アルバムにして十数冊もあり彼女にとってはかけがえのない宝物である。保育所辺りのページをめくり見てみるとまだ尋が自分よりも身長が低く自分(わたし)の裾を持ち仲良く二人が笑っている写真に微笑が漏れてしまう。この頃はまだ香織とは仲がそこまで良くなかった気がする。あと数ヵ月後にもなればどこへ行くにも三人一緒になっていった。片肘を机へとつき寝息を立てている尋へと視線を向けると何故かため息が出てくる。何に対してのため息なんだろう?彼とは幼馴染で親友である。きっとそれはずっとこれから大人になっても変わらない約束(キズナ)。私は少なからず目の前の幼馴染に親友とは違った特別な感情が芽生えてしまっているのかもしれない。何度も何度も胸の奥から湧き出てきそうになる感情を否定しようとした事もある。否定しようと思いすぎ彼を思いきり拒絶した事もあった。身の覚えのない彼は戸惑い何度も電話をかけてきたり家に来たりと様々な努力を身勝手な自分に対してしてくれた。自分自身が悪いと分かっているのに彼の優しさが余計に苛立ったりもした。その時、私の事で彼はもう一人の幼馴染でもある香織に色々と相談にのってもらったらしい。

「ふぅ・・・きっかけを作ったのは私だったんだよね・・・って!なに言ってんだろう私!」

気を紛らわすように両頬を叩き脳裏に過ぎった思考を頭の外へと追い出していく。何枚かページをめくっていっていると香織も登場し三人が映る写真が多くなってくる。女の自分が見ても香織は小さい頃からぽわぽわと女の子らしい雰囲気が写真からも伝わってくる。その横には虫取りを持ち半そで短パン姿の自分にため息が漏れてしまう。パッと見は女の子一人、男の子二人に見えて仕方ない。昔の自分はどうしてここまで少年のような格好をしていたのだろう。もう少し親が気を使って女の子らしい服装を着させてくれてもよかったのに。と、訳も分からなく両親に対して怒りを覚えつつめくっていると登場人物が三人から四人へと変わっていく。

「あれ・・・この子って誰だったっけ?」

写真には尋、香織、紫穂そして女の子がそこには映っていた。控えめな女の子なのか尋と紫穂は元気よくピースを作りカメラ目線で映っているが、その女の子は香織と手を繋ぎ恥ずかしそうにピースをしていた。しかし、この女の子は一体誰だろう?その疑問ばかり出てきてしまう。けれど、女の勘なのか尋が気にしている事と関係のある写真である事に間違いない。確信にも似た感情を抱きページをめくる。

「季節は今頃なのかな?緑も青々しいし夏ごろに撮った写真なのかな。それにしてもめちゃくちゃ仲良さそうに写ってるのに名前を思い出せないって失礼な話だよね・・・でも、誰だっけな」

眉間にしわを寄せつつ唸るように声をあげ首を左右に曲げつつ記憶を絞りだそうとしてみたけど全く思い出せない。気持ちが悪い。思い出そうとして思い出せない記憶の曖昧さに苛立ち近くにあったティッシュを一枚取り丸め尋の頭へと投げる。ふんわりと円をかくように尋の頭の上へと見事着地成功。想像もしていなかった結末に自分でも驚き少しのけ反ってしまう。

「って、資源の無駄使いは駄目だよね。ごめんなさい」

頭に乗ったティッシュを取りこよりを作り机の上へと置く。

「暇になったら尋を起こす時にでも使おう。ふっふっふ」

悪い笑みを浮かべつつ部屋の電気を消すため立ちあがり消すと真っ暗な暗闇が二人を襲う。カーテンからは月光が漏れている。カーテンを開け窓を数センチほど開ける。と、ひんやりとした夜風が部屋へと入り込んでくる。窓越しからでもくっきりと見える星たちは優しく輝いている。息を吹きかければ落ちてきそうなほどの星たちはいつ見ても飽きる事は無い。夏の大三角を探してみる。昔は見つけることができなかったけれど尋のせいで今では人並み以上に星、星座に詳しくなってしまった。そう言えば得意分野になっている事の大体はきっかけに尋がいつも居る気がする。つい、可笑しくないり笑ってしまう。トクン。と、暖かい鼓動が大きく一度だけ打つ。ふと、振り向いてみると寝ているはずの尋が月光に照らされながらこちらを微笑みながら見つめていたのだ。昔とは違って自分よりも大きくなり喉仏も出て大人の男性になっている。見つめ合う二人。時間にして二、三秒の事だったのに紫穂からすれば数十秒もの間見つめ合っていたような気さえしてしまう。言葉を出そうとしているのに上手く出せずにいると、

「寝ちゃってたね。ごめん。目が覚めたら真っ暗で悲鳴を上げようとしたんだけど紫穂が居たから安心した」

「安心って。てか、私の方を見てて笑ってなかった?」

恥ずかしさを紛らわすためなのか言葉に少しだけ鋭く棘のある声色になってしまう。が、尋は紫穂の言葉に何度か頷きながら立ちあがり窓際へと近づいてくる。紫穂の隣に座り視線こそ夜空へと向け、

「紫穂が夜空って言うか星空を見る時の顔?僕は結構好きなんだよね。なんか凄く幸せそうに見るでしょ。なんかその嬉しいって感情がこっちにも伝わってくるんだよね。だからなんか微笑ましくて笑っちゃってた」

「な、なによそれ・・・人の顔を見て微笑むとか気持ち悪いから他の人にはしない方がいいよ?」

はいはい了解しました。苦笑を浮かべつつ尋は紫穂の言葉に適当な相槌を打ち星空を眺めていた。先ほど気が付いた写真の事を言わなければいけない。と、分かっているけど、もう少しだけ、もうちょっとだけこの二人の雰囲気(くうかん)に浸りたかったため紫穂は口を閉じ尋の視線を追う様に星空へと向ける。

「星、凄く綺麗だね」

「だね。ただでこんな綺麗な自然に触れることができるって最高だよね」

「尋ってさ。もう少し雰囲気(ムード)とか大切にした方がいいよ?」

「本当の事しか言ってないし。それにムードを大切にするって紫穂と?どうして?」

「・・・っさいな!」

「痛いって。なんで急に怒りだすかな。ホント紫穂ってもう少し静かにしてればもっとモテルだろうにさ・・・でも、」

グッと握り拳を作り尋へと殴りかかろうとした瞬間、尋の笑い声が耳へと入ってくる。

「でも、そう言う飾らない紫穂が僕は好きだよ」

一体、どう言う意味で言っているの?それは女の子として好きだって言う意味なの?グッと喉の先まで出かかった言葉を飲み込む。きっと悪気があって言っているわけじゃあない。本気で尋は思い口にしている。何も計算のしていない天然発言。慣れていたはずの言葉、表情。だったのに今の言葉を聞いた瞬間に体中が火照ってきてしまう。二人で暗くなった部屋で天体観測をしているから?いつもとは違うシュチュエーションで戸惑っているだけ?様々な思考が紫穂の頭の中をぐるぐると高速で回る。ゴクリ。と、生唾を飲みいつもなら必死に押さえ飲み込んでいた本音(ことば)をつい、口にしてしまう。

「尋ってさ?私の事良く好きっていうけどそれってどういう意味で言っているの?」

「ん?」

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