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夏になる頃へ  作者: masaya
二章 from sky
66/112

10

「ここの食堂本当に美味しいですね!特にお茶が!」

「ち、ちょっと声が大きいかな?」

尋、御崎は食事を済ませサービスとして食後に提供される緑茶をすすりながら会話をしていた。尋の言葉に御崎はすかさず、食事もとっても美味しかったです。今まで食べてきた中で最高の定食でした。満足そうに頷くと尋も周りに店員さんがいないか心配しつつ頬笑みを浮かべていた。ここまで喜んでくれるとごちそうする側も気持ちがいいものだ。お茶を飲みつつ窓の外を眺めひと休憩しようと背もたれへともたれかかると御崎が咳払いをしたため視線を向けてみる。と、どこか恥ずかしそうに口を開いてくる。

「え、えっと・・・先輩のこの後の予定は・・・もしもなかったら・・・その・・・一緒に遊びませんか!」

時計に目をやると十二時を少し過ぎたあたりでまだまだ家に帰るには勿体ない。御崎の提案に尋は、もちろん喜んで。なんて言葉を返す。御崎も尋の返答に嬉しそうな表情を浮かべスマホを取りだす。慣れた手つきでこの辺りで遊べる場所を探しているのだろう。物珍しそうに眺めていると視線に気が付いたのか、御崎は首を傾げてくる。

「あ、いや。御崎ちゃんもスマホを使いこなしてるなって思って。最近はみんなスマホに変えてるでしょ?僕も友達の触らしてもらったことあるんだけどメールとか打つ時にさ、こう、シャッって文字を横にスライドさせて変換とかしなきゃじゃない?アレが難しくて断念しちゃったよね!ボタン連打でも文字は打てるらしいけどソレじゃあなんかダサいって言われてさ」

腕を組みつつ眉間にしわを寄せ、最近の若者が使っている機械は分からん。なんて一昔前の頑固親父のような雰囲気に御崎は口元に手を添え笑う。

「ふふっ・・・そう言えば先輩ってまだガラゲでしたもんね。言ってる事もお父さんみたいで面白いです」

「そうなんだよね。お金がないから機変出来ないってのもあるんだけど急いで八万円ぐらい使って変えるのもどうかなって思ってさ。これで事足りちゃうんだもん」

人差し指と親指で抓みぶらぶらと携帯を左右に揺らす。御崎も尋の言葉に頷きながらも、

「先輩の言っている事も凄く分かります。けど、スマホにしたら一気に世界が変わりますよ?ガラゲだと見れなかったPCサイトも見れますし暇つぶしにゲームだってできますし。それに漫画だって見れるんですよ」

「マジ?携帯で漫画見れるの?なんか凄い時代になったものだね」

「先輩、本当に年季の入ったおじさんみたいですよ。これ見てください」

笑いながら御崎はこの辺り一帯の地図を見せてくる。尋の携帯では出来ない芸当に驚いてしまう。

「こう言う風に色々と最近は文字を入力するだけで遊べる場所が探せれるんですよ。先輩もスマホにすれば良いのに。絶対に先輩はハマっちゃうと思いますよ」

嬉しそうに御崎は微笑みながら画面を自分の方へと戻しなにやら画面をスライドし始める。尋もとりあえず携帯でこの近辺で遊べる場所を探してみる。と、面白そうな場所を発見する。近くに遊具など貸してくれる総合レジャー施設があるらしい。最近できたばかりで地元民でもある二人も行った事がない場所であった。

「御崎ちゃん?ここはどうかな?」

液晶画面を御崎へと向けると御崎も驚いたように手に持っていた液晶を見せてくる。と、二人ともが同じ場所を検索していたのだ。尋の画面には文章だけであったが御崎の画面には色とりどりの写真が多く掲載されておりスマホの偉大さに少しだけ劣等感を抱いてしまう。

「あ、あの・・・でも・・・」

「ん?」

落ち込み下がっていた視線を御崎へと向けると先ほどよりも赤面した顔をこちらへと向けてきていた。

「せ、先輩はここでも良いんです・・・か?」

「あ、うん。御崎ちゃんこそここでも大丈夫?最近、建ったばかりだから人多いと思うけど?人混みが苦手だったら他の場所にするけど」

「ぜ、全然人混みとか大丈夫です!前から先輩とここに行けたら良いなって思ってて!凄く嬉しいです・・・あ、でも入場料1800円かかっちゃいますね・・・どうします?・・・やっぱりやめます・・・か?」

「でも、一回の映画を見ると思えば安いでしょう!映画は一回で終わりだけどここは入場さえしてしまえば遊び放題っぽいし・・・多分」

尋の言葉に御崎は満面の笑みで答える。じゃあ行こうか。二人は席から離れようとした瞬間に御崎のスマホが震える。机に置いていたため震動が尋にも伝わってくる。震える時間が長い所を見ると電話だろう。

「先に出て電話しててもらって大丈夫だよ。僕はお会計してすぐに出るからさ」

「あ、ありがとうございます。あと、ごちそうまでした」

笑みを浮かべ頭を下げると携帯を耳に当て外へと出ていく。お会計を済ませようとレジへ行くとどこかで見覚えのある姿が目に映る。レジを担当している男性は秋鹿尋だと分かっているのかニヤニヤと笑みを浮かべつつこちらを見てくる。

「あ、竹部さん」

「お前、気が付かなかったの?まあ、デートなら仕方ねーよな。それでとうとうお前って紫穂から身代りしたの?」

「身代りって。僕は紫穂と付き合ってもないしさっきの子はただの後輩です」

「ただの後輩なのにお前の一番好きな場所でご飯?それも奢るとか?これって絶対にデートだろ?てか、向こうは絶対にそう思ってるんじゃね?」

「そんなことないですよ。彼女には今日午前中にお世話になったからごちそうしただけです。竹部さんはどうしてここに居るんですか・・・って実家の手伝いですよね。夏休みなのにご愁傷様です」

「お前に対して久々に殺意を抱いたぜ」

苦笑しつつお釣りを手渡してくる。尋も悪戯っぽく笑いながらお辞儀を済ませ外へと出ていく。店内の快適さと違い外は夏だけあってジリジリと太陽光が肌を差してくる。左右を見渡し御崎を探してみると少し離れた場所に自動販売機がありちょこんと立ち通話をまだしているようだった。とりあえず話し声が聞こえない位置までなら近づいていいだろう。一度大きく背伸びを済ませ歩き始める。足音が聞こえたのか御崎は尋の方へと視線を向け何度か頭を下げてくる。尋も声には出さず両手を振り、気にしないで。と、伝えるとその数十秒後には御崎が小走りでこちらに向かってきたため尋も小走りで近づく。

「すみません・・・友達からでした」

先ほどのように陽気で明るいテンションの御崎ではなくどこかどんよりとしている雰囲気なきがしたため尋は控えめに、

「御崎ちゃん?大丈夫?電話で何かあったの?」

「あ、いえ。友達が彼氏に振られたらしくて・・・その電話でした」

「あれ!だったら今からでも友達の家に行ってなぐさめに行った方が良いんじゃあない?」

「で、でも・・・先輩と」

尋は御崎の肩を軽く叩く。御崎は驚きつつも尋の表情を見ると何とも言えない表情になり視線を少しだけ下げてしまう。御崎が見た尋の表情は優しく相変わらずの優しい笑顔だった。

「きっと御崎ちゃんに話しを聞いて欲しくて電話したんだよ。僕との予定なんて急遽決まった事だしさ。友達はきっと今、御崎ちゃんが必要なんだと思うよ。やっぱり先輩よりも友情を取らなきゃ駄目だよっ!電話でちょこっと話すよりも家に行ってお菓子買ってさ!友達大勢呼んでパーっと女子会でもしたら気が紛れる・・・わけないか。ははっ・・・今のは不謹慎だったね。ごめん。でも、僕はその友達の所に行ってあげて欲しいな」

「・・・どうして」

「ん?」

下がっていた御崎の視線は尋の目を見つめるように上へと上がる。互いに見つめ合う形となり尋は若干驚いてしまうが御崎は驚いた様子もなくずっと見つめている。気のせいか少しだけ瞳が潤んでいるようにも見えた。が、すぐに御崎は少しだけ後ろに下がり両手を後ろで組み微笑んでくる。

「どうして先輩ってそこまで優しいんですかっ!知ってます?一年の女子の中で先輩って結構上位に来るぐらい人気なんですよっ」

「マジ!」

「・・・よっし!分かりました!確かに先輩より友達を優先しなきゃだめですよね!」

そうそう。尋も御崎の言葉に同意するように笑いながら頷く。食堂からバス停まで徒歩数分と言う場所にあったため二人は歩き向かいだす。時刻表を見ると丁度あと数分で来るところであったため視線を道路の先へと向ける。と、バス特有の深いエンジン音が聞こえてくる。そろそろ来る事を知らせようと御崎の方へと視線を向けようとすると、御崎と視線が合う。

「ん?あ、そろそろバス来るよ」

「わ、分かりました!そうだ!友達に家に行くって言わなきゃ」

慌てた様子で御崎はスマホを取りだし文章を打ち始めようとしたが、何かを思いだしたかのように顔をあげる。

「てか、先輩も戻る必要はないんですよね?なんか申し訳ないです」

「いやいや。そんなの気にしないでよ!と、言うか友達の所に行って欲しいって僕が我がままで言った事だから。ははっ」

気を使わせないように御崎に軽い口調で返答する。御崎も微笑みながらスマホへと視線を戻すが、もう一度焦ったように視線をあげる。

「ん?どうしたの?」

「てん・・・えっと、あはは。やっぱり何でもないです」

「なんでもありそうな表情だけどどうしたの?」

尋の言葉に御崎はキュッと口を窄めたかと思えば

「て、天体観測は一緒に見ましょうね!」

御崎の恥ずかしそうな表情にまたもやつられ尋もまた顔を赤くし頷くことしか出来なかった。が、丁度よくバスも来たため二人は黙ったまま乗り込む。

3話で物語の食い違いを訂正させて頂きました。

・バス停で待っているはずが「病院に向かって歩きだす」と、意味不明な事になっていた辺りの食い違いを訂正させていただきました。読んで下さっている皆様にご迷惑をおかけしてしまったことを深くお詫び申し上げます。

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