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夏になる頃へ  作者: masaya
一章 恋の妖精と時々幽霊
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つられて御崎も照れくさそうにほほ笑む。と、軽い足取りで尋の少し前を歩き始める。鼻歌でも歌っているのだろうか?頭を小さく左右に揺らしているせいかまるで犬の尻尾のように髪の毛がふわふわと踊っている。口から音符でも出ているような無邪気な後ろ姿。たった一年、生まれた年が早いだけなのに妙に彼女の前では背伸びをしたくなってしまう。御崎のお陰か少しだけモヤモヤとしていた気持ちが晴れた気がする。ホント、自分一人の力で心のモヤモヤを晴らすことが出来ないんだな。なんて情けない感情も出てくるが素直に御崎に感謝しつつ空を仰ぐ。めいっぱいに鼻から空気を吸い両腕を空へと突き上げてみる。夏の青い空気の香りがする。気分も転換でき視線を空から下げて見ると御崎は少し前で両手を後ろ手組み待ってくれていた。

「あ、ごめん!急に立ち止まっちゃって」

「気にしないでくださいっ。そう言えば!私は結構この辺りでみんなとご飯を食べたりしているんですけど、先輩がテラスでお昼ごはんって珍しいですよね?それとも私がいつも見かけてなかったのかな?」

そうだとしたら不覚。なんて思っているのか難問の答えでも探しているような表情を浮かべるが尋もすぐに口を開く。

「いや。御崎ちゃんが言う様に久々に来たかな。ここって昼になるともの凄く人が多いでしょ?人が多い場所でご飯を食べるのは苦手なんだよね」

そうなんですか?みんなと一緒に食べたらおいしいですよ!と、少しずれた返答が返ってきてしまう。まるで自分にはお昼ごはんを食べる友人が少ない可哀想な奴。なんて言う風に受け取られた訳じゃあないだろうか?不安を覚えてしまうがそこで強く否定をしてしまうと逆効果になりかねないためその辺りは恐怖もあったけれど流すことにした。笑い誤魔化しつつ歩き始める。と、御崎もつられるように歩き始める。

「先輩は明日の妖精探検で妖精を見つけたいですか?」

「そうだね。どちらかと言えば御崎ちゃんと一緒で夜の学校に侵入できるって言うだけで嬉しいかな。やっぱり青春っぽいもんね。けど、まあ、僕って貧乏性だからさ!どうせ侵入するなら妖精も見たいかも」

尋の言葉を聞くなり御崎も言葉に同意するように、確かにどうせなら見つけたいですよね!だったら私も先輩と一緒で貧乏性なのかもしれませんね。と、笑ってくる。一人で歩いていた時に比べ比較できないほどに気分は晴れやかになっており自動販売機に付いた頃にはいつも通りの尋に戻っていた。御崎が財布を開こうとした瞬間、

「あ、」

「ん?どうかしましたか?先に買われますか?」

「あ、違うんだ。僕にここは奢らせてもらえないかな?ジュース」

それは嬉しいですけど。どうしてですか?と口には出さないが御崎の表情を見るとそう言っているように感じたためすぐさま提案した理由を口にする。

「急に言いだしてごめんね。えっと、なんかね。ついさっきまでなんかモヤモヤと色々と考えちゃってて。けど、御崎ちゃんが話しかけてきてくれたでしょ?それで話しをしていたらなんか胸にかかってたモヤモヤが晴れて。御崎ちゃんからしたら何もしていないし急にこんな事を言われて驚くし気持ち悪いかもしれないけどそれでも奢らせて欲しいって思ったんだ」

尋の言葉を聞いた瞬間に御崎は首を振りつつ頭を下げてくる。

「気持ち悪いなんて思ってませんし!それに先輩がモヤモヤしていた時に話しかけちゃってごめんなさい!」

「い、いやいや!だから話しかけてくれて僕は嬉しかったんだって!」

お互いに頭を下げ合い第三者から見たら一体二人はなに頭を下げつつ焦っているのだろうか?なんて思われてしまうだろう。そんな事を思ってしまうとつい、可笑しくなってまた笑ってしまう。それは御崎も同じだったようで笑い声が聞こえてくる。顔を上げると示し合わせたかのように二人が同時に顔を上げ見つめ合う形になってしまう。

「わ、分かりました!じゃあ、私も先輩と話しができて嬉しかったのでお互いに奢りあいっこしませんか?」

「ははっ。それってどうなのよ。でも、御崎ちゃんの気持ちも嬉しいし。じゃあ、奢りあいっこしようか」

「はいっ!」

そう言うと御崎はお金を入れるとどうぞ。と、言わんばかりに自動販売機の前へと招いてくる。迷うことなくブラックを購入すると何故か驚きにも似た声を発してくる。驚かせるような事をしたつもりもないが御崎は小さく拍手を向けてくる。御崎曰く高校生でブラックコーヒーを飲めるのは大人らしい。彼女らしい言葉にほっこりとしてしまう。お返しと言わんばかりに尋もまたお金を入れる。

「好きなものをどうぞ!」

「ありがとうございます。私は伊右衛門で!へへへ。なんかいいですね。奢りあいっこって」

「ははっ。結局御崎ちゃんにお金を使わせちゃったけどね」

気持ちが大切なのでそんなこと気にしないでくださいね!と、尋に気を使ったのかどうなのか分からないけれど伊右衛門を上下に振っていた。相変わらず一つの動作一つ一つが微笑ましい。御崎に買ってもらった缶をポケットに入れつつ財布をかまっていると立ち去ろうとしていた御崎が振り向き直しこちらを見てくる。

「あれ?先輩はもう一本別に飲み物買うんですか?」

「いや。雨谷たちに頼まれてるのを買うんだよ。御崎ちゃんは友達待たせてるんでしょ?だったら先に戻ってていいからね!コーヒーありがとうね!」

手を振り見送ろうとすると御崎は携帯をかまいだしすぐに視線を尋へと向けてくるなり、

「友達にはメールして先に食べて貰うことにしました!私も運ぶの手伝いますよ!」

そう言うとガッツポーズしつつ肩で息を吐き凛々しい表情になる。

「ははっ。ありがとう。じゃあ、あと四本買うから一本ほど持ってもらおうかな」

何本でもかまいませんよ!なんて言いつつ腕まくりする真似をしてくる。頼まれたものを買い御崎に渡し雨谷たちが待つ場所まで歩き持っていくと雨谷が手を振ってくる。一瞬、紫穂がこちらを見た気がしたのだけどすぐに視線を逸らし止まっていた手を動かし弁当を食べ始める。若干怒っているようにも見えたため一体自分がいなかった時に何が起こったのかとても気になってしまう。が、そんな事を大勢の前で聞くわけにもいかず机の上に頼まれていた飲み物を置く。雨谷たちを見てみてもいたって先ほどと同じ雰囲気で別に張りつめている様子もない。紫穂が怒っているようなのは気のせいだったのかもしれない。そんな事を思っていると雨谷が口を開いてくる。

「一人で行ったのに返ってきたら女の子を連れてくるなんてイヤらしいわっ!」

「なんでそんな口調なんだよっ!」

「あははっ。じゃあ、私は友達の所に戻りますねっ!雨谷さん!明日の妖精探検!楽しみにしています!」

「おう!任せときな!」

一度、深く頭を下げると友達が居るであろう場所まで戻っていく。しばらくの間、尋は御崎の後ろ姿を眺めていた。他意はなくただ、なんとなく見ていただけ。けれど、周りはそうとらないことが多い。高校生と言う生き物は恋愛脳と言ってもいい。いや、雨谷圭がそうなだけかもしれない。しばらくすると姿が見えなくなったため視線を戻すとニンマリとイヤらしい笑みを浮かべる雨谷、竹井が尋を見つめてきていた。香織は困り顔で笑いつつ、紫穂はどこかムスッとしている表情でご飯を食べ続けている。男子二人の表情には無視しつつ席へ座る。と、雨谷が待っていました!なんて言いたそうな表情を作り前のめりにこちらへ視線を向けてくる。

「おい!なんかいい感じだったな!」

「いい感じって」

「照れるな照れるな!はっはっは!おいちゃんはなんか嬉しいぞ!みんなに春がきている気がする!感じます!風を!!」

変に高くなった雨谷の声が夏の空へと吸い込まれていく。きっと明日は楽しみにしているイベントがあるため変なスイッチが入ってしまったんだろう。ため息をつきつついつもの事だ。なんて思いながら冷ややかな視線を送りつつ何気なく紫穂の方へと視線を送ってみるとどこか戸惑っているような表情を浮かべていた。

「ん?紫穂?どうかした?」


こんばんは。今年中に一章は終わらせたいと言ったのに無事終わるか少し不安です。物語を書いていると次々と書きたい出来事が出てきて収まりきらなく、恐ろしいです。出来る限り、頑張りつつ楽しく書かせて頂こうと思っているのでよろしくお願いします。物語は夏真っ盛りですが、こちらでは明日はクリスマスイヴですね。ショートケーキでも買って食べようかな!(^ε^)♪・・・一人で(ノε`)

皆さんにも素敵なクリスマスが訪れますように(^o^)vそれか私と一緒に一人クリスマスを過ごしましょう。必要なのは孤独に耐えるハートとショートケーキです。(※ホールだと一人で食べきれないため)

( ̄ー ̄)・・・ふふふ

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