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人の心はどうして簡単に分からないのだろう。いや、分からないわけではない。人が思う心が特に分かる事もある。それは、悪意だ。人と言う生き物は分かりたくない事ばかり分かってしまうもの。それは、きっと仕方がないことなんだと思う。嫌なことが分かってしまうから人は人を愛し優しく出来るのだろう。私はそう思う。そう思わなければやっていけない事も知っている。優しい言葉につい、反発してしまって彼をいつも困らせ顔にしている事も分かっている。けれど、彼は困り顔の後に笑みを浮かべてくれる。ちょっとした態度も怒らずに受け止めてくれる。春の風のように優しくほんのり暖かい。笑顔を思いだすだけでつい、私もほほ笑んでしまう。ふと、外の景色を眺めて見ているとゆらゆらと気持ちよさそうに夏の雲が風を浴び空の海で泳いでいる。きっと、彼も同じように空を見て空に浮かぶ雲と同じように風に揺られて昼根ができたら最高だね。なんて言うんだろう。また、可笑しくなり笑いそうになってしまう。気がつかれないように口元を手で隠し微笑む。こちらを見ていないから、きっと私の表情の変化に気が付いていない事ぐらい分かっている。けれど、どうしてか感情が素直に表現できない。いつからこんな風になったんだろう?ふと、考えてみるがよく思い出せない。別に記憶喪失でもなければ昔にトラウマがあったから忘れてしまった、思いだせない。と、言うことではない。単純に忘れてしまったんだと思う。昔はもう少し素直に感情を表に出せていたと思う。中学生頃からだろうか?こう言う風に彼の前で素直になれなくなったのは。それでも、別に今の関係に不満はない。優しい幼馴染の側に居られるだけで幸せな事ぐらい分かっている。感謝もしている。いつも見ている背中を見て一体私は何を思うのだろう?よく分からない気持ち。初めて幼馴染意外の男子と仲良くなろうとしている私。きっと彼は素直にこの事を言えば喜んでくれるだろう。いや、もしかしたらヤキモチでも焼いてくれるのかな?僕のポジションは渡さない。なんて。そんな事を考えていると顔が火照ってきてしまう。一体、私は彼にどう思ってほしいのだろうか?よく分からない気持ち。自分でも分からない気持ちだけど、自分で見つけなければいけない気持ち。けど、きっとこの気持ちが分かるにはそう時間は必要ない気がしてならない。これは予感であり願望なのかもしれない。ごちゃごちゃ考えるなんて私らしくないな。そう思ったのか彼女は一度思いきり背伸びをしてみる。と、前の席から彼が不思議そうな表情でこちらを見つめてきていた。きっと、また私は思ってもいないことを口にしてしまうんだろう。けど、彼もまた全て分かってくれて困った表情を作り笑ってくれるんだろう。何度も繰り返しているやり取り。けれど、色あせることのない私たちだけができる特別。落ちの分かっているやり取り。けれど、私はそれがとても大好きだ。
一章を長々と続けてしまってすみません。今年中にはなんとか一章は終わらせ二章に突入したいと思っておりますのでよろしくお願いします。




