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夏になる頃へ  作者: masaya
一章 恋の妖精と時々幽霊
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何とぼけたことを言っているの?そんな軽い口調が聞こえてきたため視線を向けて見るとからかう様子もなく嘘を言っている表情でもない。ただ、本心を言っているようだった。血の気が引いてしまうとはこの事だろうか?体全体の体温が背中の真ん中あたりから引っ張られ外に出て行ってしまう感覚が襲ってくる。と、同時に背中全体に寒気が襲ってくる。妙に鼓動も早くなってきた気がする。息を飲み視線を校庭へと向けて見るが横断し終わったのかそこには誰の姿も見つけることが出来なかった。少しだけ身を乗り出しした辺りを探してみたが先ほどのワンピースを着た女性はどこにも見当たらなかった。

「ちょっと、そこまで身をのりだしたら危ないって」

首元を掴んでくると体を戻すように引っ張ってくる。身をまかすようにそのまま引っ張られ教室へと体が戻るが意識は未だに校庭の方へと向いていた。見間違いにしてはあまりにも現実的過ぎであったため未だに紫穂の言葉の全ては信じられずにいた。確かに自分んの目で見た。が、隣に居た幼馴染は見ていないという。これは一体全体どう言うことだろうか?丁度、女性が横断し終わった辺りで紫穂が校庭へと意識を向け見た時にはいなかったというのはどうだろうか?しかし、二人ともほぼ同時に校庭へと視線を向けていたはずだ。そうだった場合は気がつかなかった。と、言うのには無理がある。だったら一体何だというのだろうか?思考を巡らせているとボソリと紫穂は独り言のように、

「もしかしたらそれって人間化した妖精とか?漫画とかでよくあるじゃん!小さな妖精が人間とコンタクトを取るために人間にばれないように自分も人間になって接触してくるとかさ!」

「はぁ?」

とんでも解答につい、頭の上から甲高い声が出てしまう。何を言いだすかと思えば妖精が人間化した姿。紫穂らしからぬ発言。いつもならそう言ったファンタジー思考はすぐに否定する派でもあるのに今日に限ってなぜそんな事を言うのか不思議でならなかった。けれど紫穂は通常運転でありまるで本気でそう思っているかのような夢を信じている子供のような笑みについ、頭を数回ほど撫でてしまう。自分でもどうしてそんな事をしたのか分からない。けど、懐かしい姿(ひょうじょう)につい手が勝手に動いてしまう。けれど、紫穂も驚いて動けなかったのか単純に仕方なくなのか分からないけれど尋の突発的な行動に身を任せ表情こそムスッとしていたが受け入れ黙り撫でられていた。頭を撫で終わると、女子の髪を急に触るのはルール違反だからね!と、言い手櫛で乱れた髪をもどしつつ悪態をついていた。その姿も懐かしくつい、微笑んでしまう。つられて紫穂も恥ずかしそうに微笑んでしまう。

「でも、本当に尋が見た気がしたのはなんだったんだろうね?」

「どうなんだろう?でも、紫穂が見てないって言うなら見間違い?いや、アレは見間違うことなんて確実にないと思うけど」

「まあ、気のせいなら気のせいでいいし。そうじゃあなかったら学校でまた見かけるでしょう」

勢いよく背中を叩くと自分の席へと戻っていく。尋もそのまま立っている意味もなく改めて一度校庭へと視線を向けて見るがそこには当然のように誰の姿もなかった。ふと、自分の席へと戻り一息つくと雨谷が言っていた言葉を思い出す。そう言えば紫穂に対して好意を寄せている男子が居る。その手助けをするために何らかの作戦を練ると言っていた。改めて雨谷は紫穂が喜ばないことをしようとしている。しかし、男子側はきっと雨谷の手助けはとても必要でありありがたいことであることには間違いないだろう。それに、一番近くに居ると言っても過言ではない尋の力を借りれるなら百人力だろう。男子二人ともに頼られるのは間違いがないだろう。友人に頼られる事は悪い気もしないし寧ろ頼ってくれるなら微力ながら力になりたいとさえ思う。しかし、相手が冷血で冷淡な冷瞳の平木紫穂ときた。仲が良すぎるから、近すぎるからこそすぐに色々と勘づかれてしまうことが多い。極力ばれないように配慮したところで配慮し過ぎでぎこちない。と、違和感を持ちお得意の鋭い睨みを利かせてくる。そうなれば最後。白状するまで鋭い視線は続いてくる。後々の事を考えているだけで頭痛がしてくる。しかし、それでも、友人の為に一肌脱ごうと決心したのか一度大きく息を吐き体を後ろへと向ける。

「ん?どうかした?」

特にすることがなかったのか学校掲示板を開いていた。決心したもののいざ紫穂の顔を目の当たりにすると上手く言葉が出てこない。が、いつもよりテンションが高い紫穂が口を開いてくる。

「てか、尋は恋愛とか・・・」

言葉を続けようとした瞬間、雨谷の声が耳へと入ってくる。振り向くと違う教室に行っていた雨谷が戻ってきたのか手招きをしていたため紫穂に謝罪を向け座っている場所まで向かう。と、妙にニヤニヤとした嫌らしい表情を向けてくる。また、何か変なことでも言うのだろうか?また厄介事でも頼まれてしまうでは?なんて思ってしまい露骨に表情に出てしまっていたのか雨谷も苦笑いをしつつ両手を合わせ謝罪のポーズを取る。雨谷もしかし、雨谷の気持ちも分からない訳でもないので机の上に腕を置きしゃがみ込む。

「んで、一体何でしょうか?って言うのもアレだけどさ」

「ま、まあ。そうなんだけどな。どうしたんだよ?露骨に嫌そうな表情になってんじゃんよっ!元気出していこうぜ?やっぱりイベントごとって言うのはテンションが低くても無理矢理あげて楽しまないと損だぜ?」

確かにそう言われればそうかもしれない。きっと、紫穂と竹井のくっつかせ作戦の協力者では無く妖精探検参加者。と、言うだけならこうもならなかっただろう。頼まれたら力になりたい。紫穂にばれたら怖い。二つの思考がせめぎ合っているせいでどうも心の底から楽しもう。そう言う気分にはなれない。

「まあ、お前の気持ちも分からないではないよ。けど竹井の気持ちも汲んでやってくれ。もしも、お前に好きな人ができたらオラ!がんばんぞ!」

「雑なモノマネやめて!それで、どうしたの?」

尋の質問に一瞬、固まってしまうがすぐに肩を叩きだしながら口を開く。

「そうだった。竹井に今日の昼休みに作戦会議をするって伝えに言ったら、なんとアイツ!昼休みに一緒にご飯食べる約束してるらしいぞ?」

一瞬、誰とご飯を食べる約束をしているのかまったく見当がつかなかった。が、すぐにその疑問は消え去る。冷静に考えれば誰と一緒に昼ご飯を食べる約束をしているかなんて明白だ。この話の流れからして紫穂とご飯を食べる約束に決まっている。尋の誰と約束をしたのか気がついた表情を見て雨谷もニンマリとご機嫌な表情を浮かべ腕を組む。

「そうなんだよ。アイツちゃっかりと約束つけてやんの。なんか俺が言うのもなんだけど、一人でちゃんとやることはやってんだよな。これなら俺たちが出る幕もないかもれいない・・・」

「だ、だったら」

食い気味に言葉を口にした瞬間にその事さえ分かっていたかのように人差し指を自分の口元へと持っていき最後まで話しは聞いてくれ。と、言わんばかりに口元に添えた指を左右に振りつつ、

「そう思ったんだけど。てか、そう言う風に言ったんだけど俺たちの気持ちが嬉しいし万全の状態で告白に向かいたいからお願いされたんだよ。だから、昼休みじゃあなくて放課後に召集することになりました。と、言うことを伝えたかったのです。どうも有難う!!」

そう言いながら雨谷は握手をしてくる。

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