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夏になる頃へ  作者: masaya
一章 恋の妖精と時々幽霊
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いつもと同じような景色だったはずなのに教室はいつもより灰色が多く混ざったようなどんよりとした曇り空のように映る。別に教室の中に居るクラスメイト達が暗い訳でも何か事件があったからでもない。と、言うよりもみんないつも通りの通常運転でありいつもよりも灰色を感じているのは尋だけである。外へ視線を向けてみても相変わらずの夏らしい青々とした快晴につい、視線を逸らしてしまう。失恋と言えど時間にしてまだ数時間しか経っていない。そうそう、テンションもすぐにはいつも通りになれなかった。

「はぁ・・・」

特に考える事もなくただ、外の景色を眺めつつイヤフォンを両耳につけ音楽を聴いていると右側のイヤフォンが外されクラスメイトの話し声が鮮明に聞こえてくる。ふと、視線を向ける。と、そこには香織が悪戯っぽい表情を浮かべ席に座りつつイヤフォンを耳へとつける。

「おはよ。ひろちゃんは相変わらず朝は音楽を聴いてるんだねっ」

「おはよう。うん。僕が教室に来る時は殆どみんないないからね」

「あはっ。ひろちゃんいつも早いもんねっ!」

気を使ってくれているのか、それとも昨日の事なんてもう忘れてしまっているのか香織はいつも通りの香織であった。それはきっと尋にとってもありがたい事でありそう言うことは大体男子からするべきではないだろうか。なんて古臭い考えを抱きつつも少しだけではあるけど、灰色の景色に華やかな色が浮き出た気もした。そんな事を思っていると丁度、聴いていた曲が終わり新しい曲が流れ始める。その曲が流れ始めた瞬間、尋は咄嗟に次の曲へ飛ばそうとしたが焦っていたせいかすぐに飛ばすことができなかった。恐る、恐る香織の方へと視線を向けて見る。と、過去(むかしのこと)を思いだしたのか懐かしそうな表情を浮かべうっすら笑みを浮かべていた。

「懐かしいね・・・楔。中学の頃ひろちゃんもの凄く奥華子にハマってたもんね」

「歌詞が・・・好きだから」

「でも、最近は歌詞が無いのばかり聴いてなかったっけ?なんだか新鮮だし懐かしいね。私も久々に奥華子の曲聴こうかな」

そう言うと香織は付けていたイヤフォンを机の上へと置くと自分の席へ行き鞄から教科書など取り出す。どうしようかと迷いつつも片側のイヤフォンは机に置いたまま天井へと視線を向けつつ、教室の天井って結構汚れてるんだ。なんて咄嗟に取り繕った言葉を心の中で口にする。いつもなら気にならない二人の間の沈黙も今回ばかりは気になってしまい、いつも以上にソワソワしてしまい視界を色々な所に向けてしまうきっと周りから見たら変な人。と、映っているだろう。なんて分かっていてもどうしても落ち付くことができないでいた。香織も明らかにオカシイ尋の動きに最初は驚きつつも笑いながら近づいて来ると肩を二、三回ほど叩いてくる。

「ひろちゃんってばっ!そんなにオドオドしなくても大丈夫だって!昔みたいないつも通りの感じでいいよ。と、言うよりそうじゃないと嫌だよっ」

ニシシ。なんて子供っぽい笑顔につい、ありがとう。と言葉(ほんね)が出てしまう。その言葉に数回頷き親指をつき上げこちらへと向けてきたため尋も真似をするように同じポーズを向ける。と、後ろからノートのようなもので頭を叩かれたのか綺麗な空気の破裂音が教室内を覆う。まりにも大きな音がしたため痛み以上に驚きの方が強く振り向くと叩いた本人も音に驚きを隠せないようにこちらを見ていた。が、二人の視線が合った途端に互いに笑いだしてしまう。

「ごめん!いつものようにからかいを込めて頭を叩いたら思った以上の音が出て驚いてしまった・・・頭大丈夫か?」

「大丈夫だけど。てか、僕も痛みよりも驚きの方が強かったし」

謝罪の言葉を向けつつ雨谷は尋、香織の前へ腕組をしつつ歩いてくるなりニヤリ。と、不敵な笑みを浮かべる。その笑みは何度見たことだろう。いつもこうやって含み笑いをする時は決まって何か重要な事を言う時が多い。そのため香織はいつも通りの表情で見つめていたが、尋の表情はどこか変に強張ってしまう。心の隅で少しだけ雨谷が言いそうな言葉に気が付いてしまったからである。きっとそれは自分が失恋してしまったことですっかりと頭の片隅に追いやってしまっていた。喉の奥の辺りから熱い空気のかたまりが押し上げられてくる。グッと出かかった言葉を無理矢理呑み込もうとするたびに胸の奥の辺りがチクリと痛みを覚えてしまう。その言葉を聞いたところでどうしようも出来ない事ぐらい分かっている。けれど、直感的に圭が言おうとしている言葉を聞きたくはなかった。が、願いもむなしく雨谷は、素晴らしい話題であり幸せを祝福するような明るい口調で

「昨日、竹井から連絡があってさ。ちみたちの幼馴染でもある平木紫穂といい感じと言う報告がされやした!はいっ!拍手!!」

朗報と言わんばかりに拍手をし始める。つられるように香織もパッと明るい表情になり手を叩き始める。幼馴染の幸せを喜ぶことはいい事だ。それは分かっている。けれど、何故か心から喜んで拍手ができなかった。少しの変化に気が付いた雨谷がニヤリと笑いながら肩を組んでくる。

「まあ!確かに幼馴染二人が先に彼氏を作って寂しい気持ちも分かるけどな?でも、大切な幼馴染に大切な人ができるって素敵なことだろう。だったら、素直に人の幸せを妬んだりしなくて素直に喜んでやれよ!なっ!」

「妬んでは無いけど・・・そ、そうだね。紫穂にも幼馴染(ぼくら)よりも大切な人ができたんだもんね。紫穂にも彼氏ができたのか」

考え深く言葉を口にしていると雨谷は少しだけ険しい表情を作ったため二人ともが首を傾げると組んでいた肩から離れまた、腕を組みつつ

「いや!まだ、付き合っては無いらしい。でも、ずっと前からデートしてほしいって言っててそれでも断り続けられてたんだって。だけど・・・昨日やっと二人で会ってもらったらしくて。それもいい感じだったらしい」

雨谷の言葉を聞いた瞬間に二人が歩いていた場面を思い出してみるがそこまで楽しそうには見えなかった気がした。が、それはたまたま二人が会話をいしていない場面を見ただけで他の場所では違ったのかもしれない。そう言い聞かせつつでてきた疑問は口にせず黙り雨谷の言葉を聞き続けていると、ふと、疑問が出てきたため質問をしようとした瞬間に香織が口を開く。

「わかった!それで、いい感じっぽいから妖精探検の時にペアにするために私たちにも協力をして欲しいってことでしょ?」

ご明察。香織の言葉に雨谷は人差し指を突き出しつつ含み笑いするとポケットから小さなメモ帳を取りだすとそこには事細かく学校の見取り図のようなものが描かれていた。その見取り図を見た瞬間につい、妖精発見に対する情熱が大きいということが分かり驚いてしまう。雨谷は何事にも全力でやる。遊びでも手を抜かない。普段がおちゃらけているせいでそう言った格好良い一面を忘れてしまっていた。ばれないように香織の横顔を見て見ると当然のようにキラキラとした瞳で彼氏を見つめている姿に何故か自分も諦めから来るものなのか微笑んでしまう。

「んで、俺はとても素晴らしいことを思いついたわけですよ。やっぱり圭ちゃん最高ですね」

「自分でちゃんづけって・・・怖いよ」

「あははっ。それで素晴らしい事って?」

ふふん。なんて鼻で笑うとポケットから二折にされたプリントを出してくると机の上に広げる。

「学校行事許可書?なにこれ」

「いやな!やっぱりこのご時世に夜不法侵入なんて危険な橋を渡るには危ないと思うんだよ。だからな?天文部の力を借りて夜、学校の屋上で天体観測をします。って学校側に提出するわけよ。てか、してきた。これで天体観測をするって名目で夜の学校に居続けることができるわけよ」

「凄い!確かに不法侵入は危ないもんねっ!でも、ホントそう言うところ格好良い!」

両手を合わせつつ尊敬の眼差しを雨谷に向ける姿は可愛くいつまで見ても飽きないだろう。けれど、不意に香織の姿を視界から外してしまう。これ以上見ていても自分が虚しくなることが分かりきっているからである。しかし、雨谷の行動力は素直に感心してしまった。自分が主催したからには参加者には少しでもデメリットを無いようにする。そう言う考えで動いていなければきっと思いつかないだろう。いや、普通の人は思いつくのかもしれないけれど、少なくとも尋には自分の事でいっぱいいっぱいで思いつかなかったことだった。

「でも、顧問の先生とかが参加しなきゃなんじゃないの?」

「それも了承済み。天文の先生はそう言うところルーズで俺がちゃんとしますから任せて下さい!って言ったら信じてくれた。やっぱり日ごろの行いって大切なんだよな」

うんうん。と笑いながら自分の日ごろの行いの良さを噛みしめるように頷きだす。改めて許可書へと視線を向けた瞬間につい、声が漏れてしまう。

「はっ!?天体観測は明日・・・明日開催なの?!唐突すぎない!」

「はははっ。恋とイベントと言うものは唐突に起きるものなのだよ。決められた恋なんてしたくない!」

「そ、それにしても唐突すぎるでしょ・・・心の準備が・・・。てか、雨谷ちょっとテンションが変になってるって!言ってる事も意味分からないし!」

「心の準備ってなんだよ!それにこれは決定事項だから!んで、竹井と平木のくっつかせ作戦会議は昼にするからよろしく。香織には後で俺から伝えるから!まあ、許可が下りたのがついさっきだったから突然の報告になったけどとりあえず楽しもうぜ!一応、スマホ持ってる奴らにはちゃんとした文章を打って改めて送るから。お前も早くスマホに変えなさい!いい加減流行に遅れるぞ?」

からかいつつも上機嫌な雨谷は他の参加者にも送る文章を打つためか、隣のクラスに居る竹井に報告をするためか教室を後にする。ポツンと二人きりになってしまいお互いに自然と顔を見合わせる。と、

「やっぱり、雨谷って凄いね。僕が勝てないわけだ・・・あ」

「ん?ふふっ・・・ひろちゃんもひろちゃんの良さを分かってくれる人はきっと出てくるから安心しなよっ!あと、私たちが裏で工作すること紫穂にはバレない方がいいよね?」

「そ、そうだね・・・やっぱり昨日の事もあるし・・・」

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