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夏になる頃へ  作者: masaya
一章 恋の妖精と時々幽霊
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世界が終わりを迎える最後の夜に誰と一緒に過ごしたい?ふと、何故か思いだしてしまった昔の言葉(おもいで)。普段ならきっと思いだすことさえないであろう言葉を何故急に思いだしてしまったのだろう。蒼白い月光が部屋を照らし涼しい夜風が部屋へと吹きこんでくる。夏の風物詩とも言える不格好な手作りの風鈴がぎこちなく夏を感じさせようと懸命に風が吹くたびに音を奏でている。自然と視線は手作りの風鈴へと視線を向ける。何故かその風鈴には短冊にも似た紙が括りつけられている。小学生の頃に貰ったものでありその時には短冊が括りつけられているのが当たり前だと思っていた。が、そうではなかった。それはプレゼントしてくれた紫穂と香織の創作(アレンジ)だと知った時は嬉しくどこか胸の奥の辺りがくすぐったかった。そんな昔の思い出を浸りながらそっと風に揺れる短冊を撫でてみる。裏表にはひらがなで文字が書かれている。ふと、文字を読もうとした瞬間にスッと静かに扉が静かに開く。ドアの隙間から廊下の灯りが入り込む。と、黙ったまま紫穂が部屋へと入ってくる。いつもなら、部屋暗くして何スカしてるの?なんてお気楽に言葉を向けてくるが今回は何故か言葉を発することなく静かに床へと座る。

「ど、どうしたの?紫穂なんか元気なくない?」

「・・・ん?いや。なんか月に照らされて黄昏てる尋って意外とカッコいいんだなって思ってさ!」

似つかわしくない発言に尋も首を傾げてしまう。一体全体どうしたというのだろうか。紫穂に褒められることがあまりなく罵倒されたり注意されることが多いため素直に喜ぶ事も出来なかった。嬉しい、ドキドキする。と、言った甘酸っぱい感情よりも心配と言う感情が表へと出てきてしまい窓を閉め部屋の電気をつける。と、暗闇から急に明るくなるものだから目を細める紫穂の顔が面白くつい、笑ってしまう。笑い声に馬鹿にされていることが分かったのか脛を何度か突いてくる。

「尋ってたまに私の顔を見て笑うけどアレは失礼だから!急に女子の顔を見て笑うとか最低!」

「大丈夫!紫穂ぐらいしか顔を見て笑わないし!」

きっぱりと自信を持っていうものだから余計にイラついたのか近くにあったクッションを足元へと投げてくる。いつも通りの紫穂を装うとしているが演技である事はバレバレなため尋はため息をつきつつ同じ目線になるため床へと腰を落とす。と、紫穂もこちらへと視線を向けてきていたせいか視線が合うが尋はまったく動じることなく紫穂の方が視線を逸らしてしまう。自分がしている時は気が付かなかったけど、視線が合った時すぐに逸らされると意外と何とも言えない感情を覚えてしまうな。なんて思い香織に対して心の中で謝罪の言葉を告げる。クスリと微笑む尋に対して疑問を抱いたのか首を傾げながら、

「どうかしたの?」

「ん?いや。なんかさ。僕って香織の事好きでしょ?いつも香織と視線が合うと目を逸らしちゃうことが多くてさ。だから、悪い事をしていたなって思ってさ。やっぱり自分がされないと分からないことってあるもんだね。この世の中はよく出来てるよ」

腕を組みながら頷いていると紫穂は先ほどの表情よりも少しだけ砕けた優しい笑みを向けてくる。微笑ましい弟でも見ているような慈愛に満ちた表情にも見える。

「尋って本当に香織の事が好きなんだね」

「まぁね。でも、今まで凄く!本当に好きだったんだよ?嘘も偽りも全くなく大好きだったんだ。・・・けどね」

「けど?」

次の言葉を言おうとした瞬間、咄嗟に喉まで出かかった言葉を飲み込んでしまう。呑み込むというよりも大げさに口元を両手で多い無理矢理に言葉を飲み込む。紫穂は背を向けていたためすぐには気が付かなかったが香織がビニール袋を持ち部屋へと入って来たのだ。数秒遅れて紫穂も気が付き片手を上げ、よっ!なんてお気楽な挨拶を済ましていた。香織も笑みを向けながら開いていた片手で挨拶をしつつ手に持っていた袋を机の上に置きベッドへと腰をかける。視線の先が丁度香織の膝辺りだったため顔を赤らめながらも生足を見てしまう。これも男の性と言いましょうか。好きな女性が白いワンピースを着てこられて丁度視線の高さに真っ白な肌の生足があった場合自然と目が行ってしまうのは仕方がないことじゃあないだろうか。そんな自己正当化しつつ見ていると思いのほか重い衝撃が腹部へと襲ってくる。余りの衝撃に鈍い声が出てしまう。と、すかさず紫穂の方へと視線を向けるとジトッとした殺意さえこもっていそうな表情で睨みつけてきていた。針のような視線とはこの事かも知れない。愛想笑いに笑顔を向ける。と、

「香織!尋が生足を舐めるように見てたよ!」

「えっ!ひろちゃんやらしー」

「ち、違わないけど!!でも舐める様には見てないよ!!こら!紫穂!いい加減な事を言って僕の評価を下げるなよ!舐めるように見てないから」

必死に言い訳をしているように見られてもそれだけは本意ではない。と、香織に分かってほしかったのか自然と立ち上がり体全体を使い否定をしてしまう。唐突に立ち上がり体全体で否定するものだから二人ともが目をまんまるにして尋を見上げていた。あまりにも二人が驚いている表情で見上げるものだから自分自身が始めに冷静になってしまい、両手をぶらぶらと振りながら何もなかったように椅子へと腰をかける。と、二人が顔を合わせながら笑いだす。尋はまったくと言っていいほど笑えずただ、オドオドしていると、

「分かってるよ!紫穂もからかっただけだって!」

「ちょっとは本気で言ったけど、舐めるようにってのは言い過ぎたかも。ごめんね。でも、絶対に香織の生足をジロジロ見てたのは確かだよ!」

「ジロジロ見ていたってなんか響き的によくない!見蕩れていただけだって!」

「見蕩れていたって。ひろちゃんいつも学校で私たちの生足見てるじゃん!」

笑いながら香織は手を叩いてくる。その叩かれる手が妙に熱く感じてしまう。確かに考えてみると毎日学校で生足は見ている。が、女子からストレートに毎日生足を見ている。とか言われてしまうとどう反応をしていいのか分からず笑うしかなかった。すると、その幸せ空間を遮るように紫穂が口を開いてくる。

「そう言えば、香織から夕方にメールが来てて今日幼馴染会議を開催するって来たんだけど?結局、尋が香織の生足を見るために集合させたの?」

なんて事を言うんだ!すぐさまツッコミを返し香織の方へと視線を向けると呑気に鼻歌を歌いながら足をバタバタと動かしている姿が目に入り微笑ましくつい、笑ってしまう。が、すぐに香織は思い出したかのように両手を叩き机に置かれた袋の中からお菓子を取りだし机へ並べ始める。主にチョコレート系が広がり女性が好きそうなお菓子ばかりがずらりと並ぶ。圧倒される尋を気にすることなく紫穂は香織にお礼を言いつつ雑談をしながら袋を開け始める。

「どうしたの?尋も座れば?」

「あ、うん」

立っていた事に改めて気が付き座ると香織が咳き込んだかと思えば紫穂の方へと視線を向け、

「もう少しで妖精探検がある訳だけど!紫穂は誰かと一緒に妖精探検したい!って人いる?」

香織は間接的に今日の事を聞こうとしたのか妖精探検の事を絡めて話しを進めるプランにしだのだろう。こうなれば尋は邪魔物。何かフォローをしようとすれば全てが空回りし手助けどころか足手まといになるに決まっている。ここは話し上手な香織に全てを任せた方が正解。そう直感で感じ取ったのか机に置かれたお菓子を口に運びつつ耳だけは大きくなってしまう。唐突な香織の言葉(しつもん)に驚いた様子で尋、香織の顔を交互に見つつ、

「どうしたの急に?」

「いや!紫穂にも妖精探検で少しでもお近づきになりたい男子が居たら幼馴染もとい親友としてお手伝いできたらな~って」

香織は善意で言っている事は分かる。表情もいつものようにニコニコと微笑みからかうつもりは毛頭ないだろう。が、紫穂はあまりそう言った事に対して触れられる事態があまり好きではない。なんとなく視線を紫穂の方へと向けて見ると明らかに香織を見る視線が少しばかりいつもよりキツメな気がする。これは、変な空気になりかねない。と、本能的に察知したのか身の危険を感じたのか、二人の間に割って入るように座りこむ。

「な、なに?急にこんな狭い所に来て。さっきの場所でも手届くでしょ!」

「いや、どうもお菓子が食べにくくてさ。ちょっと紫穂向こうによって」

「あははっ。ひろちゃん食いしん坊すぎだよっ」

香織は笑いながらお菓子をつまみ始める。尋は香織に気がつかれないように紫穂に対して自分の眉間に指を指し合図を送る。と、紫穂も気が付いたのかパッと険しかった表情を崩す。が、香織は尋の背中から顔を出すと、

「それで、どうなの?実は好きな人とか居たりする?考えてみると私たちって幼馴染で色々とお互いの事とか知ってるのに恋愛の事になると紫穂って口を閉じちゃうよね?幼馴染なんだからさっ!」

と、言葉を続けようとした瞬間に香織の言葉を遮るように言葉に勢いをつけながら口を開く。

「香織ってさ!凄く優しいし私の事を凄く大切に思ってくれてるのはすっごく伝わるし、ありがとうって感謝もしてる。けど、触れてほしくないところまでズカズカと入ってくるのは親友でもしてほしくないよ!」

唐突な本音(ことば)に香織はもちろん尋も驚き紫穂へと視線を向けてしまう。頬は少しだけ赤くなり小刻みに震えているようにも見える。つい、数秒前までのぽわぽわした空気は無くなり、少しでも触れてしまえば切れてしまうそうな張りつめた空気が部屋を覆う。外からは微かに虫の鳴き声が聞こえてくるだけで、あとは無音だけが耳にへと入り込んでくる。恐る、恐る香織の方へと視線を向けると口元は必死に笑みを作ろうとしているが瞳はまったく笑えていない。それでも、必死に笑みを作ろうと努力している香織の姿を見てしまったせいか、張りつめた空間の中で最初に口を開いたのは尋であった。

「紫穂の言いたい事も分かるよ。確かに自分が踏み込んで欲しくない場所だってあると思う。・・・僕にだって気が付いていないだけであるかもしれないし。それに僕も香織と同じで紫穂の恋愛の事気になってたんだ・・・ごめん。でも、友達・・・親友、幼馴染だから僕らの自己満足かもしれないけど、紫穂には幸せになって欲しいから、幸せになる協力ができるかもしれないから聞いてるんだよ・・・って、僕が偉そうに言えるほど恋愛をしてる訳じゃあないけどね。ははっ。でも、馬鹿にしようとかからかってやろうとか思って言ってる訳じゃあない事だけは分かってほしいんだ!ねっ!香織」

言葉に小さく何度か頷き返してくる。紫穂へと視線を向けると同様にそんなこと分かってるよ。なんて言いたげな表情で頷き床へと視線を向けている。お互いに誤解のような小さな溝は埋まったが変に重い空気は未だ部屋を漂っていた。が、それでもなんとかしなければならないと自分を奮い立たせ勢いをつけ立ち上がり、

「よし!変な空気になってしまったからちょっとだけ夕涼み兼ねて散歩しよう!」

交互に顔を見るとなんとなく二人もこの気まずい空気を打破したかったのかすぐに賛同しつつ立ち上がる。と、丁度、香織と紫穂互いの視線があったのか顔を見合わせて恥ずかしそうに笑っていた。微笑ましい光景い尋も自然と口元が緩んでしまう。

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