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夏になる頃へ  作者: masaya
一章 恋の妖精と時々幽霊
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「はぁ・・・」

放課後の教室に一人何もすることがなくただ、窓から見える野球部の部活を眺めていた。窓も少しだけ開けているせいかカーテンがゆらゆらと気持ちよさそうに揺れ黄昏るシュチュエーションとしては最高な場所が出来上がる。自分の気持ちが微妙に読みとれないことなんて今まで生きてきた人生でそうなかった。自分の感情が分からないことがあるなんて思いもしなかった。いや、中学の頃にあったけどアレとはちょっと違う感情なのかもしれない。両肘を机の上に付き頭を抱えるようにため息を漏らしてしまう。すると、教室のドアが動く音が耳へと入ってくる。クラスメイトの誰かが忘れ物でも取りに来たのだろうか?何気なく音がする方へと視線を向けて見るとどこか緊張しているような表情を浮かべつつ持っていた鞄を自分の前でぶらぶらと動かしながらこちらへと近づいてくる。尋も自分の良く分からない感情を悟られないように、しっかりとした先輩として。と、思ったのか近づいてくる御崎に余裕を込めた笑みを向ける。その笑みを見た瞬間に御崎は目を見開き俯いてしまう。それでも恥ずかしそうに近づいてくる仕草は相変わらず微笑ましく余裕(つくりえがお)では無く純粋に微笑み御崎を迎える。

「こ、こんばんは!」

「ははっ。こんばんは。ってか、まだちょっとこんばんはには早くない?」

時計に目をやると十八時半を過ぎようとしていた。時刻に驚いてしまい二度ほど時計を見てしまう。その動きが面白かったのか御崎はクスリと微笑む。それにしても自分の教室でもないのになぜ彼女は居るのだろうか?そう思っているとその疑問が顔に出ていたのか尋の顔を見るなり、えっと・・・。なんて少し迷ったように一歩だけ下がりそうになったが、意を決したのかフン。と、鼻息を出すと

「先輩が居るかなって思って教室を覗きに来たら丁度、先輩が一人で教室でかっこよく黄昏てたので遊びに来ちゃいました!」

「かっこよく!?僕そんなに決まってた?」

「あ、いえ。その・・・」

「ははっ。ごめんごめん!遊びに・・・来ちゃいましたか」

御崎の言葉につい笑ってしまう。声をかけに来たとかたまたま見かけたから声をかけました。等では無く遊びに来ちゃいました。と、言う言葉が妙に柔らかくてどこか恥ずかしく可愛く聞こえてしまう。たった、一歳しか違わないのに幼く見えてしまう。容姿はそれこそ幼いと言ってしまえば失礼になるししっかりとした女子高生。一学年で一番人気もある女性。けれど、どこか香織、紫穂とは違い面倒を見たくなる可愛さがある。いちいち、一言一言が丸くてぽわぽわしていて会話をするだけで優しい気持ちにもなれる。御崎を見つつもう一度校庭へと視線を送る。と、未だに必死に運動部が汗水を流している。夕陽になるにはまだ時間がかかるだろう。けど、きっと夕陽をバックにこの光景を見ていたら少しだけうるっとしていたかもしれない。それぐらい部活動をしている人の姿は格好良い。開いていた窓を閉め一度背伸びをすませ椅子から立ち上がる。と、同時に御崎の横へと立つ。咄嗟の事で御崎は驚いていたようだったけれど、その場を決して動こうとはしなかった。肩が触れ合うまであと数センチ。触れても居ない肩だけどじんわりと暖かくなっているように感じてしまう。夏の暑い季節なのに尋から伝わる暖かさは嫌じゃない。いや、嬉しい。喉の奥からジワリと暖かい恋心(きもち)が喉の奥まで押しあがってくる。吐き出してしまえばきっと楽にはなれる。

「あ、あのっ」

「よっし!帰ろうかっ!・・・ははっ。凄いね。お互いに言葉が被っちゃった。ん?どうかした?」

「い、いえ!私もそう言おうと思ってて!それより、私が一緒に帰っても大丈夫ですか?」

なんで?寧ろ僕の方が御崎ちゃんのファンとかに恨まれそうだから一緒に帰っても大丈夫ですか?って聞きたいな。なんて冗談まじりな事を言い笑いながら歩きだす。御崎もどこか恥ずかしそうにハニカミながら尋の横並びで歩きだす。廊下に出ると遠くの辺りから吹奏楽部の演奏が聴こえてくる。ふと、演奏と同時に何が気になったのか視線を少し下げ御崎の方へと向ける。と、御崎は妙に嬉しそうに微笑み演奏の楽曲だろうか?鼻歌を歌い歩いていた。

「御崎ちゃんって音楽好きなの?」

「うーん。そうですね。好きですけどそこまで詳しくないです。先輩は好きなアーティストとかっていますか?」

「僕もあまり詳しい方じゃあないんだけど、Downeyの朝の雫とか好きだよ」

「あ!アレ凄く良いですよね!インストバンド私も大好きです!それにfastの朝雫(あさしず)は最高ですよね!私は12番目の白い冬が好きです!」

余りの食いつきの良さに笑ってしまい御崎も唐突にテンションが上がってしまった事に気が付き謝罪を向けると恥ずかしさを紛らわすためなのか少し早歩きになる。また、その恥ずかしさの紛らわせかたが可愛く見えてしまう。御崎の後を追う様に小走りで御崎の隣へと向かう。廊下を歩いていると未だ教室に残っている生徒はちらほらと居り楽しそうに雑談なんどをしている。ああ言うのが青春を謳歌しているのだろうな。なんて思いながら歩いていると、恥ずかしさが少しは払拭できたのか歩く速度も通常に戻ってきた御崎が口を開く。

「なんか、ああ言う風に教室で残って話しをするって青春って感じしますよね。私もああいうの凄く憧れてて」

「分かるよ。放課後にさ?男女二人っきりで教室で夕暮れが差し込む教室とかで会話して一緒に帰ったりしてね。すっごく良いと思います。漫画みたいでいいよね」

同意をしたつもりで御崎の方へと視線を向けて見るとどこか話し出した表情とは違い少しだけふくれっ面になっているようにも見えた。何か言いたいけど言えない。そんな表情に再度笑みを向けるしかなかった。が、御崎も尋の表情を見るとどこか諦めたようなため息をつくと笑みを向けてくる。笑み返しに安堵したのか尋も満足そうに頷き昇降口へと向かう。なにかを思いだしたように尋は、

「そう言えばさ?近くにタコ焼き屋ができたって知ってる?」

「タコ焼きやですか?」

「そうそう。良ければ・・・」

「行きたいです!!」

食い込み気味に返答してきた御崎は体ごと尋の方へと近づいてきてしまう。そのため、勢いづいた体は尋の体へとぶつかってしまう。

「うおっ!そんなに御崎ちゃんはタコ焼きが好きだったのか!よし!じゃあ行く?」

「す、すみません!・・・はい・・・行きたいです」

昇降口に着くまでにお互いに沈黙になってしまう。が、昇降口まで数メートルほどだったためさほど気になるほどでもなかった。昇降口が視界へ入ってくると二学年の下駄箱に見覚えのある女性とが立っていた。その姿を見るだけで穏やかに動いていた鼓動がトクン。と、大きく跳ねあがる。立ち止まっている尋を不思議に思ったのか尋の顔を見ると息を飲んでしまう。分かってしまった。尋の視線の先にはきっと・・・。視線を向けると、香織が二人に笑みを向け手を振ってくる。

「あっ!ひろちゃん!それに、りっちゃんも居る!丁度よかった!私も今から帰るところだから一緒に帰ろうよ!」

「か、香織がどうして学校に残ってるの?」

「残ってるのって失礼だよ?私だって図書室で残って勉強する日だってあるよっ」

「ご、ごめんごめん!御崎ちゃんも行こうか」

「はい・・・」

最初こそ戸惑っていた尋の表情はいつもの御崎が恋心を抱いた優しくて暖かい笑みへと変わっていた。

こんばんは。今日はオリオン座流星群がピークらしいですね。自分の大切な人と見れたら最高ですよね。是非、大切な人が側に居る方は観察してみたらどうでしょうか?遠距離恋愛中の方は電話をしつつ夜空を見上げてみてはいかがでしょうか。

片思いをしている方は是非、この機会に天体観測をしようぜ!(よ!)ときっかけ作りに誘ってみるのはどうでしょうか?【は?めんどくさい】なんて言う人間はあまり居ないんじゃあないでしょうか?

それに!異性から【天体観測しよう】って言われたら私は凄く嬉しいです。←(誰もお前の意見は聞いていない)

私は一人防寒具をもりもり着て珈琲でも飲みながら見ようと思います。

みなさんにも今宵、素敵な星の巡りがありますように。

物語を読んで頂き、そして!物語とは一切関係のない後書きまで読んで頂きありがとうございました。レッツ!天体観測!

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