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夏になる頃へ  作者: masaya
一章 恋の妖精と時々幽霊
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家につきふと思い出したように携帯電話を開き液晶を見てみても真っ暗なままで、とうとう壊れてしまったのか。そんな事を思っているとある事を思い出す。

「うわ。そうだ・・・充電切れてるんだった」

自分の言葉(こころのこえ)にツッコミを入れ自分の部屋と向かう。扉を開けると窓が開いていたせいかひんやりとした夏の夜風が頬へ伝ってくる。月の光が差し込んでいたため電気をつけることなく携帯電話に充電器を差し込みつつ何件メールが着たり着信があるのかワクワクしながら電源を点けると一件ほど着信通知が表示されあとはメールもなにもなかった。ちょっぴり肩を落としつつ見てみると紫穂と線香花火をする以前の時間の着信だったため折り返す必要もないと思い携帯を閉じ床へと寝そべる。寝そべると丁度いい具合に網戸の隙間から星が少しだけだが見える。

「香織の事を思い続けてても雨谷の彼女だからどうしようもできないよね」

ため息混じりに独り言を吐いてみる。が、誰に対して言った訳でもない言葉は部屋の片隅へ静かに落ちる。それでも、なんとなくひろは言葉を続けてしまう。

「それに、もしも好きだって言ってしまったらこの関係は壊れるのかな?一体どうしたら正解なんだろう。親友の彼女を好きになってる時点で裏切りみたいなのはあるし・・・どうしたらいいんだ」

頭を両手で抱え床をごろごろと左右に転げまわる。普段には無く取り乱している自分自身に驚きつつ香織の事を思っているのにもかかわらずチラチラと紫穂の浴衣姿の後ろ姿を思い出してしまう。自分でも何故紫穂の事を思い出しているのか分からないのもあってか余計にいつもより多く転がってしまう。ゴロゴロと第三者が見たら痛々しい行動をとっていると床に置いていた携帯電話が震えだす。我に返り自分がしていた行動を思い返すと誰も見ていないと分かっているが口元がにやけてしまい恥ずかしくなってしまう。顔を少しだけ赤らめながら震える携帯を開くと液晶に雨谷圭と表示されていた。トクン。と、大きく鼓動が一度だけ跳ねあがる。別に悪い事もしていない。けれど、なんとなく面と向かって話すのではなく何故か雨谷と電話で話しをするのは緊張してしまう。通話ボタンを押し耳へ向けると相変わらずお気楽な口調で言葉を向けてくる。

「よっ。大丈夫か?」

「大丈夫かってなにが?」

唐突に向けられた言葉(しんぱい)に気の抜けた声が出てしまい電話越しからは笑い声が聞こえてくる。笑い声につられて笑ってしまうが本当に雨谷に心配されるような心当たりはないため首を傾げてしまう。

「いや、俺もよく分からなくてな?香織から電話があってさ」

名前を聞いた瞬間に生唾を飲み込み笑みが消えてしまう。香織に何かあったんだろうか?その疑問(しんぱい)以外頭の中には無くなっていた。しかし、ひろの心境とは裏腹に雨谷の声色は相変わらずお気楽で明るいものであった。なるべく平常心を装い口を開く。

「そりゃあ、彼氏彼女なんだから電話はあるでしょ」

「な、なんか言葉に棘がある感じじゃない?」

「ご、ごめん!」

「ははっ。俺の方こそごめんごめん!えっと、なんか香織と電話してたんだろ?それでなんかいつもと違ったって言っててさ。それで心配になって香織との電話を切ってお前に電話したんだよ。ははっ!感謝しなさいよ!折角の彼女と楽しいトークを遮断してまでお前に電話したんだからモノマネの一つや二つぐらい披露しても罰は当たらんと思わないか!?ははっ!」

隠し事は無い方が恋愛は長続きする。これは香織のモットーらしく日常の出来事や男子(ひろ)と電話をした事などなんでも会話をするらしい。本当に香織は些細な隠し事も好きではないらしく毎日同じ学校に行っているにも関わらず欠かさず夜には電話をしている。二人が毎日電話をしている事なんて知っている。が、心のどこかでひろは香織と電話をしている時だけは二人の空間と言うか秘密(とくべつ)だと思っていた。別にやましい事もなければするつもりもない。ただの自分勝手な願望(わがまま)。やましい事がなくても自分の香織(かのじょ)と電話をしていた事を隠そうとしていた相手(ひろ)に対してわざわざ彼女の電話を切ってまで電話をかけてきてくれた友人に対して言葉が出てこなかった。これほど自分がちっぽけだと思ったのは人生で初めてであった。電話越しでは照れくさそうな笑い声が聞こえてくる。自分のセコサ、中途半端さに苛立ちを覚えグッと無意識に握り拳を作ってしまう。手のひらに爪の痕が残るぐらい強く、強く握ってしまう。

「あ、ありがとう」

「おう!それでどうしたんだよ?まぁ、幼馴染の香織にすら言えなかった事なのに俺に言えるかどうか分からないけど。もしも、男として言える事だったら聞いてやるぜ!まあ、どうせ女の子関係だろう?」

照れくさそうだけれど暖かく力強い言葉にひろは眉間にしわを寄せ胸を押さえてしまう。今、胸の中でふわふわと浮いている気持ちを伝えるためにはどんな言葉で伝えたらいいのか分からなかったが、ぎこちなく下手くそに言葉を繋げる。

「なんかさ。人の感情がよく分からなくて」

「人の感情?また変な迷宮に入ってんのか?どうせ、誰かの気持ちが分からなくてモヤモヤしてるんだろ?恋愛系でさ?」

一の情報で雨谷は十の情報を得てしまうところがありただ驚かされてしまう。見えるはずもない雨谷に向かって大きく首を縦に振り頷く。

「な、なんで雨谷はすぐに僕の気持ちが分かるの?」

すると電話越しで乾いた笑い声が聞こえたかと思えば、

「だって、お前って大体は悩まない癖に恋愛とかそう言うことに関しては凄く悩むだろ?それにな?人の感情に答えなんて無いんだっての。感情に答えなんてあったら人は恋愛なんて出来ないっつうの。一分一秒先が分からないのが恋愛であり人生だぞ?悩んでも仕方がない事で悩んだって時間がもったいないと思わんか?」

「・・・確かにそうだけど少しでも相手の気持ちを分かりたい!って思ったりするじゃん?それに、もしもだよ?もしも、好きな相手に思いを伝えて」

「ストップ!」

言葉を続けようと思った瞬間に雨谷はひろに制止を言い渡す。と、深くため息をついたのか大きな風の音が耳を襲ってきたため咄嗟に耳元から遠ざけつつ、抗議の言葉を向けると笑い声が聞こえてくる。改めて携帯を耳へ近づけると雨谷の陽気な声が聞こえてくる。

「ちょっとした質問良いですか?」

「はい?」

唐突に会話を止められたかと思いきや雨谷はなにが気になったのか質問を問うてくる。その問いはあまりにも唐突で一瞬、意味が分からなく何の意図があって言ったのか分からなかった。

今回は文字数が短いです。すみません。

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