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夏になる頃へ  作者: masaya
一章 恋の妖精と時々幽霊
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いつも見慣れている後ろ姿のようにも見えるけど、始めて見る姿にも見えてしまう。それは女の子として見ているからなのだろうか?紫穂が歩くたびに夏の音を奏でる。カラン、カランと足音だけ聞けば陽気に夏祭りの帰り道を歩いていると思えるだろう。後ろ姿しか見えないけれどきっと紫穂は笑顔では無いと言うことは分かる。笑顔を泣き顔にしてしまったのは誰でもなく僕だ。何か雑談(いいわけ)を口にしようにもいつもの紫穂の雰囲気ではないため口が動けど言葉が上手く出てこない。苦虫を噛みしめたような表情になってしまいお互いに口を開く事もなくただ、歩き続ける。しばらく歩いていると平木家が見えてくる。ぼんやりとあと少しで家についちゃうな。なんて思っていると少しだけ前を歩いていた紫穂の歩く速度が遅くなり紫穂がひろの隣へとやってくる。意図が分からなくどう言葉を向けていいのか分からなく戸惑っていると紫穂の方から口を開いてくる。

「さ、さっきはごめんね。でも、本当に泣いたのは関係ないからね?」

「ぼ、僕は別に気にしてないから大丈夫だよ。ただ、大丈夫かな?って心配はしてたけど・・・」

ひろの言葉に紫穂はクスリと微笑むが眉間にはしわが少しだけ寄ってしまう。相変わらず優しいひろの言葉が素直に嬉しくて、何気なく言われた言葉でさえ喜んでしまう自分が少し悔しかった。話しかけてきてくれた事で少しは安堵したのかひろが口を開いてくる。

「何度も謝ると言葉が安くなりそうだから最後にします!本当に関係ないとか言ってるけど紫穂って意外と強がりなくせに弱いところあるから僕に気を使って無理してるかもだから・・・その、ごめんね!今度からはなんか気をつけるね」

「何かってなによ?」

ひろの言葉につい、笑い肩を叩いてしまう。ひろもつられて笑いながら、なんかはなんかだよ。と口にする。紫穂もそっか。なんて嬉しそうに口にすると丁度よく家の前へと到着する。お互いに、丁度着いたね。なんて口を揃え笑いあう。すぐに家に帰ると思いきや紫穂はなにやら帰ろうとせず向きあう様にこちらを向いてくるがなにも話しをしてこようとはしない。一体どうしたのだろうか?なんて思いつつ首を傾げると深く深呼吸をすると手を振ってくる。

「じゃあ・・・また明日!明日からはまたいつもの私だから!」

「お、おう!また明日!おやすみ。僕も明日も相変わらずな僕だから」

ひろの言葉に笑顔で答えると紫穂は家へと戻っていく。家へと入る紫穂を見送るとひろも一度背伸びをして帰路へと就く。二人で歩いてきた道を一人で歩くのはどこか寂しさを覚えてしまう。

「あの涙はなんだったんだろう・・・」

関係ない。体内変化がある時はたまに情緒不安定になる。とか色々と言っていたけれどそれは真実(ほんね)では無い事ぐらいひろでも分かっている。けれど、必死に幼馴染として気を使わせないように言葉を選んでくれていた事も分かっていたためあの場では頷くことしか出来なかった。しかし、本心は分からずとも嘘を言っている事は分かっていたのだからもう少し紫穂に対して気を使えただろう。と、思う感情が沸々と胸の奥底から出てきてしまい下唇を噛んでしまう。いつも、僕は紫穂に気を使わせてばかりだ。この言葉が頭の中をぐるぐると回る。きっと、本人に聞けば、ひろに気なんか使った事なんて無い。と、言うだろう。それは嘘偽りでは無く本心で紫穂も言っているに違いない。が、ひろはその言葉さえ気を使わせているのではないか?と、思ってしまうことがある。今思っている事を言えば紫穂は全力でひろをひっぱ叩き説教が始まるだろう。いつからだろう?幼馴染なのによそよそしくなってしまったのは。きっとよそよそしいという言葉も笑ってしまうぐらい微々たるものなんだろうけど、たまに見えない壁のようなものを感じてしまう時がある。こう言う風に壁を感じてしまう事も紫穂に対して失礼なことだって分かっているしただの気のせいかもしれない。けど、紫穂は自分に対して何か隠し事をしているような気がしてならない。ばれないように隠している本音。それが一体何なのかなんて分からないけど寂しいと感じてしまっているのかもしれない。幼馴染ならもう少し僕に対して信用して話しをして欲しい。と、言う自分勝手な気持ちが壁と思ってしまうのかもしれない。幼馴染にも話せる事と話せないことだってある。そう言われてしまえばそうだろう。けど、寂しいと感じてしまう。

「大人になればもっと隠し事が増えるのかな。なんか寂しいな」

銀色に輝く星たちに本音をぶつけてみる。欲しい答えが返ってくる訳でもなく眩い光が輝いているだけ。それでも、本音を少し吐き出せたおかげか口元は柔らかい。天体観測をしつつ歩いているとポケットから震動が体を覆う。メールかと思いきや体に伝わる振動が着信の震え方だったため通話ボタンを押し耳へと当てる。

「もしもし?」

誰からの着信か液晶を見ずに取ったため電話越しで微笑んでいるであろう笑い声を聞いた瞬間にひろの目は見開きつい、耳を話し液晶へと視線を送る。と、そこには清水香織と表示されていた。体温は急激に上がり体が火照ってきてしまう。一体この時間になんだろう?変なことでもしただろうか?様々な憶測が頭の中を飛び交うがとりあえずは深呼吸をしつつ電話を耳へと持っていく。

「もしもし?おーい?聞こえてる?」

「あ、ごめん!ちょっと電話が香織だったから驚いただけ」

なんでよ。表示されてるでしょ。なんて笑い声が聞こえてくる。いつもならひろも香織が笑えばつられるように笑うのだけど今回は何故か好きな人が笑っているのに笑うことができなかった。

「・・・ねえ?ひろちゃん?なんかあった?」

「えっ・・・」

僕の心の中が見えているの?と、聞きたくなるほど的確な言葉に動揺を隠す事は出来ず言葉に詰まってしまう。それでも香織は優しいいつもの声色で言葉を続ける。

「なんとなくなんだけどね?私も部屋で天体観測しててさ。丁度、ひろちゃんの事を思ってたら流れ星が流れてね。それでなんとなく胸の中がざわついて電話しちゃったんだ」

「ぼ、僕の事を思ってて?」

「ん?ああ!いつも天体観測をしている時はひろちゃんの事を思いだしちゃうよ?だって、私に星の良さを教えてくれたのはひろちゃんだしねっ!それに星を見てると色々と考えちゃうよ?紫穂の事でしょ?圭の事でしょ?クラスのみんなの事もだし!星を見る時に大切な人を思いながら見ると一味も二味も違うって教えてくれたのもひろちゃんだし」

ドクンと跳ねた鼓動は治まりを忘れたように音を大きな音で奏で続ける。電話越しでは嬉しそうな声が聞こえてくる。それだけでも荒みかけていた心が少しだけ穏やかになり始める。が、それと同時に自分の軽さが嫌になり自虐的な笑みが出てしまう。

「って!私の話しは別にいいんだよ!でも、ひろちゃんって本当に話し聞き上手だよね。何時間でも話せちゃうもん。圭とは大違いだ」

「ははっ。でも、雨谷は話しが面白いからそれはそれで退屈しないんじゃあないの?」

まあね。と、嬉しそうな声が聞こえてくる。

「それで、何かあった?ただの私の幼馴染センサーが働いただけだから信憑性は凄く怪しいものだけど」

柔らかく優しい声。この声を聞くだけでいつも再認識できる。僕は彼女の事が大好きなんだと。

「ねえ?香織?」

「ん?」

「もしもだよ?もしも、時間が中学に戻れるとしたら何をしたい?」

「・・・」

不意に思った事を問うてしまった。焦ってしまうが後の祭り。急に変な問いをした事を謝罪しようとしようとした瞬間に香織は再度問いかけてくる。

「本当にどうしたの?ひろちゃん?」

「あ、えっと・・・な、なんとなく聞いただけだよ!ははっ!急に変な事を口走ってごめんね。今日の僕は変だね・・・ははっ」

「・・・私たち幼馴染なんだから隠し事をするのはやめようよ。これは私のエゴだって事も分かってるけどやっぱり昔から知ってる人に隠し事をされるのは辛いよ。ひろちゃんが何かに悩んでたら一緒に解決してあげたいし・・・中学の頃だって必死にひろちゃんが助けてくれたでしょ?だから私も困ってたら力になりたいの・・・」

胸の辺りへ痛みを覚える。同じような事をついさっきまで紫穂に対して思っていたじゃないか。香織にも同じような事を思わせてしまっていたのだろうか。不意に喉まで出かかった言葉を飲み込む。この言葉を言ってしまえばきっと楽にはなる。楽になるけどその先を考えると竦んでしまう。見えるはずもない電話越しの相手に向かってひろは笑みを作る。

「・・・心配してくれて本当にありがとう!でも、本当に香織には言いたい事も言ってるし相談事もあればするよ。けど、今は・・・その・・・ごめん」

悩みごとは無い。と、は言えなかった。出来る限り言葉を選び伝える。ひろの言葉を聞き納得できないような声色だったけれど無理矢理に聞いても悪いと思ったのかなんとか香織も言いたい事はあったのだろうけど。うん。と、一言だけ口にする。

「ありがとう。せっかく心配してくれたのにごめんね」

「んーん。けど、私はいつでもひろちゃんの味方だからなんでも言ってね?」

ありがとう。と、告げ電話を切り夜空を見上げてみる。ふと、見た事もない蒼白い流れ星が一筋夏の夜空を切り裂く。

紫穂、ひろ、香織の中学生編もあるのですがいつ頃みなさんに見て頂けるんだろう・・・。

過去編まではとーーーーぶん先になりますが(まだ物語では数日しか経っていないので・・・(+o+))、それまで読んで下さってる皆さんに飽きられないように楽しんで見て頂けるように物語の更新頑張ります。

※2015/09/28

誤字訂正

一部記載 紫穂→香織

ご迷惑をお掛けしました。

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