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夏になる頃へ  作者: masaya
一章 恋の妖精と時々幽霊
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気まずいような何とも言えない雰囲気になってきた。と、ひろは思ってしまったのか、何か話をしなければ。そう思い話題を見つけようとしたけれど何を離していいのか分からなく表情が次第に険しくなってしまう。一体、御崎はどうして不機嫌そうな表情になってしまったのかよく分からなかったため、どのような話題を向けていいのか悩んでしまった結果複雑な表情になってしまったのが功を奏したのか液晶画面を見ていたであろう御崎がクスッと笑う。冷めていた。と、感じ焦っていたのはひろだけであって表情からして御崎は一ミリも不機嫌になんてなっていなかったのだ。気にし過ぎなところがひろの短所でもある。

「先輩大丈夫ですか?なんか、難しそうな顔していましたけど?」

「そ、そう?いや、雨谷たちからの連絡が無いなって思ってて。それに、なんとなく会話がなかったから必死に話題を考えていたんだ」

御崎の笑みを笑みで返しながら言葉を返し自分の気にしすぎだった。と、言うことも分かってかひろの表情もパッと先ほどとは嘘のようにいつも通りの優しい表情へと戻る。それにしても夜の教室に女の子と二人っきりで肩が当たりそうな微妙な距離で座っていると言う事実にひろは何故か笑ってしまう。御崎は急にひろが笑ってしまうものだから不思議そうな表情をつくり首を傾げる。その御崎の行動に答えるかのように口を開く。

「いや。なんか不思議だなって思って。御崎ちゃんと夜の教室で二人でこうして座っているのが不思議でちょこっと笑っちゃった。紫穂とか香織とかだと全然、不思議と思わないんだけどね」

「・・・なるほど。でも、確かに不思議です。私、夜の学校とか結構苦手だったりするんです。でも、元気で怖さを吹っ飛ばしていたんです。だから、ずっと香織さんと話しをしていて気を紛らわせていたんです」

なるほど。思い返してみると確かに小声ではあるけれどずっと会話をしつつ歩いていたような気がする。大丈夫そうに見えて頑張って周りに恐怖を伝わらないように頑張っていたんだ。その健気さにひろは胸の打たれてしまう。トクン、トクン。と、感じたことのない暖かい気持ち。自分でもよく分からない感情を御崎に対して抱き始めてしまう。この気持ちはなんて言うのだろう?暖かくて、だけど、どこかほっこりとする。胸の奥が春になったような温かい気持ち。火照ってきた顔を冷ますように静かに息を吸ってみる。夏だけどひんやりとした空気が体の中を巡り微熱を冷ましてくれる。

「でも、不思議と先輩と一緒なら静かになってても安心できるんです。隣に先輩が居てくれる。それだけで私は嬉しいんです。へへっ」

いつもなら口が裂けても言えない言葉。昼間(にちじょう)の学校ではきっと言えなかった。夜間(ひにちじょう)の学校だったから言えた言葉。御崎も意識をせずに自然と口にできた。ひろも御崎の言葉を聞くと優しい笑みを向け返す。先輩のその笑みを見れば分かります。御崎は心の中でぼそりと呟く。決まってひろが今向けている表情の時は女性としてではなく後輩として見ている時の顔。それでも、自然と自分の気持ちを口にできた御崎の表情は少しだけ晴々としていた。妖精は見ていないけれど少しだけ存在するかも分からない妖精に感謝をする。

「なんか御崎ちゃんにそんな事を言って貰えるなんて嬉しいよ。隣に居てくれるだけで嬉しい。なんて言われたことなんて人生で無かったから。ありがとう」

「やっぱり先輩って鈍感と言うかにぶちんですよね!」

御崎はからかう口調でひろに言葉を向ける。と、ひろはどの辺りが鈍いのか聞いてきたけれど笑ってごまかし流していると御崎が持っていた携帯の画面に雨谷の名前が浮き出てくる。御崎は電話をとりなにやら話しを始める。しばらく話しをしていたかと思えば電話をポケットへ入れこちらを向いてくる。

「四階の視聴覚室に集合との事です。見周りしてるおじさんは居なくなったらしいです」

自信満々に言いつつ御崎が静かにその場を立ち上がったためひろも静かに音を立てずに立ち上がる。静かに教室のドアを開け廊下へと出てみると廊下の先は真っ暗で不気味に映ってしまう。流石にひろが近くに居てくれれば大丈夫だと言っていた御崎も同じことを思ったのかひろの服の裾を掴んでくる。安心させるため笑みを向け歩きだす。ちょっとした物音でも聞こえてしまうだろう静寂。何度も生唾を飲み込んでしまい鼓動もやけに早くなってくる。光の一つでもあればいいのだろうけどここで電気をつけてしまえば教職員の誰かに見つかってしまう可能性もあるため暗闇の中を歩くしかなかった。視覚が狭くなっているため聴覚が研ぎ澄まされる。微かに上の階辺りから声が聞こえてくる。御崎も聞こえたようでお互いに笑みがこぼれる。と、少し余裕ができてきたのか御崎が口を開く。

「でも、先輩って凄く怖がり。って聞いていたんですけど全然そんなことないですよね!」

「そりゃあ、御崎ちゃんが居るから男としては怖くても守らなきゃいけないでしょ・・・って凄く怖がりって誰に聞いたの?失礼だ!」

ひろの言葉に御崎は照れくさそうにけれど純粋に嬉しそうな表情で背中を見つめる。ひろは前を向いて歩いているためそんな健気な御崎の表情に気づくことは無かった。

「雨谷さんが言ってたんですよ?ひろは怖がりだからもしもの事があったら守ってやる。って言うぐらい覚悟がないとって。それで、私はしっかりしなきゃって思ってたんですけど先輩はやっぱり先輩でした!」

「ど、どう言うこと?情けなかったってこと?」

「ち、違います!違います!いつも後輩おもいで優し先輩だなって思って。私のす、すぉんけいする先輩です」

「すっごく巻き舌になったね。でも、尊敬してもらえるほど僕は凄くないよ。でも、そう思ってくれてるんだね。ありがとう。なんか、御崎ちゃんに対してモヤモヤとしていた感情があったんだけどなんとなく分かったかも。なんか、妹みたいでほっとけないって言うか。だから、苦手な場所でも強がっちゃうのかも。ははっ」

ひろは後ろを向きほほ笑むとまた歩きだす。そのひろの頬笑みを見て御崎は胸の奥が締め付けられるような感覚を覚え気がつかれなようにひっそりと眉にしわを寄せてしまう。いつになったら妹みたいな存在では無く女性として見てくれるんだろう?きっと先輩の心の中には誰かほかの人がいる。それぐらいは私にも分かる。学年で一番可愛いなんて言われているけど先輩はそんな色眼を使って話しかけてこなかった。普通に一人の後輩として接してくれた事が嬉しかった。特別では無く普通に接してた事が嬉しかった。それにこのまま普通に後輩として過ごすだけでも幸せだと思っていた。けれど、今は違う。先輩だけの特別になりたいと思ってしまった。普通なんてもうこりごりだ。先輩の特別になれればそれだけでいい。

「・・・み、御崎ちゃん?大丈夫?」

気がつくとひろが心配そうに後ろを振り向き何段か降りて近づいてきてくれていた。御崎の足は止まってしまっておりハッとした表情をしたかと思えば両手を必死に振り、なんでもない事を伝える。ひろもすぐにそれを信じてしまい、よっし!もう少しで雨谷たちと合流できるから行こうか。と、お気楽な口調で上り始める。

「鈍感も罪ですよっ・・・って、それは自分勝手だよね。先輩は誰にだって優しいんですもんね」

「ん?」

御崎は笑みを作りひろの横へと行き二人で四階にある視聴覚室へと向かう。と、視聴覚室の前辺りに人影が目に映る。一瞬、視界に入った時には驚いたが目を凝らし見てみると香織だろうか?一人の誰かがこちらに向かい手を振ってきていた。御崎と顔を見合わせ安堵した表情で近づくと雨谷と香織が立っていた。あと二人はどうしたのか聞くと電話で、先に帰る。と、言う連絡が来たらしい。声色からして別に脅えているような感じは無く単純に飽きたのだろう。雨谷は笑いながら言っていたため御崎、ひろも頷き話しを聞いていた。しかし、なぜこの様な場所で集合させたのだろうか?その疑問を問おうとした瞬間に、狙っていたかのように雨谷が口を開く。

「ひろの顔が物が立っている通り何故ここに集合したかと言うとだね。それは、この四階で俺はオバケらしきものを見たんだよ」

今さらこんな場所に来ていてなんだけれど、オバケ。この単語を聞いた瞬間にひろ、御崎の体は強張り固まってしまう。香織は二人の反応を楽しんでいるかのように優しく微笑んでいる。雨谷もひろ達のように面白いぐらい怖がってくれる人がいるのでテンションも上がり若干雰囲気をつけるためか口調をオバケの語りをする人のように強弱を付けながら話しだす。

「それで、この先にある音楽室でそれを俺は見たんだ・・・。怖いねー。怖いよー。」

「・・・」

「一組飽きちゃったって言う理由で帰っちゃって四人になったけど一人で行くより全然怖くないから大丈夫だよ。けど、怖いねー。怖いよー」

「・・・ご、ごめん。雨谷・・・あのさ。雰囲気を出そうとしてくれてるのは凄く伝わるんだ。さっきまで、オバケって言う単語が出て気た瞬間に確かに背筋もぞっとしたし怖くもなったんだ。けど、ちょくちょく入れてくる、怖いねー。怖いよー。って言うのが面白くてならないんだ。ほら見てみなよ」

香織、御崎の方へと視線を向けるように促すと雰囲気を壊さないように必死に笑いを堪えている女子二人が目に入ったのか雨谷もまた吹きだしてしまい三人から人差し指で口元に付けられ静かに。と、合図を送られる。雨谷も頷きながら人差し指を口に着け落ち付いたのか、

「い、いや。俺も言ってて馬鹿馬鹿しくて我慢してたんだ。でも、みんなの笑い声が聞こえないから言いだしっぺの俺だけ急に笑い出しても興ざめかと思って」

「でも、なんとなくだけど雨谷のお陰で怖くなくなったよ。ありがとう」

「いやいや。これは俺の失敗だから。今日練習込みで来てよかった。これが妖精探検の本番だったらさ?本気でちょっぴりの恐怖も楽しもうとした奴が居てさ?俺の口調で緊張感が無くなってしまったら俺、ボコボコにされちゃったよ。多分だけど」

まいった、まいった。なんて言いながら雨谷は奥にある音楽室へと歩きだす。雨谷を先頭に御崎を引き連れ歩き、香織、ひろは何故か並んで歩いていた。すると、右肩を突かれたため向くと香織が笑いながらこちらを向いてきていた。

「御崎ちゃんとどうだったの?二人っきりでどこかに隠れてたんでしょ?吊り橋効果は発動されたのかなぁ?」

妙にからかう口調に苦笑いを浮かべつつ、

「大したことは無かったよ。それに見周りの人に見つかったらアウトだって思ってたからね」

「確かに淡い恋心が進展する状況でもなかったのかな?」

「・・・きゃっ」

いつも通りの会話をしていると少し先を歩く御崎の小さな悲鳴が聞こえたため香織、ひろはすぐさま近づいて行く。

夏までに一章を終わらせることができず誠に申し訳ございません。私用にて更新頻度が下がりつつあります。中旬ごろには落ち着くと思いますので今しばらくご迷惑をおかけしますが、この様に3日~4日おきの更新となると思います。この事に関しても改めまして物語を楽しみにして下さっている方々にはご迷惑をおかけしてしまい申し訳ございません。

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