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夏になる頃へ  作者: masaya
一章 恋の妖精と時々幽霊
21/112

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高なる鼓動は収まることなく学校の校門辺りが視界へと入ってくるとより早く脈打ち始めるため一旦足を止め深く深呼吸を数回ほどする。駆け足気味で来てしまったせいなのか体が火照ってしまい汗臭くないか首元や脇を嗅いでいると後ろから笑い声が聞こえてくる。真っ暗までとはいかないが薄暗くはなっていたためその声に思い切り驚いてしまい両肩が上へと上がり軽い鞭打ちになってしまう。まさか自分の笑い声でそこまで驚くとは思ってもいなかったのかすぐに駆け足で近寄ってくる。心配したような声色が聞こえてくる。痛めた首をかばう様に触りつつ振り向くと御崎が駆けよってくる。

「せ、先輩・・・大丈夫?ですか」

「み、御崎ちゃん?」

ひんやりとした手が首筋へと触ってくる。華奢な手の感触を感じる前にもしかしたら首元に汗が流れていてはまずいと思いすぐに御崎の手から逃げるように距離を取りつつ距離を取った行動の意図を悟られないように、ははは。なんて笑う。御崎もひろの機敏な動きにそこまで痛みを感じていない事が分かったのかクスクスと笑いだす。しかし、薄暗い場所で女の子一人でこの様な場所に何故居るのだろうか?ふと、出てきた疑問を問うてみようとした瞬間に御崎は、えへへ。なんて笑いながら横へと立ってくる。御崎がどうしてそこまで笑っているのか分からず不思議そうに首を傾げる。が、それでもただハニカムように下唇をあまがみしながら、

「先輩も雨谷さんに呼ばれたんですよね?私も帰って着替えてたら電話が来てすぐに自転車で学校に向かっちゃいました。雨谷さんからの連絡だったので先輩も来るのかなって思ってて待ってました!」

ニコニコと嬉しそうな表情にひろは感情を誤魔化すような苦笑いでは無くどこか暖かく優しい笑みへと変わっていた。御崎は視線を学校の校門へと向け歩き出すとひろもつられるように御崎の横を歩き始める。歩きつつ視線を感じたため横を向くと御崎がふと視線を逸らしてくる。その行動が数回ほど続き可笑しくなり笑ってしまう。急に御崎の顔を見て笑い出すものだから御崎は両手で何か変なものでも付いているのかと心配になったのか触り始める。

「違う違う!御崎ちゃんが僕の顔を見てるのが可笑しくて。それで僕が御崎ちゃんの顔を見ようとしたらすぐに顔を逸らすのが面白くて。一度ならまだしも何度も同じ行動を二人がするからさ?なんか急に面白くなっちゃって。だから、御崎ちゃんの顔に何かが付いていたから笑った訳じゃないよ。勘違いさせてしまったんだったらごめんね」

そう言うと御崎は照れつつもどこか嬉しそうな表情を浮かべ頷く。あ、そう言えば。なんてひろは御崎に問おうとした事を思い出す。

「そう言えばさ?御崎ちゃんって怖いの得意だっけ?」

「私ですか?どちらかと言えば得意だし得意でも無いですね」

「いやいや!とちらかと言ってないよ!?」

ひろのツッコミに御崎は笑いだす。ひろと一緒に歩いている。と、言う事実に舞い上がっていたのか何を言ったのか分からなかったらしい。ツッコミで自分が可笑しなことを言っていると分かったのか自分に対して笑ってしまう。そう。御崎も真面目なのだけど天然でボケをかましてくるところがありたまに心配になってしまう。どこか大切なところでへまをしていないかな?なんて思うこともある。その事を言うととても喜んでいた事も思いだす。あの頃は御崎ともどう接していいのか分からず変に距離をとっていたな。なんて思いだしてしまう。それでも彼女は相変わらずの笑顔を向け変わらず接してくれていた。

「先輩?」

「ん?」

下を向くと御崎は妙に嬉しそうにほほ笑みながらこちらを向いてきていた。そのあどけない表情を見ると改めて一年生の中で一番可愛いと言われているだけあり大きな瞳に吸い込まれてしまいそうになる。性格もよく顔立ちもいいなんて完璧である。改めて隣で歩いている女の子は可愛い子だと言うことを今さらながら再確認する。しかし、ここまで完璧な彼女がどうして大して賢くもなければ雨谷のように華やかな雰囲気がある訳でもない。それなのにここまで慕ってくれる理由が思い浮かばない。

「私、今日は色々と忘れられない日になりそうです。一緒に下校して写メを撮って、それも流れ星も偶然に入ってて夜にもこうして先輩と一緒に居られるなんて幸せすぎて鼻血が出ちゃいそうです」

「確かに僕もアレは凄いと思っちゃった。偶然にしても写メにあんな分かりやすい流れ星が写り込むなんてね。あと、夕方ってところがなんかいいよね!」

そう言いながらひろは携帯を開き写メを見よとした瞬間に電源が付いていない事に気が付く。とうとう壊れたのか?そんな事を思いつつ電源ボタンを押すと液晶が光ると同時に充電マークが出てくる。故障では無くただの電池切れであった。御崎にもまだ写メを送っていなかったため見る事が出来ず、携帯の電池切れを教えるように真っ暗な画面を見せると残念そうな表情を向けてくる。それでもすぐさま御崎はキラキラと輝く夜空を見上げつつ、

「先輩と一緒にもう一回見たかったのになっ。でも、いっか!こうして一緒に星を見れてるんだし」

「ははっ。そう言えば御崎ちゃんも星を見るの好きだって言ってたよね。僕も天体観測はめちゃくちゃ好きなんだよね」

そう言えば先輩も好きって言ってましたもんね。と、何故か嬉しそうな御崎の声が聞こえてくる。

「ははっ。なんか御崎ちゃん本当に今日は嬉しそうだね。いつも以上にテンションも高めのような気がするし」

「そ、そりゃあそうですよ!だって、私は先輩の事が!」

言葉を続けようとした瞬間に校門の辺りからこちらへ何個もの懐中電灯の光が顔へと向けられる。ひろは御崎の言葉よりもその眩しさに気をとられてしまい御崎も光に驚いたのか言葉を飲み込んでしまう。二人を照らす光の一つがこちらへと向かいやってくる。と、ライトを自分の顔の下へと持っていき薄気味悪い雨谷の顔が浮き出てくる。ライトを顔の下にやるとほとんどの顔は面白くなるか不気味になるのだろうけど、ヤツは違った。相変わらずの格好良さで友達ながら腹が立ってしまう。すると雨谷ががニヤニヤと微笑みながら肩を叩いてくると小声で、

「よく来てくれた。それに、二人で来るとかやるじゃん」

「丁度、御崎ちゃんが僕が来るかもしれないって思って待っててくれてね」

「お、おう」

ひろの反応に戸惑いつつも雨谷は御崎にも挨拶をしつつ校門へと向かい歩きだす。ひろ、御崎も雨谷の後ろについて行く。学校侵入はバレテはいけない。それなのに堂々と校門の前で懐中電灯を点け遊んでいても大丈夫なのだろうか?そのような疑問が出てくるが職員会議をしている教師たちは外まで見ることはな無いだろう。そう思い疑問を振り棄てる。メンバーは思ったよりも少なくひろたちを入れて六人ほどしかいなかった。ひろ的にはもう少し大勢でワイワイとやるものだと思っていたため多少拍子抜けな部分もあった。

「と、言う訳で今から練習がてら学校の妖精探検プラスオバケを探す肝試しを開催します!と、言ってもあくまでも試験的なものなので少数精鋭と言う言葉もあるため俺の信頼できる人しか呼んでおりません!」

すると小さな拍手、笑いが起こり満足そうな雨谷の表情が印象的であった。雨谷の信頼できる人。その中には紫穂の姿が無くそこだけが引っかかり侵入についての説明をし始めようとした瞬間にひろはその問いを投げかける。

「ねえ。雨谷の信頼できる人って言ってたけど紫穂は呼ばなかったの?」

「ああ!ちゃんと誘ったぞ?けど、なんか用事があるらしくれ来れないんだと」

なるほど。心のどこかに引っかかっていたものが取れた気がした。その言葉を聞いてか少し離れた場所で話しをしていた御崎と香織がこちらを見て小さく拍手をしていた。その拍手の意図はよく分からなく首を傾げてみる。と、その行動を見るなり二人して微笑んでいた。

「よーし!じゃあ、とりあえず懐中電灯は消して学校に侵入しようぜ!それで、今回は六人一緒に行動な?あと、これだけは絶対に守ってもらわないと困るんだけど」

そう言うと雨谷は一人ひとりの顔を確かめるように見つめる。その緊張した表情に先ほどまで穏やかな表情を作っていた五人の表情が真顔へと変わる。ゴクリ。と、生唾を飲み雨谷は口を開く。

「絶対に大声を出さないこと。これで先生に見つかったら俺たちが掲示板で叩かれることになるから。先輩とかめっちゃやつれてたろ?アレを見ると怖いからな」

そう言うと雨谷は校門を抜け夜の学校へと歩きだす。確かに。気をつけなきゃ。なんて互いに言い合い雨谷の後に続き学校へと向かいだす。夜の学校なんていつぶりだろうか?中学校以来だろうか?日中の明るい時に見ている風景とはまるで違う。日中の学校は当然だけれど人も多くおり活気だっている。が、今は静寂で夏の虫が鳴いている声が聞こえるだけ。あとはこれから始まるイベントに心を躍らせ楽しそうにこそこそと話しをしている声ぐらいしか聞こえてこない。校門をくぐるまではプチイベントでちょっとは楽しめるかと思っていたが思った以上に恐怖が襲ってくる。職員室辺りには光が灯っている。が、あとは真っ暗でぼんやりと赤い光が所々で光っているだけ。あとは真っ暗な校舎。見ようによっては窓から誰かが見ている気もしなくはない。確実に気のせいだとは思うけれど変に意識し始めてしまい一人で歩くのが心細くなってしまったひろはいつもなら気合いを入れて近づくであろう香織の近くへと歩いて行く。ひろが怖がり近づいてきた事にすぐに勘付いたのかクスクスと手を口元に持っていき笑いだす。一緒に歩いていた御崎は何故、香織が笑いだしたのか分からなく不思議がっている。ひろは香織が笑っている理由が分かったがそこに対してツッコミを入れれる余裕はなくなっていた。

「急に笑っちゃってごめんね。御崎ちゃんからしたら、どうして笑いだしたのか分からないよね。さっきまで一人で歩いていたひろちゃんが私たちに近づいてきたでしょ?絶対に夜の真っ暗な学校を見て怖くなったからだと思うの。ひろちゃんって怖いのが苦手なくせにいつも来ちゃうよね」

「し、仕方ないでしょ。現場に来るまでは凄く楽しそうに思えちゃって。でも、来たら後悔しか残らないんだよね。会話に入れてくれなくていいから近くに居させて下さい」

ひろの言葉に香織は笑いながら頷き御崎はひろと香織の姿を交互に見続けていた。

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