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二人の間にしばらくの間、沈黙が続く。先ほど見た発光体は一体何だったんだろう?その疑問ばかりが浮き出てくる。驚愕すると人間と言う生き物は瞬間的に思考を停止してしまうものらしい。しかし、少しずつではあるが驚愕から停止していた思考が戻り始めあの光がなんだったのかを考え始めていた。冷静になってきたからと言っても見た事もない物体の事を考えたところで答えが出てくるわけもなくただ、ジッと光が飛んでいたであろう場所へ視線を送っていると紫穂がボソッとなにかを口にする。よく聞こえなかったため視線を向け首を傾げる。なに?聞いていなかったの?と少しばかり眉間にしわを寄せながら紫穂はため息を一度吐き、
「あれって、今トレンドの妖精じゃあない?」
「なんか、紫穂が横文字使うと腹立つよね」
「なんでよ!」
そう言うと笑いながら肩を叩いてくる。ひろも同じように笑い紫穂のパンチを肩で受け止める。と、同時になんとなく紫穂が口にした単語がストンと腑に落ちた。約二年間の高校生活でこの場所は回数を忘れるぐらい来ているのにあのような光りは始めてみた。この世とは思えない動きでもあった。紫穂のいう通り最近、学校に出没している妖精なのかもしれない。けれど、ある疑問点も出てくる。同じことを紫穂も思ったのか自分で言った言葉を思い返しほんのりと表情を曇らせる。
「だよね。多分、紫穂も思っていることだろうけどどうしてこの場所に妖精が出てくるのかってことでしょ?」
言葉を向けると紫穂も大きく深く頷く。
「そうなんだよね。実際に妖精を見た人の昔話とかを聞いてると校舎内でしか見た事がないって話しなんだよ。だから、やっぱり違うのかな?それにしてはさっきの光って今まで見たことないような大きさだったし、ひろの頭のように輝いていたし、凄い速度で飛んで行っちゃったし。やっぱり私は妖精のような気がするんだよね」
「・・・ちょっと待って。まず、僕は禿げてないし!真面目な話しをしているかと思ったらちょっとふざけてるでしょ!」
ツッコミを入れると紫穂は頬笑みをこちらへと向けてくる。たまにこうしてふとした拍子で見せる女性らしい表情は本当にやめてほしい。一瞬だけでも紫穂にドクンと鼓動が跳ねてしまう自分が恥ずかしい。よく見なくても分かるけれど相変わらず整った表情をした女子に笑みを向けられると高校生男子は少なからず緊張してしまい視線を逸らしてしまう。ひろも例外では無いのだけれど幼馴染であり昔から一緒に居る友達だから紫穂にはときめいたりしない。と、言うよく分からない意地が働いてしまいあえて視線を逸らさずに見つめ合う形になってしまう。自分の瞳を見てくるひろに驚き紫穂の方が視線を逸らしてしまう。
「冗談と言う名の真実は置いておいて」
「冗談じゃあなくなってるっての。禿げてないし」
「ひろはあの光どう思うのさ?」
「んー。やっぱり僕も紫穂と同じように学校に最近出没している妖精のような気がする。確かに妖精は校舎内しか出没しなかったって言うのはたまたまで、本当は校舎外からも出ていたけど見つけれなかったんじゃあないかな?校舎内にしか出ない!って情報が流れてみんな校舎内にしか視野が行っていなかったんだよ。高度な情報戦なのかもしれないね」
顎に片手を添え含み笑いを浮かべる。その表情を見るなり紫穂は若干気持ち悪いものでも見るかのような視線を送る。ひろも突っ込んでくれるかと思いいつもよりも大げさに演技をしてみたのだけれど予想外の展開にすぐさま自分でもどうかと思っていた仕草を止め咳ばらいをし変な空気を一掃する。紫穂はひろの咳ばらいが可笑しかったのか口をかくしクスクスと笑いだす。
「なんとなくだけど、さっきの光を見てひろって元気になったっぽい?」
紫穂に言われて気が付く。確かにそうだった。つい数分前まで自分はこの世の終わりか。と、思っていしまうほどの絶望が体全体に襲ってきていたはずだった。片思いの辛さを身に沁みていたはずだったのにどうだろう?ふと、自分の体をなんとなく見てみる。外見が何ら変わっているはずもないのだけれど妙に心がすっきりとしていた。諦めれた訳ではないのだけれど悲観的に考えることでもない。彼氏が居る人を好きになる事がどれだけ辛く失礼なことなのかは分かっていたことなのだから。そう言う風に冷静に考えれていた。しかし、改めて考えてみると彼氏が居る人を告白をするつもりはないにしろ好きになるって言うのはどうだろうか?一秒前まで吹っ切れていたはずなのにまた負の思考が全力でひろの場所まで走ってくる。あと少しで負の思考がひろの腕を掴もうとした瞬間、背中にもの凄い衝撃が襲ってくる。
「痛い!!」
紫穂が全力で振り被り背中を思い切り叩いてきたのである。破裂音のように甲高い音では無くタンスで頭を打ったような重く深く鈍い音が周りに響き渡る。破裂音ならば痛みよりも音が派手であり周りにも気が疲れやすく心配をしてもらえる確率が高い。が、ひろが受けた衝撃は音も地味であり周りにも分かりずらく本人ぐらいにしか本当の痛みが分からないため損をする叩かれ方である。と、言っても周りには紫穂しか居ないため周りに聞こえたところで心配してくれる人なんていないからどちらも変わりはしない。しかし、流石に痛がるひろを見た紫穂も振り被り過ぎたか?なんて心配もしたけれどそれ以上に気合を入れなおすために叩いた暴力なため腕を組み視線を送るだけであった。痛さも少しずつではあるけれど引いてきたのか背中を擦りながらひろも視線を向けてくる。
「ひろってすぐにマイナス思考になりがちだけどダメだよそれ?マイナス思考って本当に自分に負が寄ってきちゃうんだよ?だから無理にでもプラス思考で行けばきっといい方向に転がる確率が高くなる?んだよ!!」
「語尾は凄く強めに言ってるけど途中に疑問形がなかった?」
「そう?でも、私が言ってること分かるでしょ?どうせ、香織の事を考えていたんだろうけどさ。・・・確かにひろがいつも言っているように友達の彼女を好きになるって私もどうかとは思うよ。絶対に叶うはずがない恋だし、ひろ自身も叶えようとはしていないでしょ?前だって、告白をして振られれば諦めが付くかもって言ってて未だに言っていないしさ。本当にひろって男らしくないよねっ!!女々しいって言葉は私は嫌いだけど意味的に取るならひろはその言葉がピッタリだよ。こんなテンションに急になって戸惑ってるかもしれないけど、聞くね!いい!?」
いつもよりも紫穂の言葉の熱の温度が高い気がする。それぐらい必死に自分の事でもないのに懸命に考えて向けてくれているのだろう。言葉こそ厳しいし冷たい言葉に聞こえる人もいるのだろうけど言葉を向けられているひろの表情は邪険な表情では無くどこか嬉しそうで暖かいものだった。紫穂はひろの返答を待っていた。質問をどうぞ。と、言う様に数回ほど頷くと紫穂の喉が一度大きく動く。
「ひろって本当は・・・ごめん」
「そこで電話って!」
謝罪を向け電話を取ると紫穂は妙に焦ったような表情をつくる。一体何事かと思い顔を向けてみると紫穂は片手でごめんと手を向けその場を足し去ってしまう。これもまた突然の退場にひろは紫穂を追うことなくその場をただ立っていることしか出来なかった。
「え?凄く気になるんだけど。紫穂は何を言おうとしたの?・・・まっいっか」
ここに来て楽観的なひろが出てきたため深くまで気にすることなく両手を意味もなく振り回しながら歩きだす。本当に先ほどとは嘘のように思考が良い方向へと向かっている事に自分自身も驚いていた。その要因になったのは紛れもなくあの光を見た瞬間からである。なんとなくだけれどアレは五不思議の一つでもある学校に出現する妖精だと分かっていた。教室に戻ると気だるそうに机を運んでいるクラスメイトが目に入ってくる。時計を見るとあと数分で掃除が始まるかと言うところであった。気だるそうにしている割には掃除の時間よりも早く行動している姿はなんとなくおかしく笑ってしまう。つられるようにひろも教室へ入り手伝いをしようとした瞬間に学校中に音楽が鳴り始める。音楽が鳴り始めると同時に教室で座り楽しそうに会話をしていた女子たちが立ち上がり各々の掃除場所へと向かい出て行く。ひろも机を持ちあげ椅子の背もたれを机の上に置き下手へと運んで行く。雨谷も遅れて教室へ入ってくると箒を持ちひろの所まで近付いてくる。
「よっす!さっきは本当にありがとうな」
「仲直りはできたの?」
そう言うと雨谷は妙に恥ずかしそうな表情をつくる。まずはそんな事よりももう一つの秘密の場所で紫穂と一緒に見た妖精らしきものの事を離さなければならないと思いつつも何故か上手く言葉が出てこなかった。何故かこの事は紫穂に了解を取ってから言った方がいい。なんて思ってしまったからである。理由はよく分からないがそう思ってしまった。本当ならば妖精探検を企画している雨谷にいち早く言わなければいけない情報だったのにもかかわらず言えなかった。いや、言うことに躊躇してしまった。疑問を向けてきた本人が自分の言った言葉に反応してこなかった事に不思議がったのか雨谷がこちらをジッと見てきていた。ひろもすかさずごめん、ごめん。と、謝罪を向け再度聞き直す。雨谷も笑いながら、
「だからな?ひろが居なくなった後にちゃんと経緯を詳しく話してキスをしてだな・・・」
「僕に彼女とキスをしたとか話してもいいの?てか、彼女からしたらそんな事を彼氏が友達に話しをしていたって分かったら嫌なんじゃないの?僕だったら恥ずかしくて・・・嫌だけど」
「馬鹿っ!こんな事はお前ぐらいにしか言わないっての!お前と俺は親友だからな!」
雨谷の言葉がぐさりと心を突き刺してくる。言葉が上手く出てこずただ笑顔を向けることしか出来なかった。雨谷もつられて微笑み返してくる。男同士が微笑みあい笑っているため周りのクラスメイト達は少しだけ距離を開け机や箒で床を掃いていた。その少し距離を置かれた雰囲気に二人ともがすかさず察知し誤解だと言うことを伝える。と、みんなが笑いだす。つられてひろ、雨谷も笑いだし教室中がなんだかほっこりとした空間に包まれる。雨谷は笑いながらなにかを見つけたのか教室の隅の方へと向かいこちらを向いてくる。
「おい!ひろ。ゴミ捨て行こうぜ!」
折角、誤解のようなものを解いたのにもかかわらずすぐにまた変にからかわれそうな素材を提供してくる雨谷は流石と言うところだろう。ひろもすぐさま言葉に乗っかり雨谷と二人で教室を後にする。殆どのクラスメイトは冗談として受け取っているが数人は本当に疑ってしまっていた。掃除の時間にもなると昼休みと同様に学校が騒がしくなり真面目に掃除をしている人も居れば女子に怒られながらも楽しそうにしている人もいる。数メートル歩くだけで様々な人間ドラマが見える気がする。靴を履き替え外にある焼却炉へと向かう。ゴミ捨ては掃除の始まりと同時に行く人が多くひろ、雨谷が向かっている時には人は誰も居なかった。雨谷は焼却炉にゴミをかき入れてつつ口を開いてくる。
「あ、そう言えばさ?怨念がおんねん事件あったろ?」
「それは雨谷が駄々滑りしただけでしょ。別に事件じゃないでしょ」
「まあな。それで、あの場はなんか雰囲気悪くて言えなかったんだけどアレ、どうも嘘っぽいかもしれないぞ?なんか幽霊に詳しい奴がいるんだけど、そいつが見た感じだとただの光の屈折で顔のようなものに見えるだけで画像からは幽霊らしき雰囲気は伝わってこないらしい」
あまりにも真剣に雨谷が言ってくるものだからひろは無いも言えなかった。が、どう考えても幽霊に詳しい。と、言う単語だけで怪しさが跳ねあがった気がしてならなかった。霊感のようなものを持っている人もいるし雨谷に助言をした人も本当の事を言っているのかもしれない。しかし、ひろにはどうしても胡散臭く聞こえてしまう。雨谷は子供のような表情を浮かべつつ言葉を続ける。
「それにな?妖精の話しも聞いて。そいつって結構オカルトマニアでさ?全世界に散らばる妖精の話しも聞いてだな!それによると妖精が出現しやすい環境がこの校舎内には揃っているらしいぞ!詳しく知りたいかもしれないけど・・・教えなーい!本当は教えたいんだけどまだ早い!ちゃんと妖精探検日を決めて本当に実行する!って決まったらちゃんと話すよ。それまではお楽しみってことで!なっ!」
彼女とキスをした事を話すくせにこの事は話してくれないのか。と、ひろは思ってしまいつい、苦笑いが出てしまう。そして、なによりも雨谷は本当にこう言ったイベントごとが大好きだと言うことを再確認させられてしまう。妖精を発見するしないでは無くこう言った不思議なことをみんなで共有することが好きなのだろう。胡散臭さは払拭できていないけれど雨谷が楽しそうな表情を見ているとひろもなんとなく苦笑いから優しい笑みへと変わっていく。
最近、更新頻度が下がってきていてすみません。猛反省しております。忙しいからと言うのは言い訳になるので少しでも読んで下さる皆様に楽しんで頂けるように頑張ります。まだまだ、残暑が厳しいですが体調などにはお気をつけてお過ごしください。
追伸 私は夏風邪を引きました。( ˘ω˘ )スヤァ…
2015/08/16
※誤字訂正




