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夏になる頃へ  作者: masaya
三章 四月の雪
104/112

3

深々と降る雪は色々な感情を隠し包むように見えてくる。ガヤガヤと昼食を楽しんでいる声でさえ気にならないほど、じっと空から降る雪を眺めてしまっていた。紫穂もまた、いつもならきっと、何格好つけて雪なんか眺めてるの?、なんていうのだろうけど、今回はなんとなく、彼の表情を見ると突っ込む気にもならなかったらしい。静かに静かに両手を重ね、いただきます。と、昼食を食べ始める。

「よう。何、二人で仲良く昼食を頂いてるんだよっと」

空気を読める奴なのか、何も考えていないやつなのか、雨谷圭がニコニコとビニール袋を持ち目の前に立っていた。いつもなら、昼食を済ませ、一目散に校庭へと走っていく男が今日は雪が降り遊べないと悟ったのか、昼食を友人と一緒に済ませようとしたのだろう。

「あ、あれ?なんか今日は二人ともテンション低い?」

紫穂は、そんなことないよ。なんて首を振るも、尋はなぜか上の空で、そう、三、四秒ほど経ち、そんなことはないよ。と、伝える。圭もまた、そか。ならよかったわ。と、ニコニコしながら椅子を寄せ机にビニール袋を置き、恨めしそうな表情で校庭へ視線を向ける。

「しかい、どうにかならないかね。急にこんなに雪が降るとかさ。もう、春になろうかって四季だって息巻いているのに、どうしてこうも春の陽気の気分を害すような天候を選ぶもんかね。」

単に校庭で遊ぶことが出来ない悔しさを誰かに分かち合ってほしかったのだろう。だからこそ、いつものメンバーを昼食のお供に選んだのだろう。しかし、心ここにあらずの男に静かに昼食を取っている姿勢のいい女子しかいない。そんないつもよりもテンションが低い二人に圭は変な感を働かせてしまうのも仕方がない事。

「ははーん。分かったぞ。また、二人で喧嘩してるんだろ。うん、うん。分かるよ。分かるけどな?そうやっていつでもけんかが出来る仲って素敵な事なんだぞ?大人になるにつれ、喧嘩できる関係なんて・・・」

「いや。私たち、喧嘩なんかしてないよ」

サクッと音が聞こえてくるような鋭い言葉が圭の頬を裂く。いや、裂いた気がした。普通の男子ならそこで、終わるだろう。けれど、圭は違う。流石にずっとこの二人と仲がいいわけではない。

「いや、確かに尋はそんな感じなんだけど、平木はそんな感じに見えないんだよね。何だろうか?尋に対して何かムズムズと言いたいことがあるけど、言えない。そんな、感じがしたんだよね。」

流石、雨谷圭。きっと紫穂は心の中で拍手をしてしまったに違いない。しかし、なんだろう?雨谷圭にズバリ当てられてしまったことがなぜか、紫穂の中で悔しかったのだろう。

「そんなことはないよ。そう見えたなら、きっとの気のせいだと思うかな?」

かな?がミソである。友人に嘘をつているわけでもないし、なんとなく紫穂の中でこれが一番良い返答だったのだろう。また、圭も、そうか。本人がそう言うならそうかもしれないかなー。なんてビニール袋から焼きそばパンを出し食べ始める。こんなやり取りを間近で行っているのに尋はなんとなく、心ここにあらず。と、言う感じであった。





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「ふぅ・・・・」

まだ、心臓の音で体中がうるさい。ゴクリと生唾を何度も飲んでしまう。好きな人と少しでも話が出来るだけでこうも嬉しんだ。なんて、思うと自然と微笑んでしまっている。

「律は本当に先輩の事が大好きなんだね」

ポンと肩を叩かれ振り向くと、幼馴染でもあり、友人の星野春希が微笑ましい表情で缶コーヒーを持ちながら立っていた。御崎もまた、うん。なんて照れくさそうに、けれど、満足そうに頷く。

「本当に話が出来るだけで、ドキドキするし、凄く幸せなんだよね。あははっ。また、二人っきりで話せちゃった」

両手で顔を隠し恥ずかしそうに両足をバタバタとさせている。本当に可愛いやつだな。なんて、星野は御崎の頭をごしごしと摩る。普通の女子学生ならば、髪の毛を触られるのは、友達だとしてもいい気持ではないことが多い。けれど、二人の関係だからこそ成り立つことだってある。くしゃくしゃになった髪型になってでも、御崎はへらへらと笑っている。

「あのね。私、先輩と一緒に傘はいっちゃった。へへへ。」

「さっきまで、どうやって断ろうかって考えていたのに、この切り替え凄いね」

星野はからかう様に口にすると御崎もまた、

「ちゃんと誠意をもって断ったよ。私には好きな人がいますって」

からかわれている。と、言うより何か嫌味にも聞こえてしまったのか、御崎は少し冷静になったのか、むっとした表情で星野を見る。また、星野も、ごめんごめん。なんて笑いながら謝罪を口にする。

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